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豊田市美術館「ゲルハルト・リヒター」レポート

豊田市美術館ではゲルハルト・リヒター展が行われています。2023年1月29日まで。

今日もっとも注目を集める画家ゲルハルト・リヒター。1960年代の〈フォト・ペインティング〉から初公開となるドローイングなどあわせて約140点による、日本では16年ぶりとなる待望の回顧展です。
リヒターが90歳を迎える年に開催される本展は、身近な写真を拡大して描く〈フォトペインティング〉、ガラスや鏡を用いた作品、巨大なカラーチャート、そして抽象絵画など、彼が大切に手元に残してきた作品を中心に、60年にわたる画業を紹介します。なかでも、自国ドイツの第二次世界大戦時の暗部であるアウシュヴィッツの強制収容所でひそかに撮影された写真を出発点にした〈ビルケナウ〉は、2014年にようやく取り組むことができたと画家が語る集大成的な作品です。
本展は東京国立近代美術館(本年6月-10月開催)との共同企画ですが、豊田市美術館では、東京会場とはまったく違う作品の配置に、豊田会場でのみ展示される作品を加えた構成で、「20世紀後半の最も重要な画家のひとり、そして21世紀の最前線の探究者」リヒターの作品を紹介します。

PRより


1F 展示室8

ガラスと鏡、フォト・ペインティング、グレイ・ペインティング、フォト・エディション


1F 展示室8
ゲルハルト・リヒター 豊田市美術館 展示風景



8人の女性見習い看護師(写真ヴァージョン) 1966/1971 8枚の写真

空間を活かした展示構成で国立近代美術館とずいぶん展示設計が違いますね。8人の女性見習い看護師(写真ヴァージョン)は中央の女性の顔へ視線が集中するように横へ一列置かれています。



カラーチャートと公共空間、ストリップ、アラジン

1F 展示室8
ゲルハルト・リヒター 豊田市美術館 展示風景



ビルケナウ

1F 展示室8
ゲルハルト・リヒター 豊田市美術館 展示風景
ビルケナウ  2014 油彩、キャンバス



2F 展示室1

アブストラクト・ペインティング

2F 展示室1
ゲルハルト・リヒター 豊田市美術館 展示風景


高い天井高をもつ広々とした展示室へ大きなリヒターの作品がかけられています。



3F 展示室2-3

アブストラクト・ペインティング

3F 展示室3
ゲルハルト・リヒター 豊田市美術館 展示風景




豊田会場のみの特別出品として2022年の最新作を加えて構成

2017年に絵画制作からの「引退」を公表していたリヒターですが、2022年5月のバイエラー美術館(スイス)での個展において鮮やかな色彩の水彩作品を発表し、「リヒターはまだ描いていた!」と話題になりました。本展ではこの水彩作品の写真エディションを「特別出品」として加え、東京会場にて公開された2021年のドローイング作品とともにリヒターの最新の作品展開を紹介します。

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豊田会場に特別出展されている作品
ムード 2022 写真 作家蔵
ムード 2022 写真 作家蔵





リヒターの作品を鑑賞したぞ!と思える展示です。回顧的展示であるだけでなく、谷口吉生による建築の天井が高く広々としたまさにホワイトキューブな空間にゆったりと展示された作品をみているとそう思えてきます。
外光が入り込み固すぎない空間は外の状況で雰囲気が変わるため何度も来るのであれば時間を変えてくるのも良いかもしれません。
巡回を終えた東京国立近代美術館とは鑑賞体験がずいぶんと異なります。しかしぴったりとも言えるこの豊田市美術館以外で、なぜ国立新美術館という独特な会場を作家は選んだろう、美術館設計者の谷口吉郎と谷口吉生という関係もあるかもしれないし、近代以降の美術を担う「国立」の美術館という考えもあったのかもしれないかな、などと、様々な角度から考察できるのもやはりリヒターの展示ならではないでしょうか。
また最新作《ムード》が豊田会場のみ出されています。こちらも見所ですね。
国立近代美術館で鑑賞した人もぜひこちらで見てほしい展示です。




分厚い図録。充実の内容です。
手に入れたのは第三刷なのでなかなかの売れゆきなのかもですね。




概要

場所:豊田市美術館
日時:
2022年10月15日 - 2023年1月29日
午前10時-午後5時30分(入場は午後5時まで)
休館日: 月曜日(2023年1月9日は開館)、年末年始(2022年12月28日-2023年1月4日は休館)
https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/gr_2022-23/


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