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芥川紗織 烈しいもの。燃えるもの。強烈なもの。#2  NUKAGA GALLERY(銀座)

芥川沙織展がNUKAGA GALLERYで10月10日(木)より行われています。
戦後日本の前衛アーティストを再評価する機運を高める試みをしているギャラリーでは、芥川沙織の展示を今年5月に開催、本展がその2弾目となります。10月31日(木)まで。



《民話 生剝げばなし メイシャアイシャバユバユ》 1955
染料、布
《作品Ⅱ》 1956
染料、綿布

布に染料を使い描いた作品。
芥川といえば物語性をもった図像が印象的で、特に画像だとそれが際立ちますが、実物を見ると、油絵の具を塗りつけて描く絵画と異なる染料技法独特の表現の面白さに気付かされます。展示されている作品のいくつかはアクリルパネルが使われておらず、より染料表現の良さを実感できます。


《無題》
油彩、キャンバス



《無題》
染料、布
《無題》
油彩、キャンバス

ミュージアムピースと言えるほどの大作と、アメリカ渡米後に油彩とデザインを学んだ以降の色面構成を油彩で描く抽象絵画も。



パステルを使用した作品が並ぶ。


《人(C)》 1955
染料・パステル、布
紙へオイルパステルで描いた作品



独特な雰囲気の応接室にも作品が並ぶ。


《無題》
油彩、キャンバス


紙へオイルパステルで描いた作品。


《無題》
油彩、キャンバス


芥川沙織(間所沙織)は10代の頃から絵と声楽を習い、東京音楽学校(現・東京藝術大学音楽学部)で声楽を学びますが、作曲家の芥川也寸志との結婚生活を契機に絵画制作を始め、ろうけつ染めを野口道方、絵画を猪熊弦一郎に学びます。離婚後の1959年に渡米、デザインと油絵を学び、間所幸雄と再婚し、1962年に帰国します。
芥川沙織は、芥川也寸志の音の世界と自分の声の共存の難しさから声楽をやめ、家事に励むものの「抑圧された自己表現欲のようなものがうめき」、絵画制作を始め、そこで油絵でなく染色技法を用いたのは、蝋の垂れ具合や染料の光沢に魅了されただけでなく、子育ての傍ら限られた時間で「ブッつけ本番、ダイナミックに描き進め」られる手法として選び取られ、また古くからある染色技法で、日本の現代女性を描き、現代の絵画を描くという強い意思もあったからでした。渡米後、生活も作風も変わりますが、「私は芸術家以外のものになりたくない!魂の真実を語る者でありたい!」という姿勢は一貫していたのではないでしょうか。
(参考 MOTコレクション 竹林之七妍 間所(芥川)沙織 章解説)


NUKAGA GALLERYは2016年に前衛の女性作家を再評価をする「Demythifying Japanese Women Artists ―女たちは神話をほどく― 桂ゆき 草間彌生 田中敦子 名坂有子」展を行い、本展はそれに続く展示といえます。
先の展示では小勝禮子監修による図録を出していましたが、本展でも芥川沙織の作品集「烈しいもの。燃えるもの。強烈なもの。芥川紗織 生涯と作品」(監修:工藤香澄)をギャラリーから出しています。
調査研究をギャラリーが先行して自ら行い、資料まで出すというのは、価値を創造する画廊の活動として、また美術の活動としても重要でしょう。
今週までですが、ぜひご覧になってはいかがでしょうか。


作品集「烈しいもの。燃えるもの。強烈なもの。芥川紗織 生涯と作品」
画像提供:NUKAGA GALLERY


芥川紗織:烈しいもの。燃えるもの。強烈なもの。#2
会期:
2024年10月10日(木)-31日(木)
月-金:10:00-18:00、土日祝休廊
会場:
NUKAGA GALLERY
東京都中央区銀座2-3-2 3F
https://www.nukaga.co.jp/exhibitions/exhibitions-703/




芥川紗織の作品が各地の美術館で鑑賞できるプロジェクト、「Museum to Museums」が開催中です。


MOTコレクション 竹林之七妍
2024年8月3日 - 11月10日
東京都現代美術館
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-240803/

間所(芥川)紗織 《女 Ⅺ》 1955
のり染、インク/綿布
間所(芥川)紗織 《イザナギノミコトの国造り》 1955
のり染、インク、パステル/綿布


芥川(間所)紗織 生誕100年 特設サイト
Museum to Museumsプロジェクト

https://saori-100th-anniversary.com/




ハニワと土偶の近代では芥川沙織最大級の作品が出展されています。

ハニワと土偶の近代
会期:2024年10月1日 – 12月22日
東京国立近代美術館 
https://www.momat.go.jp/exhibitions/560

芥川(間所)沙織《古事記より》1957 
世田谷美術館蔵 
プレス内覧会で撮影




参考

Photo by Fuyumi Murata

小さな独立国家に風は吹くか――梅津庸一キュレーション展「フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」レポート 中島水緒https://note.com/misonikomi_oden/n/n31fff4fbfe95


特にクレジットが無い画像は筆者撮影

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