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加藤泉 一 寄生するプラモデル ワタリウム美術館
ワタリウム美術館では2022年11月6日より加藤泉さんの個展が開催されています。2023年3月12日まで。
新型コロナウイルスのパンデミックで展覧会が延期になったり中止になったりして、久々にスタジオでゆっくりプラモデルを作っていた。
ヤフオク!やeBayで調べていたら、動物や昆虫などのプラモデルを発見し、昔のプラモデルは面白いなーと思い、買いあさっていた。作っているうちに、これは作品に使えると思いだし、早速木彫にひっつけてみた。これはいけると思い、どんどん作った。そうしているうちに、友人に「ゴモラキック」の神藤政勝さんを紹介された。彼はフィギュアやプラモデルを作っている人だった。「何かやりたいですね!」と話をしているうちにすぐに「プラモデル、しかも石作品の!」と閃いた。石がプラモデル。デカールが絵。
今までの僕の作品ともつながるグッドアイデアだと思う。 もちろん箱も僕が作るのだ。
素晴らしい。モチベーションはMAXだ。そうしてプラモデルが完成し、この展覧会を開催することになりました。
プラモデルを使ったシリーズと、それらにつながる僕の作品を見てください。
加藤泉
加藤さんとは2022年のリボーンアート・フェスティバル(*)への参加をお願いして、何度かお目にかかり、アトリエを訪ねているうちに、この「寄生するプラモデル」の開催となった。
リボーンアート・フェスティバルのために作られたこの作品は、石巻近くで採れる稲井石を組んで、それに直接ペイントした「ヒトのような像」で、東日本大震災で最も大きな被害のあった南浜地区に唯一残った蔵の前に3体展示されていた。気持ちよさそうに横たわるその姿は、観るものをほっとさせ、生の喜びのようなものを感じさせる。加藤さんの作品にはこの「ヒトのような像」が必ず登場する。精霊なのか、神なのか、縄文人のような古代人か、あるいは未来から来たものか。インタヴューで自身が島根県安来市の出身で、妖怪漫画で有名な水木しげるが中海を挟んだ対岸の鳥取県境港市の出身で同じ文化圏であることを話されていたが、加藤さんがそうした八百万の神と自然に囲まれて育ったことは作品に大きな影響を与えていると思う。だからといって加藤さんの作品は神がかったいわゆる“ありがたい”ものではない。今回の展覧会で使われる素材は、これまでの木や石といった自然素材に加えてプラスチック製のプラモデルやソフトビニールも登場する。加藤さんの少年期のノスタルジックな素材感からやってきたものだろう。今、加藤さんはそんな自身の育った場所や時間や潜在意識の中にある自然への思いなどを縦横無尽に取り込んで、のびのびと作品を作り続けている。
そんな現在の加藤さんの姿は、ワタリウム美術館がこれまで続けてきた美術との向き合い方とどこか通じるところがあり、同志の感のようなものを抱いた。自由や自然の力を見失いかけている2022年の東京で、加藤さんの作品を紹介できることをとても嬉しく思っている。
和多利浩一(ワタリウム美術館) 本展カタログのためのテキストより
*「Reborn-Art Festival 2021-22」[後期]。2022年8月20日~ 10月2日、宮城県石巻市で開催された芸術祭
展示風景
2階
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3階
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4階
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展示図録も初日から購入できます。作品解説や関係者のテキストも収録。ぜひご覧ください。
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「加藤泉 ー寄生するプラモデル」関連企画トークイベント
■「世界中を共に旅したけれど、ずっと聞きたかったこと」
石原正康(幻冬舎 専務取締役)+ 加藤泉
2022年11月26日(土)
■「アート発祥で回帰したプラモデル本来の自由さ」
神藤政勝(ゴモラキック 代表取締役社長)+ 加藤泉
2022年12月17日(土)
■「画家、石を掴み、プラに挑む」
神谷幸江 (キュレーター)+ 加藤泉
2023年1月7日(土)
会場:ワタリウム美術館
料金:1回 ¥1,000、各回 40名
販売期間
2022年10月20日 12:00 〜 各開催日19:00まで(定員になり次第〆切ます)
概要
会期
2022年11月6日(日)〜 2023年3月12日(日)
休館日
月曜日(1/9は開館)、12月31日-1月3日
開館時間
11時より19時まで
加藤泉とTHE TETORAPOTZ, Potziland Records Pop-up Store
ワタリウム美術館地下のオン・サンデーズでは加藤泉展にあわせ「THE TETORAPOTZ」の展示を行っています。
ワタリウム美術館で開催される展覧会『加藤泉 ― 寄生するプラモデル』に併せて ライトシード・ギャラリーでは、加藤が設立した、美術と音楽の交差するところで 生まれるものを扱うレーベル「Potziland Records」にフォーカスし、アーティスト 自身が参加するバンド『THE TETORAPOTZ』の活動と、メンバーの南隆雄、 Mrs.Yuki によるアートワークを展示いたします。併せてその活動から生まれたレコード、 書籍、プロダクトを販売します。
展示風景
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レビューとレポート