ポケモンマルチバース考察⑧

 アニメ作品を見る時に、時の回廊をイメージできているだろうか。現在放映中のジブリアニメにも分岐する前の時の回廊が描かれていた。昨今の作品には、“時の回廊”をうまくイメージができないと話が分からないものが結構ある気がする。前提としてこれを理解しているというのは結構ハードルが高い気がする。意識して時の回廊のイメージを自分の中に作れていると、途端に、今までよくわからなかったアニメやSFのストーリー展開がわかる事がある。これがマルチバース世界観の鍵だ。

 ポケモンではSM以降に登場するウルトホールがそれに相当するだろう。完全に独断で言うが、あのウルトラホールは一直線のルートではなく巨大な円環上のルートで一周すると戻ってくる方がらしいのだ。あれは時空の通路という視点からは回廊なのだ。一周すると一階登っている場合も回廊の拡張型だ。スロープまたは回廊とアーチ状の階段の組み合わせで1階から最上階まで繋がっている高い城の内部のケースもある。

 話を戻すと、時の回廊とは、環状交差点のような感じで一巡する廊下をイメージするとわかりやすい。その円周上から分岐する道から別の場所へ出る事ができる時の通路だ。この別の場所が別の時間になったものが時の回廊のイメージだ。

 廊下の中にいて前後しか見えない者には、その道筋は直線に見えるが、何度も同じ道をぐるぐると回るために永遠の長さに見えているだけで、実はさほど長くはないかもしれない。永遠に続く時間を、針の回るタイプの時計の文字盤で表せる事を思い浮かべてもらえばいいだろう。

 イメージとしては、山手線から分岐する路線を辿っていけば日本国内のあらゆる鉄道網の駅へアクセスできる路線のようなものだ。(例外があっても責任は持たない)南端でも北端でも、出発点は同じ東京駅だ。

 この地理的展開と同様に、あらゆる時代への扉を開ければどの時間帯へも出られるのが時の回廊のイメージだ。ポケモンのウルトラビースト(UB)はウルトラホール(UH)のポータルから異なる時空の出口へと出入りする事を普通にやっていた。ポケモンに連れて来られた人間もいる。イッシュ地方にいたサブウェイマスターのノボリが昔のヒスイ地方へと移動する事が可能なのも、こうした時の回廊設定があってこそだ。ことさら、マルチバースの世界観が設定の根底にあるポケモンにおいて、時間と空間の設定、それらを操ることのできるポケモンの設定が重要だ。

 ポケモンの中には能力として、時間や空間を司る事のできるものがいる。初期にはセレビィぐらいしかなかったが、シリーズ毎に大物が再設定されていて、創造神は後から登場した。有名なところではアルセウス達だ。ポケモン世界の宇宙の創造主はアルセウスというポケモンで、その分身に、時間を司るディアルガ、空間を司るパルキアがいる。ここに、裏設定ポジションの破れた世界にいる反物質を司るギラティナが加わる。いずれもアルセウスの分身だが、見た目も違う。

 四足歩行獣型のディアルガと二足歩行獣のパルキアは、ルカルガンの真昼の姿、真夜中の姿と比較するとなんとなく性格が想像できる。昼の方のルカルガンは真面目な忠犬のようなポケモンだ。夜の方のルカルガンは化け犬のような人獣型の姿で、少々癖が強い。ディアルガとパルキアも、おそらくそんな感じで設定されている筈だ。

 ディアルガはルカルガンの真昼の姿の方のイメージに近く、忠犬のような性質のポケモンにデザインされていて、逆にパルキアはやや性格に難ある人獣型デザインされている。あのサトシの有名な台詞、「パルキアのバカヤロウ!」がこの二者のキャラのポジションを暗示している。ちなみにギラティナは更に問題児で、時間と空間の制約の外にいるポケモンだ。時間を司るディアルガが真面目で、空間を司るパルキアがやや不真面目で、不良のギラティナがいるというイメージで設定されているのではないかと感じる。

 あまり有名ではないが、XY劇場版以降に登場するフーパは、実はアルセウスの立場すら脅かしかねないチートな能力を持ったポケモンで、完全体はもはや大魔王だ。フーパの能力は腕に付けたリングで遠くの空間を繋ぐ事ができる能力だ。なんでもリングから引き寄せができ、向こう側へプールの水ごとサトシを遠くへ瞬間移動させる事も容易い。サトシのみならず、どこにいるかも定かでない伝説級ポケモン達を自由に出現させられるのもあまりにもチートな能力だ。

 フーパのリングはパルキアの作り出した空間に風穴を開けてしまう。その能力でアルセウス、ディアルガ、パルキアはもちろん、レジギガスやカイオーガ等各シリーズの伝説ポケモンやミュウまで自由に呼び出してしまえるのだ。もし、フーパが、悟空のように相手の気でその位置を捉えて移動が可能ならば、既にその能力は持っているとみなしていい。フーパはとうとう、自分がそのリングを通って移動する術すら身に付けてしまったのだから、もはや誰も手に負えない無敵状態の悟空と同じ能力を持っているチートポケモンだ。

 子供キャラの方のフーパは見た目通りに性格が純粋というか馬鹿正直で、ある意味扱い易い。子供受けという面では失敗してしまったXYシリーズだが、フーパやディアンシーは子供受けは良いはずなので、今後、再登場する可能性もある。セレナが、好物のドーナツでフーパを釣って‥という面白シーンなら見てみたいところだ。

 もしも、フーパが時の回廊の場所を、UHの出現場所を見つけたら、アルセウスですら抑えの効かない厄介な存在になるだろう。もし、一度でもフーパがUH内に入って場所を覚えてしまえば最強大魔神は完成してしまう。UHへの入り口を作れるUBがいれば(親同然のサトシがソルガレオやルナアーラに頼めば簡単に実現するだろう)かくして、ほんの少しの気まぐれでポケモン史上最強の魔神が出現する事になるのがフーパというポケモンだ。

 各シリーズとも、サトシや準レギュラーキャラがアクシデントで異世界や違う時代に入ってしまう事は何度かあったが、構造的に異なる時代や場所へ移動できるようにするには、制作側が設定からしっかり組み立てておく必要がある。この設定はたとえ公表されていなくても、きっちりと作られていないと視聴者には意味不明な展開になってしまい、付いてこられなくなる。

 もちろん、これで全てが一気理解出来るとは限らない。ここでいう時間移動をしたわけではないのに、シリーズ間の時間系列でどうにも辻褄の合わなくなってしまうキャラも存在する。 
 BWで登場した国際警察のハンサムはロケット団のムサシ、コジロウと組んでプラズマ団と戦った事がある。このハンサムという捜査官が後のSMのウラウラ島のしまキングクチナシである事は、ポケモン初心者でなければ知っている。

 プラズマ団との一件では、ハンサムの要請に応じて協力したムサシ、コジロウ、ニャースの活躍で国際警察に借しを作ったサカキとクチナシの関係も単純な敵同士ではない。かつてロケット団に借りを作ったSMのクチナシは記憶こそなかったが、何かを感じていたのか、サカキは知っていたのか、Zストーンをムサシに無償で与えた。それなのに、一緒に何度も戦ったサトシの事は覚えていないのはどうした?クチナシはほんとうに完全に記憶を失っているのか、サトシが別のサトシと入れ替わっているのかを疑わざる得ないのだ。

 記憶を失ったハンサムがアローラに流れて、やつれたシマキングのクチナシになるまで、あのアセロラが懐くまで、最低でも5〜10年、実質15〜20年は必要だろう。BWからXY、XYZ→SMまでどんなに長く見積もっても、ストーリー展開上のサトシ時間ではせいぜい1年だ。BW〜SMのサトシが1年未満なのに、BW〜SMのハンサム→クチナシの変遷には明らかに無理のある時間だ。

 このプラズマ団との戦いの時にゲーチスが召喚した四神の中の一神だけが居なかった。ラブトロスだ。ラブトロスが不在だったのは、昔のヒスイ地方のコギトがラブトロスを連れていたからだろう。ラブトロスはサトシの時代からコギトのいる時代へ時間移動している。ポケモンの中でも、同時に複数存在できないものは準アルセウス級の神レベルのポケモンだけだ。そのラブトロスはなぜ現代から150年前のヒスイ地方へ行ったのか?誰がと言えば、コギトの仕業だろう。一見、関係なさそうなサブウェイマスターのノボリもなぜ?この辺りには、まだ未回収の要素が多い。

 これは以前にも述べたが、やはりBWのサトシとSMのサトシとは別人になっているとしか思えない。一世代ぐらいのブランクがあってもちょうどいいぐらいの時間経過を感じる。BWの最後に、カロス地方楽しみだな〜と言っていたサトシとカロスでセレナやシトロンと旅をしていたサトシには連続性を感じるが、XYZの最後に、プラターヌ博士に君達はこれからどうするつもりかと訊かれたサトシが、0からやり直そうと思っていますと答え、プラターヌを驚かせたさせたサトシ。大人なプラターヌ博士は、それはサトシ君らしいねと答えていた。あ、やっぱり知っているんだプラターヌ博士はサトシがこれから別人にすり替わる運命にある事‥これはセレナやシトロンがいる前では100点の答えだ。

 イッシュ地方のサトシ、アローラ地方のサトシは、イッシュ地方のジョーイさん、アローラ地方のジョーイさんぐらいの違いがある。他にもドン・ジョージやパーサーのパーカーさんのように、同じ顔、同じ体格、同じ性格をしたキャラが同時に何人もいるのがポケモン世界だ。そして、お約束の、兄弟、従兄弟と答えたらそれ以上は追求しないシステムになっている。

 ジョーイさん、ジュンサーさんを筆頭とする同じ顔をしたキャラは、人型のポケモンがという裏設定があれば全て解消できる。時代を移行したキャラについては“時の回廊”、同じ顔をした違う地方にいるキャラについては“人型ポケモン”という理解を隠し持って置くと理解が速い。制作側が発表していなくても、こうしたキーワードをたくさん持っておくと、アニポケモンシリーズの26年分を数年で消化可能になってくる。その理解が正しいかは後で考えればいい。後から修正して行けばどんどん正解に近づいていくからだ。


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