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私から10年前乳がん闘病中の私へ ~話そうか~

久しぶりのあなたは、健康そうでも、元気でもない。病気でもないから平気だよとあなたは言う。

あなたにとって、当たり前にあった日常は、静かに止まってしまったのか、気配を消してしまった。
「どうしようね」ってあなたは独り言のように小声でつぶやき、薄く笑う。

最近あまり元気がないことは感じていたけれど、ちゃんと聞けていなかった。つらい話に立ち入ってはいけないのかと、迷ってもいたし。
話すことで傷つけたらと思うと、怖かった。

きっと、私は何もすることはできないだろう。あなたのつらさや弱さを受け取れるほど、器がない。だからどうしていいか、わからな い。勇気がない。でもね、少しでも力になりたい気持ちはあるんだよ。

そーっと小声でいってみる。
「あのさ、今、健康と病気のはざまなんだよ。きっと。」
しばらくじーっと前をみていたあなた。

「・・・じゃあ、私、はざまさんだね」 そういって笑う。
繰り返し「はざまさん、はざまさん」と、ゴロがいいのか繰り返す。

私達はただ、ゆっくりと歩いていた。

人とはエゴの塊だ。
健康で元気になってほしい。笑顔でいて欲しい。
それは嘘じゃないけど、そんな光輝く言葉が眩しすぎて、 逃げ出したい時だってある。それもわかっているのに、
健康で元気になってほしいと願う。なれるものならなっているだろうに。

春も夏もあるけれど、葉が落ちて、枯れて、秋がきて、そして冬もくる。
今のあなたもあなただ。
健康そうではなくても、ほら一緒に歩ける。
不元気でも言葉はかわせる。

「覚悟は、できてる?」
「できてるよ、だから会いに来たんでしょ?」
「でも、傷つけたくはないと思っている」
うん うんと大きく頭だけ動かして
「大丈夫」
って言った。

あなたは半分弱い、でも半分はまだ、強くあることを諦めていない。

「じゃあ、そろそろ話そうか、はざまさん。」
「うん」

さあ、はじめよう。私達の話を。10年前からの話を。

つづく↓


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