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ブラックホールから考える、ワームホールの設定はどういう方針がいいのか

 ポケモンのウルトラホールとは、いわゆるワームホールの事を指している。ここではアニポケからも少し離れて、アニメやSFの設定としてのワームホールのあり方ーについて考えてみたい。

 時間と空間の扱い方はSF作品の設定といえど科学的視点からも十分に納得のいくものでなければいけないが、現在の最先端科学の水準は古典物理学ですら理解不能な域に到達している難物になっているので、何かしらの解釈がないと全く飲み込みようのない代物になっている。

 縦横高さの三次元空間は地上にいる人間ならば誰でも簡単にイメージできるだろう。では四次元は?三次元世界の住人の人間には、これは想像できない仕組みになっている。だからイメージは不可能、人間には分かりません、話は終わりです‥いや、少しは粘ってみようよという話だ。もののけの尻尾の先に指がかかれば、掴んでゆっくり引きづり出してみようという話なのだ。

 大前提として、そもそも宇宙空間には縦横高さの絶対方向など存在していない。面すら架空の定義に等しい。ただ方向が違う90度に交わる軸方向があるという認識なだけの定義に過ぎないのだ。地球の表面では縦横高さは重要だが、宇宙空間では、点か面で表せば十分な程に些細な違いでしかない。宇宙空間では我々が三次元と思っている縦横高さはほぼ同じものとして無視していいほどだ。我々が三次元と捉えているものは、宇宙の常識からみれば一次元に過ぎないのかもしれない。

 では、縦横高さの次の次元の軸の仮称を何と定義したらよいか。横ーX座標、縦ーY座標、高ーZ座標の次は?Zで終わりで次は??またAから始めたら宇宙の再生になってしまう。アルファベットの因果律を一つ戻って、仮にW座標としてみよう。あの図の高さに見えるものは、このWだ。現実世界のどこにW座標=W軸がある?条件は、XYZの全ての軸と直角に0点で交わり、時間軸に関数的に関わる事ができるという事だ。

 ただ、宇宙船の中にだけ、地球の慣習として三次元空間があると思っておけばいい。縦横高さの長さの違うサイコロの骨組みのようなトラストが宇宙船内部にあって、床があり、一応、天井っぽいもの、壁っぽいものがあれば区別がつく。三次元空間はこの宇宙船の周囲と船内に丸ごと閉じ込められていて、内部の乗員には縦横高さは一目瞭然だが、船の外の宇宙に出た作業員には縦横高さの意味が分からない。

 船内から宇宙に出た途端に、点で表していい程に、三次元以下の次元は無意味になってしまうのだ。人間主体で考えれば身体的特徴から右と左はなんとかわかる。だからXY軸の作る平面は何とか理解可能だ。ただ、宇宙空間は水中と同様に地に足の着いていない人間には上下の感覚がわからない。自分の頭上は、地上に立っている人の上とは一致しない。下を確保してくれる地上がないからだ。

 当たり前だが、宇宙空間には上下の区別がない。まず、この点を想像力の根底に据えてから考えてほしい。それを前提にした上であの図の構造を観測しないと意味が違ってしまうからだ。手短かに結論をいうと、今世紀までの人間の常識では、Z軸とW軸が混同されてきたように思う。象徴的にいえば、物質は地球の中心に向かって落ちてなどいない。ではどこに向かって落ちているのだろう。誤解される事を承知の上で敢えていえば、あっちの世界に落ちて逝く途上の現象を落下と解釈している。天国が空の上に、地獄が地の底にあるとなんとなく人間達が実感してきた理由はそれだ。

ブラックホールに引き込まれる宇宙船の図

 ブラックホールの説明の時に使われる、あの図の見方を多くの人が誤解しているような気がする。アインシュタインの重力場の説明で使われるあの図だ。宇宙には上下がない。これを前提にしてもう一度よく見てみよう。ブラックホールが凹んでいるのは高さの軸の話ではないのだ。凹んでいるのは次元の壁だ。時空間でいえばW軸側のマイナス方向へ凹んでいるという意味になるのだ。

 編み目状の碁盤に丸く凹んだブラックホールの説明図、あれは高さを表すZ軸方向にブラックホールが穴を掘ったような図になっているように見えるが、凹んでいるのはZ軸の貫いているXY軸面ではなくて、空間そのものが凹んでいるのだ。宇宙空間では高さが無意味なので二次元に落とし込んで説明しまえるのだ。もう高さは無いものと考えてしまう方が分かりやすい。だからブラックホールがZ軸方向に凹んでいるような誤解が生じる表記になるのもわかるのだが、高さの問題ではない点は意識しておく必要がある。

 星の中心に向かって引っ張られる力とZ軸への落下が一緒になっているのように見えるので、あの図を見る人がそう思う可能性が高くなる。人間の認識はZ軸に欺かれている。人間にはZ軸とW軸の違いを認識できないので、その事は結果的に秘匿されるしかなく、Z軸での話のように語るしかない。いまのところZ軸はW軸のそっくりさんの替え玉という理解で間違っていないだろう。隠されたW軸に向かって無限に落ちていく圏外の力を我々は引力と認識している。しかもそれは対象物を引っ張る力ではなくて、浴槽の排水溝に向かって水が押し込まれる時の力というべきだろう。銀河の中心にある力、ブラックホールの中心にある力、地球の中心の核へ向かう重力の動因はこれだ。

 ブラックホールに引き込まれていく道中ではX軸、Y軸に囲われた平面がまず一定でなく容易に変形する。それと相関関係で観測されるべき時間軸自体も伸びたり縮んだりする。X軸、Y軸に関数的に関わる絶対の恒常的な時間(T軸)など元々存在せず、宇宙規模でみる場合、時間軸で変化を観測するやり方は、ごく限られた範囲のローカルな類推論の一つでしかない事態が推測される。宇宙では観測に時間を使うのが適切でない事が次第に分かってきている。四次元以上の次元空間では時間軸は無意味になっていくので、数学的に時間軸を想定しても意味がない。これは四つ目の次元は、現在の我々が時間軸と感じているものの可能性が高いという事を意味している。五次元以上に時間軸は存在する必然性がないのだ。

 丸く凹んでいる斜面をビー玉が勾配に従って落ちていく図に違和感を感じないかもしれないが、その箱庭は、見る人が重力の働いている地球上にいる事を前提にしている。宇宙空間には上から下に向かう重力はない。では球を斜面の中心に走り進める力とはなんだ?とりあえず引力にしておくしかあるまい。星の中心へと対象物を落とし続ける力とは?その持続力はなんだろう。

 地上でも高い場所から地面に落ちたものは、地面に落ちた時点で終わりではない。地面が崩れて穴ができれば更に落ちるからだ。この力は永久に働き続けているのだ。磁力や電力は発生源の配列が変わったり、壊れたり、電源を落とせば終わるが、重力は理由もなく働き続けるのだ。

 全ての銀河が渦を巻いて回っているのも、中心にブラックホールがあって、水面にできた穴のように吸い込まれ続けているからのように思える。これは高さの問題ではない。空間そのものが吸い込まれているのだ。水面に浮かぶ船の模型やアヒルのおもちゃにはマストの頂上やクチバシの付いた頭があるが、縦横高さの関係無しに渦に丸ごと引っ張り込まれてしまう。この時、アヒルと船が接触して引き込まれれば粉々に壊れてしまうが、単体ならばそのまま引き込まれる。

 これは重力が引っ張り合う力という前提があるために起こってしまう誤解だろう。星の中心に向かって宇宙船が強力に引っ張られると考えればそうなる。これを簡略化すればZ軸とW軸は結果的に重なっているように見えるからだ。
 たまたま一致して見える場合はあるが、それらは別物だ。ブラックホールの中心を貫いているのはW軸であって、Z軸ではない。宇宙船の中の縦横高さの三次元空間がまとめて捻じ曲がって落ちて行くのであって、単純に高さが低い方向へ落ちているわけではない。人間の感覚では上に落ちていく事も普通にある。だから反重力技術には意味がないともいえる。落ちる先を上に設定すればいいからだ。ブラックホールの作る斜面では空間そのものが重力によって変形している。通常の三次元空間で捻じ曲げられて破壊されるのとは全く別の話になる。

 これはポスターに画かれた宇宙船がポスターごと丸められて変形しているのに近い。宇宙船のプラモをポスターで丸めて絞っているわけではないからだ。宇宙船だけに高重力が働いてグシャグシャに潰されるのとは違う筈だ。空間そのものの変形によるものだから、その内部では歪んだ感覚がない筈だ。ブラックホールに吸い込まれても重力で潰される事はないのでないか?ただ、強力な渦の流れがあれば船体がバラバラにされる可能性は否定できないが。この渦中に吸い込まれた惑星の残骸の量が多い場合、他の物質との衝突や摩擦力によって分解される事自体は否定していない。

 ブラックホールの観測的限界点とされる事象の地平面へ到達すると、宇宙船はこの世の視界から消える。次元の水面の向こう側(水中の世界)へ行ってしまうからだ。そういう意味ではブラックホールの更に奥の核の半分は既に我々の宇宙内には存在していない。だから宇宙船が核に到達する事はおそらくないだろう。だから核に到達せずに反対側へ出てくるというのがホワイトホールとワームホールの考え方だ。

 ブラックホールの核は、少し隙間のある湯船の栓のようなものだ。栓が水を引き寄せているのではなくて、栓の背後にある空間が引き込んでいる。正確には引き込まれる水の行き先を作っているだけで、動因は上からの力(重力)によって押し込まれていると考える方が体感的にも無理がない。この時点で、水を引っ張る力という前提が怪しくなってくるのだ。水は引っ張られているのではなく押されるように排水溝に流れ込んでいるからだ。

 全ての銀河が渦を巻いて回っているのも、中心にブラックホールがあって、水面にできた穴のように吸い込まれ続けているからだろう。これは高さの問題ではない。空間そのものが吸い込まれているのだ。そして、その向こう側から引っ張り続けている力は一体何だろう?

 黄色い時間軸上を進む宇宙船がブラックホールに吸い込まれる図を考えてみよう。この時、宇宙船は星の中心に向かって落ちて行くという観測は正しい。ただ、高さを表すZ軸上を落ちて行くわけではない。何しろ空間自体が歪んでいるのだからZ軸自体が歪んでいて綺麗な直線を描くわけがない。宇宙船はW軸上を落ちて行くのだ。観測する限り、W軸を落ちて行く方向性を持っているのは物質だ。質料の大きい物質ほど顕著にW軸に凹みが発生する。

 空間に上下が実質的にない宇宙では、反重力を成立させる意味がない。重力はXYZ座標でいうところの0地点で直角に交わる左後斜め下に落ちて消えていくベクトルだから、それが上にあれば上に落ちるという、カッコ付きの(反重力)になるからだ。落ちる方向だけの問題だからだ。

 反物質は宇宙の消失に関わる大問題だが、反重力は地球上で重力に抗して浮く以外の役には立たない。この場合の反重力は斜面を加速しながら下るトロッコの中の高い位置に上がる場所を探しているようなものだから、定義的にも抗重力で十分だ。反重力には作品として面白味をあまり感じない。

 ブラックホールのある平面は超弦理論のブレーンの存在する面になる。それが我々の見ているXY軸で囲われた面と重なっているが、同一ではないだろう。スクリーンとスクリーンに映された地面のような関係だ。だから落ちる先の地面は足元になくてもいい。空間にぽっかりとウルトラホールが出現するシーンもポケモンSMでは描かれていた。下に落ちていくという常識からまず自由になる必要がある。

 過去のアニメ作品にもワームホールのイメージに近いものがあった。舞台は日本の戦国時代だ。犬夜叉という漫画に弥勒という生臭坊主が出てくるのだが、右手を常に封印の布のようなもので覆っていて厨二心に刺さってくるキャラがいる。右手の手のひらに風穴というミニブラックホールがあって、強力な引力で周囲のすべてを強力に引き込んでしまう。ブラックホールの存在の仕方として非常に象徴的だ。

 この穴の先に重力の原因の根源があるのだが、それはこの三次元宇宙内に働く力ではない。それ故、重力はこの世の存在ではないともいえるだろう。重力は下に落ちているわけではなく、次元的に真空状態のあっちの世界へと押し込まれる力だからだ。

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