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相続土地国庫帰属制度で土地を手放したい話 その3 

山形豚のヒレカツ弁当
800円、もりもり…

 写真は、今日夕飯に買ってきて食べたお弁当です。来月健康診断なのでダイエットしているつもりで今週は順調に減らしていたのですが、ちょっと食べないとダメになってしまうね…ということがあってしっかり食べました。

 地図上で道も分かりましたので、いつ行くか、と思っていた日、その日は週末で遠出をしていました。天気もいまいちだし早めに帰ろうかとなったときに「ここからなら帰りにT市に寄れるのでは」と思いつきました。運転手役に頼んで地図を頼りに近くまで行ってもらいました。

 ぎりぎりまで行って、アスファルトから砂利道になるところで停めてもらい、降りました。この先、車では行きたくない感じ。父と車で来たときはどこに車を停めていたんだっけ。土地の前に停めて、ポリタンクに水をいれてきて、それで手を洗ったような記憶も。しかしもうすべてがぼんやりしています。
 まっぷる法務局地図ビューア…登記所備付地図データのあのアプリを立ち上げ、現在位置のマークをタップ。自分の今の位置と地図が重なります。ゆるゆると歩いていき、右側のあのあたり…ここだ。すごい。地図とGPSすごい。考えた人ありがとう、と思いながら縁石にそって歩くと、まさに地図の線の上。

 でも地図で見るとこの奥にもう一区画あるはずなのだが、雑木林に侵食されています。うーん、うちもああなって不思議はないのになっていないのは周辺の方が自分の土地に影響が及ばないようなにかしら手をいれてくれたのかもしれないです。今、周辺に誰もいませんが突然誰かが出てきて「お宅の草刈りずっとやってたんですけど」みたいな文句を言われたらどうしよう…と思うとぞっとしました。一人で来なくてよかったかも。
 
 土地の前まで作られている砂利道と、少し近寄ったところ、なんとなく「遠景」がとれるところでまず撮影。土地の真ん前に立って数枚。奥の方をズーム…雑木林の木が切られたあとがありました。切り株が見えました。それから真ん中へん…なんか置いてある…ドラム缶の小さいやつのようなものと、なにか鉄板がへしゃげて朽ちたような何か。姉が言っていた「車が捨てられていた」ものがこれだったりして。
 恐る恐る足を踏みこむ…いや自分の実家の土地なんだけど、「多分、ここ」という程度の自信がそうさせてしまいます。朝雨が少し降ったようで地面が濡れてぬかるんでいたのであまり入り込みませんでしたが、金網みたいなものも何枚か横たわっています。そして奥に脚立。

 思ったよりもジャングルではなかったし「開拓」しなければ近寄れないということもなかったし、綺麗にして境界さえわかればいけるんじゃないだろうか。そう思って境界の目印になりそうなものを手前の淵をたよりに探して見ましたが何も見つけられず。奥の方など入る気もせず。
 この区画に入る入り口のところはコーンがたてられて「関係ない人は入らないでね」風情が醸し出されていました。そこの縁石に一つ、矢印が彫ってあるのを見つけました。

 これ、夕べネットで必死で勉強した境界杭のホームページにあったやつです。矢印の方向に沿って、境界杭の表面から斜めに進んだ先…ということはなにかやっぱり印がこのあたりはつけられていたはず…。もうちょっと粘ってみようかと思いましたが、蚊にくわれたのでやめました。平日なら近くにある建設会社や中学校から人の声が聞こえるのかもしれませんが、休日の夕方、曇りでは雑木林が揺れる音だけです。雑木林さん…教えて…ここが父がうっかり買ってしまった土地なんでしょうか…。

 帰宅して「相続土地国庫帰属制度のご案内」の現地写真の見本を見ると、自分の撮影の仕方が話にならないことが判明しました。全景ってけっこう離れないと撮れないとか、土地の周囲全部をぐるりと囲むように歩いて撮影しないとたとえ杭があったとしても土地の形が分からないとか、はあー、予習はしたつもりだったのにねーと思いました。これでは何度も行かなきゃならない…。

 姉に「廃車は見当たらなかった」と伝えるとよかった、との答え。ふと「その…前に行ったときはすぐ場所は分かったの?」と尋ねると「記憶を頼って行って、このあたりかなってところが開拓しなきゃならない感じになってた」との答え。本当にそうなっていて誰かが片付けてくれたのか、それとも姉が場所を勘違いしていたのか。もはや分かりませんが、記憶を頼っていくところがこの姉のすごいところです。

 こういうミッションって日々一喜一憂なんですよね。書類集めて、現地見に行くとそれだけで感情があれこれ働いて、疲れ果ててしまいます。すごーく嫌。それをやってくれる私がいてよかったよね、姉、母。そして父!上からだけど「このストレスに耐えている私に感謝せよ」と言いたくなります。キー!

 しかしまだ疲れ果てるわけにはいかないと、帰属制度に成功した行動力ある方が、弁護士さんと話している動画を何本か見て自分を励まします。この弁護士先生がやっているのが「負動産の窓口」、恐らく帰属制度を検索した方は絶対一度は目にするところだと思います。どうしようかなと思いながらも、お友達登録して毎日送られてくる動画を見て数日過ごしました。

 月曜日に追加で頼んだ地積測量図なるものがきました。面積の計算式が手書きの時代…そして丸囲みで「コ」の文字が。凡例にコンクリート杭って書いてある!
 やっぱり杭はあるんだ!土地の角にそれぞれちゃんと「コ」が示されています。探せば見つけられるかもしれない。やるだけの価値はあるのかもしれないと少しだけ気持ちが上向きます。

 火曜日、法務局の予約システムに希望の日が表示されたのでその日の朝ソッコーで予約しました。ちなみに全然混雑してはいないので急がなくても大丈夫です。姉と二人で行く予定で、姉がどんどこ仕事の予定を入れられてしまうのでその前にこっちも用事をおさえねばならなくて、それで急いでいました。いつもうちはこんな感じ…。やれやれ、ふー。
 予約の際も地番やら何に困っているかとかいろいろアンケートがあり、若干面倒です。というかかなり面倒な入力を強いられますし、途中でタイムアウトします。延長したい場合はボタンを押して入力時間を延長せねばなりません。
 こういうことが初めて入った画面で読み取れないといけないのですね。ここでまずふるいにかけられるんだなという気がしました。本気度を試されております…。本気で困ってますので本気で答えて予約しました。

 昼休み、スマホを見ると弁護士の先生から「個別にお送りしております」というメッセージが入っていました。えっなんてマメなんだ。登録の時のアンケートでT市にある土地のことで…と書いておいたので、そのことについてでした。
 無料診断と無料相談の案内がありました。ちょっと迷って考えて、1日たってからやはり相談しようと決めました。
 大抵初回30分は無料相談というのがどこの事務所もあるので、法務局の事前相談の前か、後か、どっちかに一度は専門家に話を聞こうと思っていたし、地番と固定資産税と今管理にかかっている費用を知らせると簡単な診断をしてくれるというので、水曜日の夜に情報を送りました。土地の場合わりと簡単に誰でも情報が取得できるので、個人情報…パスワード…みたいなことに極度に気を遣わなくて済むのが救いです。
 行ってみたところ想像よりはひどくなくて、隣で植物を作っている人もいたので、近隣で買い取ってくれる人がいたらいいんですけど、帰属制度を目指して事前相談に行こうと思っています、というようなことも書きました。

 木曜日の午後。24時間たたないうちに返信が来てたまげました。えっほんとに返事くれるんだという驚き。私が読んだのは夕方、帰宅途中のとある駅だったのですが、その内容に「えー…」とけっこう大きな声が出てしまいました。
 落ち着こう。想定外の話によろよろしてしまう。とにかくホームのベンチに座って先生のメッセージをじっくり読みました。頭に入ってきたのはメールアドレスを知らせれば先生の取得した登記簿などの資料を送って下さるということ。無料の段階で…、ありがたくメールアドレスを知らせ、もう一度読みます。

 父の名前の残っている土地が、つまり父に権利が残ったままの土地が、他に一部分あることが判明したそうです。

 え?

 なんですと?

 この地番にお父様のお名前が残っていますが、これは認識されておりますか?されておりません!叫びそうになりました。認識してないので相続登記もしておりません!
 姉にも連絡。これが残ってる以上、土地を手放しても解決にはならない…先生のおっしゃる通りです。
 先生が書いてくれた地番をまたまっぷる法務局地図で見ると…道…あの区画に入るための砂利一本道に地番がついている!つまり私道…。私道をみーんなで分けてもっているってことなのか…。そうしないと人の土地に入らないと自分の土地にたどり着けないですもんね。あの「関係ない人は入らないでね」コーンが脳裏をよぎります。そうよ、私道だからああいうのをたてているわけですよ。

 知らない。普通の生活してる私、知らない。私道…も相続登記しなきゃいけなかったんですね…。でも固定資産税は免除されてしまう条件だと遺族はなにも手掛かりがないし、その上権利書にものらないから、そういう土地があるってことは遺族には分からない。父本人も認識してなかったんじゃあないだろうか。いや山林持ってる人には常識なの?頭がぐらぐらします。昨日の僅かな上向き気持ちはゼロ以下へ…。
 だから相続の時専門家に頼む価値があるってことなんですね。こういうの見つけてくれるから。しかも先生、すぐに我が家が認識していなかった地番の登記簿を添付ファイルで送ってくれました。ありがたや。

 相続手続きの時を思いだしました。私は税理士さんに頼もうよー友達に紹介してもらうからーと母に言ったのです。でもその頃母は元気で「自分でやるのだ」と言い張り、自分一人ではなく娘二人を巻き込んでやりました。やり遂げたと思っていたのです。
 なんとなく不安だったので、折々で、一度登記簿取り寄せなきゃなあとか、専門家にみてもらった方がいいかなあと思いながらも私も面倒で放置していました。だから責められないけど、でもあのとき士業の信頼できる方を捕まえていたら…。「いやよ、自分で出来ることなのに頼むと高いから」の母の一言に屈していなかったら…。

 先生はこういう土地をたくさん見ているから、こういう場合はこれに注意しないと、というのが分かってらっしゃるんでしょう。動画で「すごーく苦労して書類を作ったので最終チェックということでご相談にこられて、だけどそれはそもそも帰属制度が使えない土地で、私たちが見ると5分でわかることなのですが…」と言っていた意味がすごく分かります。刺さります。専門家だいじ!

 最寄り駅について、食欲ないなと思いました。だけどここで食べないとなんだか負ける気がする。悲観してはいけないと昨日の先生の動画でもおっしゃっていた。悲観してはいけない!で、あのヒレカツ弁当に手が伸びたというわけです。

 帰宅してすぐパソコンで送られてきた登記簿を確認すると、ウワーって声が出ました。24人いるぅー!なにこの5万1500分の2242って。なにこれ。知らぬ。こういうの知らないと相続登記も完璧にできないってことですか。へんてこな山林持ってる人は本当に士業に依頼した方が安全ですって、大々的に言ってくれないだろうか。っていうか、世の中相続手続き自分でやりました!って方はこういうこともお勉強してやってるの?法務局が教えてくれるの?なんなの?なんなのだ!
 ヒレカツおいしいけど、味がよく分からないです!飲み込みました。明日の朝は500グラムは増えているに違いない、体重…。

 食べ終わってもう一度見ると、確かに相続で「●●持分全部移転」って書いてあるのもちらほら…。ちゃんとこの部分も相続登記できている人がいる、と知って「教えて!自分で分かっててやったの?それとも専門家にやってもらったからこうなったの?教えて!」と迫りたくなります。
 そして「根抵当権設定」っていう怖い言葉が書いてあるところもありました。信用金庫が根抵当権者となっています。信用金庫なら土地と私道部分としっかり両方に設定したんだろうなあ…わざわざこの部分取り寄せて見る気もないけど…土地に歴史あり。なんていってる場合ではないです。相続登記は義務化されたのです。うわーんなんたる失態!!

 もう「コワイ」の感情になってきました。姉とも「土地コワイ」とメッセージを送り合います。もしかして今母が住んでいるところも、親戚に住んでもらっているF市も、なんかこういう落とし穴があるんじゃないかしら。一応あの二つについては司法書士の先生に図も見てもらったから大丈夫だと思うけど…私道もないから大丈夫だと思うけど…。

 恐ろしいのはこれを母に説明しなければならないことです。明日、通院付き添いで会うのでそのときいろいろ資料を持って行って話します。やだな。仕事より嫌です。というか、毎度ドラマにもならない「想定外落とし穴」が発生しちゃう我が実家…、今回もやっぱりありました、落とし穴。

 法務局の予約の時よりも素早く、先生の無料相談Zoom枠を予約しました。初めてWeb会議のためにカラオケルームも予約しました。初めてのことばかりさせてくれて本当にありがとうね、父!お墓に居ないで出てきて説明してちょうだい!手続きやってちょうだいよ!と叫びながら、本日の記録は終了です。

 プロジェクト開始から2週間経ちました。1カ月くらい経った感覚です。

 

ちょっとは役にたったかも、と思われましたら少し置いていっていただけるとありがたいです。