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「負動産の窓口」で土地を手放せた話 その4~掘ってみたら~

 8月中のスプレッドシートは6人目の方まででした。庭だけだと物足りないから広い畑をやりたいというメッセージに「ごめんなさい、それどころではないゴミがあるかもしれないんです」と心の中で頭を下げました。

 貸農園を借りているけど、2年ごとの更新でしかも抽選なので長くできない、だから自分だけの土地で作物を作りたいという話もありました。そうか、貸農園とは賃貸だから家と同じなのか…、何年もかけて毎年よくなっていく野菜もあるだろうから、そりゃ土地が欲しいよね、土がよくなったところでさようなら、なんて悔しいよねえ、など今までの生活では知らなかったことも知識として得ることができました。
 できました、というかそう思わないと、やっていられないです。私たちの記憶の中にぼんやりとあった野菜を作っていたあの土地は、今はもう全然違う土地になってしまったのです…。

 Zoomで作戦会議をした数日後、8月27日に先生から連絡がありました。②様と電話でお話してくださったとのこと。現状有姿でOKで、家庭菜園か、そうでなければ息子さんが会社をやっているのでその資材置き場にしたいということでした。
 二つも使い道の選択肢があるとはありがたいお話です。
 他にも、登記費用はもつつもりですとか、税理士にも相談します、ということもおっしゃってくださったそうでした。先生がこういうことなので②様と三者面談をしませんか?と提案してくれました。

 日程調整をしているうちに、9月になりました。9月に入っても問い合わせがきます。候補者がいるのはありがたいけれど、皆さん野菜作りたいっておっしゃるので、もうほんとごめんね~。
 同時にもし売買価格が分かれば、ということで権利書を見てみたら書いてなくて、その代わりに「この日に契約をするから実印と、いくら現金をもってきてね」という父が購入したときの売主からのお手紙みたいなのが変色して出てきて、土地の金額はそこにしか書いてありませんでした。一体…ほんとに…よく分からない…。
 私道部分も気になっていたので、荒井先生に頼んで先生がよくお願いしているという司法書士の先生に見積もりを出してもらうことにしました。私道部分は相続からやらなきゃなりませんし、忘れたいけど忘れちゃいけない部分です。

 7日、三者面談となりました。②様のお若い息子さんも一緒に参加。この日は予想外の進捗で姉も私も「わあーこんなことってあるんだね~」という気持ちでした。

 ②様は現状有姿を理解してくれているし、税金もこの土地なら贈与税かからないと理解してますし税理士に確認もしましたので全く問題ないです、という心強いお答え。家庭菜園が出来たらいいけど見た感じゴミがけっこうあるので、やっぱりもうちょっと調べさせてもらってダメなら資材置き場にします、ということでした。
 第二の使い方をしてもらえるかどうかは、もう少し調べてもらうしかありません。何が出るか怖かったですが、先生が「ちょっとスコップで掘る程度ですよね」と確認してくれて②様も「そんな程度です」と言ってくれました。

 また見学中に隣の土地でお芋を作っている「挙動不審の初老男性」と遭遇したそうです。

 荒井先生と私たち「エーーーーッ?!」

 私は二度行って誰とも会っていなかったので、②様の引きの強さにとっても驚きました。
 うちの土地を指さして「隣は、何十年も来ていないよ」と言ったそうです。「知っています、頼まれて調査に来ています」といったところ挙動がますます落ち着かなくなり「そこは…車が埋まってるから…」と言ったそうです!

 荒井先生と私たち「エーーーーッ?!」再び。

 普通ならそこで気味悪くなるところを②様は笑いながら「なんでその人がそんなこと知ってるんでしょうねえ。本人は自分は土地を借りて野菜を作らせてもらってるだけ、使わないならそっち(うちの土地)も手入れして使ってもいい、なんて言ってましたけどねえ」とおっしゃるのです。なんとも豪胆。

 とにかく「挙動不審」だったそうです…。私遭遇しなくてよかった…。
 こうなってくるともうこの肝の据わった②様に引き取ってもらうしかないという気持ちになっていました。

 面談のあと、先生と我々だけで話した時「謎の人物が現れた!」と妙に盛り上がりました。怖いけど、でも現実にこんなおかしなことがあるのか、しかも見学に行った日に…。
 もしかしたら何十年も音沙汰のなかった土地に、この夏から人が来たのを密かに見ていて、なにか隣で始まるのかと観察していたのかもしれないです。にしても他の見学者は遭遇しなかったのに、②様だけが遭遇したとは。

 ②様からは近日中に再度調査に行くとのお返事でした。それを待つしかありません。9月はこのあとさらに数名問い合わせがあり、敏腕松岡さんに現在商談中ですとお返事してもらうのを繰り返しました。
 私たちは面談の中で②様が去年までやっていたとおっしゃった会社の登記を取り寄せて調べ、その住所からGoogleマップで調べたりして、確かに数年前の地図では会社の看板がでていた画像があったけれど、その後移転して今はご自宅に会社の住所を置いているんだな、ということを確認しました。荒井先生に松プランでお願いしても「この人が大丈夫な人かどうか」「嘘をついていないか」までは分からないので、自分たちで自分たちを安心させる材料はできる限りで探さなければ、と思っていました。

 9月14日、②様からご連絡がありました、とのこと。ひえーどうだったかしら…。ご所望に応じて地積測量図を差し上げたので、それをもとにいろいろ計測もされたようです。私が思っていた場所より土地は若干奥の方にあるようで、ほんとのはじっこは背の高い木や投棄物があって近づけなかったとのこと。
 それでも手前の縁石付近を掘って、コンクリート杭を発見された様子。すごい。そしてさらにさくっとシャベルを入れただけで出てくるゴミ、ゴミ、ゴミ…。丸太もけっこう転がっているし、このままでは資材置き場にするにも片付けに相当な費用がかかりそうということでした。

 このときが一番気分が沈みました。放置していた我が家が絶対的に悪いとはいえ、どこかからゴミをわざわざ持ってきてここに継続的に捨てていた人がいるわけです。こんなにまでひどくされてしまうんだ、父が買ったときはどこもきれいに整地されていて、それなりに大勢が家庭菜園を楽しんでいたところなのに。

 動画も撮ってくれたのですが、それまで存在しなかった大きな砂山が通路にできていました。「あの男性が持ち込んだ気がしますね」と②様。なにかをこれで隠そうとしているのでしょうか…。
 他に、やはりガラスの破片が多くて家庭菜園利用も難しい、ゴミを取り除いて土を入れ替えることを考えると現実的ではないというコメントもありました。そうだよねー、そうだよねー、と激しくヘッドバンギング。

 しかし最後まで読んでいくと、せっかくのご縁なので、登記にかかる費用を我が家でもってくれれば、ゴミの処理など全部飲み込みますとのことでした。

 まじでっ?!声が出ました。

 これはのっかるしかないよね、と姉と確認。でも車があったのって結局うちの土地だったのか、ずれているということは車は別の土地だったのか、荒井先生にも聞いてみましたが②様からはその話は出なかったとのこと。あらためて面談しましょうかという話も出ましたが、まずは先生と私たちで話したいということで9月24日のZoom面談を予約をしました。
 
 登記費用をこちらで持つとなると、いくらぐらいだっけ…、あれ、まだ見積もりがきていなかったよね、ということで司法書士の先生の見積もり下さい、と連絡したらすぐ送ってくれました。しかし見積もりは8月の日付になっており…、多分送付漏れと思われます。激烈忙しいのは分かっていたので「こっちに転送するの忘れてたんだね(笑)」って感じでしたが、先生も「転送しといて~」って敏腕松岡さんに投げちゃえばよかったのに~。
 多分この頃先生は激烈忙しいがさらに激烈になっておられたようで、ちょっと私の書いたことが違う風に受け止められて、登記はよそに頼みますか?ご自身でされるということですか?みたいな質問が来て若干驚きました。まあこんなこともあるよね、と思って、ま、私もよく分からなかったもので、と考えていることを伝え、9月24日の打ち合わせとなりました。

 土地の正確な位置はこれ以上分からない、私はGPSと登記所備付地図で確認したが、②様は計測されているようなので見つけてくれた杭が正しいと考えて、②様が判断したのが土地の位置、ということで話を進めたいと話すと、譲渡契約書に場所がはっきり分かっていません、ということを先生が入れてくれるとの説明で安心しました。
 これ以上の懸念点はなく、改めての三者面談も必要ないという結論になって、②様へよろしくお願いしますという連絡をしてもらうことになりました。

 このとき、土地の「登記識別情報通知」なる書類があるはずなのですが確認したことはありますかと言われ「知らない」って言っちゃいました(笑)前回土地の売買金額を確認しようと古い書類をひっくり返したのですが、先生のいう「緑色でシールが貼ってある書類」は見た覚えがありませんでした。
 震えながら「さ、探します」と言いました。ないとこれの再発行がとても大変で時間がかかるとのこと。
 説明動画のどっかにその書類の話あったっけーーあってもスルーしてたのかもしれないけど、これ依頼したらすぐ「これの存在を確認せよ」って教えてほしかったー!なんて、まあこっちの勝手です。

法務省の見本。なんか平成27年に書式が変わったらしくて、下の方、目隠しシールだった時代とそうでなくなったやつもあるみたいです。書類タイトルは変わってないし大事な物には違いありません…。知らないこといっぱいある…。

 翌日、実家に行って再度金庫を開けてみたら、他にも持っている土地があるので全部の登記識別情報通知が同じ封筒にまとまって入っていました。権利書とは別になってたんですね。
 がさっと探したらT市のものが、ちゃんとありました。よかったー。でもこれ、最終的に司法書士の先生に送るものだから、一番上にして、封筒に「大事!シールはがさない!」と書いてまたしまいました。ふーびっくりしたー。母はもう持って行ってくれみたいなことを言いましたが、やだ、まだここに置いておく、どうせ司法書士からも記入する書類とかくるから、ここで集まって一気にやったほうがいい、と言って金庫を閉じました。探索した!あった!と荒井先生に報告。

 母には、こういうことでね、ということは話してありました。登記費用をこっちで持つのも、もうこんなに荒れていたらしょうがないねという納得の顔をしていました。それより引き取ってくれる人がいることを喜び、さらに挙動不審の男性が登場したことで「もう早く手放したい」と繰り返していました。だよね。

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