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『マルコと銀河竜』銀河の果ての宝物【ゲーム感想】
「マルコと銀河竜 ~MARCO&GALAXY DRAGON~」をクリアしました!
Switch版。前半は大きなネタバレ無し、後半は完全にネタバレありで書きます。
ゲーム概要
主人公である記憶喪失の孤児マルコと銀河竜のアルコが母親を探しに地球に来るところから始まるノベルゲーム。
ノベルゲームでありながら、多様多種のアニメーションやスチルによりノベルというよりまるでアニメのように感じるゲーム。
上記のアニメーションやスチルに加え、フルボイスかつ音楽(歌入りのものもある)もあり、とても作り込まれている。
ほぼ選択肢も無く、エンド分岐がない一本道のストーリーであるため、よりアニメを見ているような感覚が強い。
ゲーム総評
クリア時間
クリア時間は約5時間。
フルボイスのゲームでも基本全部のボイスを聞く前にページ送りをするタイプなので、ボイスをちゃんと聞く人はもっとかかると思う。
テンポ速いのでこのクリア時間でも結構な濃度を感じます。
ゲームシステム
ゲームシステム自体は一般的なノベルゲームと同様にプレイヤーがやることはページ送りのみ。選択肢もほぼないためゲーム性は低め。
機能面でいうとバックログで文章を見返すだけではなく、そのシーン自体に戻れるのが便利だった。
ゲーム性低めの反面、非常に魅せ方は凝っており、大量のスチル(立ち絵のみのシーンより多いのでは?と感じるレベルの量)で視覚的な動きも多く、カートゥーンアニメーションや歌も印象深く使われている。
↑OPムービー、スチルもアニメーションも音楽もいいね…
歌入り音楽もこの1曲だけではなく数曲あり、メロディーも歌詞も響く。こういう系の曲好きなんだけどジャンル名とかあるのだろうか…
ストーリー、キャラ
宇宙でトレジャーハンターをしている記憶喪失の孤児マルコと銀河竜アルコが、マルコの母親の手がかりが見つかったことをきっかけに、地球に探しにいくところからメインストーリーが展開されていく。
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ストーリーはSFチックなファンタジージュブナイルという感じで、基本コミカル、テキストの雰囲気はラノベ的で軽めな感じ。でもシリアスな要素はまあまある。説明文章も少なく(スチルが説明を兼ねている部分が多い)ハイテンポに進み、内容も比喩的、寓話的な物語だと感じた。
意味分からなくて取り残される人もいそうだが、そういった意味で読む人は選ぶかも(ノベルゲームはそういう物な気もするが)。
主人公のマルコとアルコ以外にも多くの魅力的なキャラが登場し、ストーリー的にもそのキャラたちが絡んで母親探し以外の様々な物語が出てくる。
ボイスも相まってだんだんどのキャラも良さが見えてくる。ちなみに世界観がそもそもそうだけど結構トんでるキャラ多いです。
人間美形は女性キャラのみで、主に出るのも女性キャラ。宇宙人なども割と出るので人外男性キャラは結構多い。ほとんどはメインじゃないけど一部のメイン人外も良いキャラしてる。
総評
ノベルゲームというよりアニメゲームとでも言いたくなるような新感覚ノベルゲーム。演出や魅せ方が非常に面白く感じる。
美少女キャラやラノベ、アニメ好き、OPムービーで良いと感じたらやってみてほしい。個性豊かなキャラたちが待っている!声優の演技も良い。ボイス全部聞かない人間が言うのもなんだが、ボイスがキャラの魅力をよく引き出している。
ストーリーに関しては最後まで見てこその部分もあり、ここでは語るのが難しいところもあるが、読後感よかったです。
ノベルゲーム久々にやったけどやっぱいいな~。
ネタバレあり感想
ここからは完全にネタバレあり。選択肢はどっちも見ました。
キャラクター
キャラごとに簡単に感想を書きます。
マルコ
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総じてさっぱりしているというか、メンタル強い印象。記憶無くす前でもなんとういか堂々としてたし。生育的にやさぐれ感もあったりするけど、基本素直、まっすぐだよね。だからマルコって主人公なんだよな…(感傷)
幼少期のマルコも元気いっぱいでかわいい。今のマルコとは違う部分もあるけど、真っすぐさとかは昔からそうなんじゃないかな。
カートゥーンアニメによく合うキャラデザだと思う。
語尾とか口調とかあだ名づけとか、適当感ある喋りなのよい。そしてこのキャラが主人公なのがより良い…
アルコ
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竜の形態好き。もともと人外も竜も好きなんですよね…作中で一番好きなキャラです。
普段は子供っぽい感じするのに過去シーンやシリアスなところでは時節大人っぽいというか、悠然とした雰囲気になるのがよい。むしろ子供っぽさはマルコと出会って後発的に出てきたんだろうな。
口調も全体的に中性的なのが好き。種族的にも多分性別とか無いんだよね?
ヨルムンガルド・ハクア
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無口クールで、途中まではアスタロトの教育に従おうとしてたけど、地球での様々な交流や体験を通して悩みを生じ始める。アスタロトの理念には最初からあまり共感できていなさそうだったけど、父親の期待に応えたいという側面が大きくありそうだった。
アスタロトは理念のわりに親子間の絆を気にしてる感じで、だからハクアも父にすぐ反抗することができなかったのかな。ED後にやっとハクアは独り立ちをすることになるのだろう。
ガルグイユ・シーラ
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故郷を滅ぼされ今は一族の復讐のためだけに生きる存在…という登場だったと思うのだがわりとすぐにコミカルになってびっくりした。
もちろんマルコ達との交流があったからこそだと思うが、ハクアを最終殺さなかったり(なんなら背中を押していた、アスタロトの娘を殺し、ハクアを助けたという事なのか)、復讐者なのに視野が狭くない!(復讐者キャラというのは視野狭くなりがちだと思う、仕方ないけど…)
器が何だかんだ広い、気が付いたら地球で舎弟が勝手に増えてそう。
恩田桜子
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この人だけではないけど、10年前からラヴとずっと戦い続けていたと判明したときは驚いた。序盤からちらほらミュータント倒す描写があったのはそういう事だったのか…
マルコの家族でもあったし、地球上の事情はわりと最初からこの人目線だと結構わかってたんだろうな。マルコにプラモデル返すシーンいい。
そしてこの人もまたタフ。肉体もメンタルも。姉御と呼ばせていただきたい!
恩田游子
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今何歳なのか分からんけどOGとしてミュータントを始末する姿はかっこいい!いい感じの姉キャラという感じがする。
初回無料、次回から有料(高め)って実際戦略として売れるものなのでしょうか?初回無料の時にトーク含めて楽しい時間を過ごさせることでまた来させる戦法なのか?2回目ぐらいは、まあ前回無料だったしな…という気持ちで来そうな気はする。
瑠璃
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作中では珍しい純粋ないい子!特に終盤でアルコと一緒に宇宙に行くところとか、ありがとう~!いい子だ…という気持ちが湧き出た。
多分一番プレイヤーの感覚に近く、普通の子という感じ。ミュータント退治は死ぬとき人の見た目じゃないとはいえトラウマになりそう。でも瑠璃ちゃんの性格上わりと気にしなくなりそうでもある。トラウマレベルにはならなそう。
テラ・イセザキ
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高飛車風ポンコツお嬢様。作中一のアホの子という認識で合っているか…?終始この人何してんだ?というシーンが多く面白かった。生徒会はメンタル強くてややすれている人が多いから生徒会長で逆にいいのかもしれない。
市長と見た目も含めて似てね?という気持ちがぬぐえなかったが、特に関係ないんだよね、確か。親戚ぐらいはありえたりする?
終盤の号令シーンは珍しくかっこよさを感じた。
ラッカ・イセザキ
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飄々としていて姉に辛辣。かと思ったら後半で負の感情を持てないというようなことが言及される。感情豊かなテラとは対照的。
普段は圧倒的にラッカがテラを助けているだろうけど、実はラッカもテラに助けられている部分もありそうなのが、いい。後者は二人とも無自覚かもしれないけど。
金庫前でのラヴとの問答シーン好き。姉妹関係っていいよな…
黒崎鷹緒
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伊勢崎家とテラに使えている、執事的な子。メイドじゃないのがいいですよな。そう喋る方でもないクール系だけど、普段の顔が真顔というより自信のありそうな顔なのが良い。
この人(というか黒崎家?)と伊勢崎家の関係性やテラとラッカの関係ももっと知りたい。
夢の中での告白?シーンふつうにドギマギした。スチルの画角が好き。
パンダグラフ
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登場から最後まで何なんだこの人、という感じでした。マッドサイエンティスト的な医者ですよね、治療されたくなさすぎる。金紐市に宇宙人が来てる理由の一端はこの人なのでは?評判が広まりすぎたらまた別の星に移住するのだろうか。
宇宙的謎技術で謎の治療や移植もできるチートキャラ。この人が居ないとマルコは助からなかっただろうから、そこはありがとう。
サッドネス星人とはいい共生関係を育んでいそうで良いね。
市長
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この人の存在も結構謎だ、改めて考えると。なぜこんな子供が市長を…?(今さら)かわいい、応援したくなるから支持してるのかと思えば、宇宙的危機に対応できていないとちゃんと支持率が下がるから、市民の気持ちがもう分かんねぇよ…この市は学校及び生徒会に支えられすぎでは?気のせい?
どのコードを切るかの判断も任せられてるの笑った。
ガルグイユとテラと市長がなんか特に好きだから私はこのゲームでは勢いあるバカキャラ好きなのかもしれん。
メインストーリー
ストーリーの印象残った事とか。プレイしてから時間がたち、序盤の記憶が薄れつつあるため中終盤の話多めかも。
正直この作品は解釈も言葉で表すのが難しいようなところもあるため書けてない部分も多い。
・愛と希望と感情と
おそらくこのゲームのテーマ的部分。
ラヴが出てからはこの辺の話が特によく出ていた。
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愛を希望で打ち砕くといった展開はなかなか衝撃だった。
最後まで見て、愛は停滞で、希望は推進力、そんなイメージがある。愛に包まれていると苦しくなくなるけど、もうそこから一歩も踏み出せなくなる。冬場のお布団みたいな。生きるためには結局最後には出なくてはならない。そして出るためには希望が必要になる。
コロッケを食べたいから布団を出る。本当はコロッケは売り切れていて食べられないかもしれない。それでも布団は出ることができるし、冬空の下を歩くし、スマホを見るし、感情は動く。
こう考えてみると日々の行動も希望の連続で実行しているのかもしれない。
ただ、愛が不要な訳でもない。10年前の事件で地球は傷ついていたから、余計に愛が欲しかったのだろう。きっとあのラヴ達に助けられた人間も居たんじゃないだろうか。アルコが悲しい記憶を食べてしまって、でもそれに一時的に助けられたかもしれない当時のマルコがいたように。
それでも最後は傷も悲しみも怒りも、忘れない方が良い。それはやっぱり唯一のものだから。唯一はいつか特別になるかもしれないから。
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エンディングでマルコとアルコはお互いのことを忘れてるけど、アルコも変わらずトレジャーハンターを続けていて、芽生えた感情が残っていそうなのが良い。マルコとアルコがまた会うかも?という希望の終わり方なのもこの作品を良く表している気がする。
・アスタロト
この人(?)の話もやはりしておきたい。
作中だと描写はありつつ真意やなぜそう考えることになったかの深堀りは無かったと思う。のでかなり考察、というよりかはストーリー読んでて勝手にイメージしたアスタロト像の話となる。
最終目標としては銀河の支配=銀河を感情無き虚無にする、というようなことを言っていた。感情無い方が何事にも動じず強いよね、みたいな理論を言っていたと思うが、当のアスタロトが感情を持っている。
ハクアが欲しがっていたから地球を襲ったし、後継者はハクアじゃなくてもorハクアと同時並行で他の子を育てても良かったと思うが子であるハクアにこだわっていたように思う。これは親子の情がやはりあったのではと思わずにいられない。
また、ハクアに負の感情が己を強くするからいじめられて来いというような英才教育も行っていた。これはアスタロトの力もまた負の感情から来ているからこそでは?結局最後は感情を見せてマルコに負けた。
だから、アスタロトは自分の感情に薄々気づいていたからこそ、感情を消したがったのではないか、という印象だ。もっと完全になるために、それこそ銀河竜が目標みたいなものだったのではないかと(銀河竜は以前は銀河の支配者かつ感情も無いように思われていたと思う)。
それでも最後に勝ったのは感情を宝物にしてきた竜のマルコとアルコで、感情を不要としたアスタロトは竜になれなかったトカゲだった。(アスタロトが倒された後にトカゲになったみたいだけど、あれがアスタロト族の本当の姿だったりするのか?あれかわいい)
・なんか好きなシーン
プレイ中になんかスクショ撮ってたシーン
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エルさんも好きだよ
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すぐ死んで寂しい…(ラヴの術中)
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この状態で普通に友達になりたい、楽しい思い出だけじゃなくていいよ
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よく分からんプラモデルの元ネタだ!とテンション上がった
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言葉で表せないものはいくらでもある、本当は
普段は言葉をいっぱい使うから、勘違いしてしまいそうにもなるけど
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家族も居場所も一つじゃなくていい
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終わりに
最初switchのゲーム紹介欄だけ見てた印象だと穏やか冒険ファンタジーって感じに思ってたけど実際はもっと騒がしかった。
そして全体としてはかなり寓話的で抽象的な話で、今も理解できてる自信は無いけど、自分なりに色々考えられて面白かった。クリア後少し時間をおいて改めて考えるのが良い気がする。クリアしたては作品のパワーに圧倒されているから…
マルコとアルコのその後もだけど、マルコとアルコ以外のキャラのサイドストーリー的なものは無いのでしょうか?欲しい。
あとこのゲームの音楽良すぎる。クリア後に改めて聞くと勝手に感動の気持ちが湧き出る。