舞台「芸人交換日記」の感想
2024年2月下旬。
田中圭 出演作品を追うべく、観るべきものをリストアップしていた中で、「これ、今の私が今すぐに、絶対に観なきゃいけないやつ。」という作品と出逢う。
舞台「芸人交換日記」である。
! 以降、内容ネタバレ有りです。
オードリー 若林正恭と田中圭
オードリー 若林正恭×田中圭 は、個人的に非常に心躍るコンビ。
タナカーになって早々に、2人にこんな交点があったのかと驚いた。
というのも、ここ数年オードリーANNを毎週聴いていて、好きなお笑いコンビといえばオードリー。好きなラジオといえばオードリーANN(と星野源ANN)。
そして、ついこの前にオードリーANNの東京ドームイベントにも参加してきたばかりで。
言わずもがなイベントは最高だった。
あんな大きい会場なのに、前半はいい意味でいつも通りのラジオトークが繰り広げられたことに感動した。
ラストの漫才も、サンパチマイクがせり上がってくる瞬間からさらに感動。笑い尽くしの贅沢な時間だった。
そんな経験をして、オードリー熱が一層高騰中のリトルトゥースな自分と沼落ちしたばかりの新米タナカーの自分が喜ぶところをまんまと突く作品があるなんて!
即行、円盤を買いました。
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舞台って映像に残らないものが大半だから、ちゃんと盤になっていて本当に有難かった。
田中と甲本
芸人交換日記は、若林さん演じる田中と、田中圭さん演じる甲本(ややこしい)のお笑いコンビ・イエローハーツの物語。
タイトルの通り、田中と甲本が交換日記を始めるところから、物語は始まる。この交換日記は、イエローハーツ結成11年、30歳を機に今年こそ売れようと、コンビ間の言いにくいことや漫才のあれこれを交換日記にして伝えていこうと甲本が発案したもの。田中は乗り気ではなかったが、なんだかんだ交換日記を続けていくうちに、本音をぶつけ合うようになっていって…。というストーリー。
舞台の上手半分が甲本の部屋、下手半分が田中(が転がり込んでる田中の彼女)の部屋を模し、その真ん中にポストが立てられ、交換日記を投函し読み合い、やり取りがおこなわれていく。
舞台後方部、数段上に作られた空間も、ストーリーが進む中で様々な場所に変わっていく。
甲本と田中を行き来する交換日記と、日記の内容を互いに読み上げるテンポ感が非常に心地よくて、観ていて楽しい。
それと、開始5分も経たない中で、圭さん演じる甲本のセリフ量とエネルギー量に素直に圧倒された。
暑苦しく欲に真っ直ぐで、お調子者でちゃらんぽらんとした部分もある。こういう役を演る田中圭が好きだ。
反対に、若林さん演じる田中は冷静で現実的で、ヒモ生活の甲本とは相対してバイトもしている。淡々とした話し口調も若林さんにピッタリだと思った。
若手とも言えなくなってくる芸歴の芸人が、番組のオーディションでレギュラー掴みにいったり、落ちたり。局の人に良くしてもらっていたのにいざその時にはレギュラーに入れてもらえなかった前例があったり。
番組レギュラーと前説芸人の待遇差の現実に、プライドが邪魔して喜んで「前説やります」と言えない瞬間があったり。
きっとそういうネタも、TV業界あるある、芸人あるあるだったりするんだなあ。
コンビにハマる漫才のスタイルを模索していったり、"この漫才スタイルだよ!"って閃くところとか、どうしてもオードリーに重ねてしまう。
(オードリーのズレ漫才発明のお話は、ドラマ「だが、情熱はある」で追っているので、ご興味ある方、未視聴の方はぜひ観てほしい)
コンテストで敗退して挫けて、ネタ書いていない方コンプレックスが増幅したり、第三者から相方との実力差を突き付けられたりしてコンビとしての戦意喪失…そして家族の存在もあって、解散を決意しそれを切り出す甲本。
そんな一方的な解散を切り出された田中の、悲しみと怒りを腹の底に湛えて原動力にしたその後のブレイク。
だけど、結局お互いのことを想い合いながら、互いに生きる道を決めた覚悟は、紛れもなくコンビ愛といえる。
芸人として、売れない時期も売れた時期も生きてきた若林さんが生み出す演技も、ちゃんと芸人・甲本を生きた田中圭の演技も、エネルギーに溢れてて、心を動かされずにはいられなかった。
あのとき手に掴めそうだったずっと追いかけていた自分の夢を、諦めることができるって本当に凄いよなあ。私にはできるだろうか。
最後の天国漫才。泣きながら笑っちゃう漫才。
あー、会場で、手が痛くなるくらいの拍手をしたかった。
あと、タナカー目線として観ると、甲本の、彼女・久美に見せるヒモ彼氏っぷりも見どころだと思う。
ちょっと甘ったれた声色になるの、演技が細かくて好きだ。
最近のオードリーANNのトークで、「俺は演技が下手だ」と若林さんが話していたけど、最後の独白の号泣演技を見ると、とてもそうとは思えない。あそこで一番泣いたもの…。
本当にすごいエネルギーが詰まっていたなぁ…。
生でこのエネルギーを浴びていたら、観劇後立てない自信がある。本当に凄かった!
大好きな作品になりました。出会えてよかった。