「月刊ころん特大号〜Brand New Wave Over Ground〜」と「GIRL’S TALK」 宮野かおり 新宿眼科画廊
宮野かおりが自身の個展とキュレーションをしたグループ展を新宿眼科画廊で行っている。2024年10月23日まで。
月刊ころん特大号〜Brand New Wave Over Ground〜
「2000年代前後の少女マンガ」表現はまだ研究が進んでおらず、またキャラクター絵画とよばれる美術表現でもあまり見ることがないそれを宮野は自身がマンガ原稿へあこがれ思い描いていた大きさの巨大な絵で表現している。しかも画材にマンガ用のものを使用する徹底さ。
弊誌「レビューとレポート」は月刊誌としてプラットフォームであるnoteを使い「出版」している。そのnoteページヘッダーの見出し画像を本誌「表紙」として、毎号作家に新作品を作ってもらい「表紙絵」として掲載してきた。コミッションワークでもある弊誌からの要望はnoteのヘッダーサイズの1280×670px(px=Pixel)の画像をデジタル入稿することくらいなのだが、宮野は月刊マンガの表紙の仕事としてとらえ、憧れた巨大さを求めPixelをミリに変換し、毎回そのためのプロットをつくり、密度の高いきらびやかな装飾を施された群像の横幅1mを超える絵として仕上げてきた。本展はその原画展という面もある。
表紙を担当した最後の絵は本誌が出ていないことや、作家本人の体調もあり受取っていないが、原画は展示されているので現地で見てもらいたい。
(ちなみに 弊誌主宰の みそにこみおでん は編集長と名乗ったことはないため、作家のコンセプトからそういう立場にしてしまっているのかもしれない)
GIRL’S TALK〜presented by 宮野かおり〜
木川みくの作品を筆者が昔見ていると、木川本人から指摘された
少女文化の表象や色をあえて使用し作品を制作し90年代初頭頃から活動する西山美なコも参加。西山の作品について宮野は「今回展示されている「エリカちゃん」の作品は、1960年代頃の少女マンガを参照、当時少女に絶大な人気があった少女表象を「テレクラ」広告に仕立てるというショッキングな作品です。70年代以降のロリコンブームを踏まえ、少女のための表現が男性の性的な眼差しで消費・活用されうるというある種のグロテスクなことを、女性自らが作品として発表」したものと投稿している。(引用元 https://x.com/eternal_kaorin/status/1847052965624103129)
前本の作品「Armor Queen」と宮野の作品とが並んでいる。それについて前本は「宮野かおりの『峠越えの女神』を購入していて、その返歌のつもりで作ったのが今回のこの『Armor Queen』だ。隣に誰の作品を置くかを間際まで考えて貰ったのだが、始まりがそれならばということで当日、急遽手持ちの宮野作品を貸出展示することになった」(引用元 https://www.facebook.com/shoko.maemoto.9/posts/pfbid0BjWNGQEBKJAjTKwGk3DxAtETGfzmVPjMtGM72bPkBTPJAWa3NCtP2Piu5yRN1NWYl )という投稿をしている。
前本は女性作家として様々なライフイベントに直面しつつも今も精力的に制作を続ける、出展した作家たちからすれば女性作家としてのライフコースの先駆的存在。前本はグループ展へ「対バンだと思ってるから絶対負けない」というつもりで出るそうだが、若い女性作家との繋がりと応援も込めて作品を作るところに連帯とエンパワーメントを感じた。
本展にあわせて図録、いくつものグッズが作られている。月刊ころん特大号へ出している作品を掲載した図録は月刊少女マンガ雑誌を模したものであり、GIRL’S TALKの作家とその作品を紹介する本は、ころん別冊スペシャルブックという特別付録のような体裁になっていた。その他シールやアクリルキーホルダー、作家たちが作るオリジナルグッズなどもあり、盛りだくさん。
図録を読むと、宮野のきらびやかな絵画はマンガ文化のみならず、美術やジェンダー、キャラクター表象などさまざまなコンテクストが内包されて作られていることにも気付き、作品を読み解く一助になるだろう。展示会場には作品制作のための参考文献も多数あり読むことができる。
月刊ころん特大号〜Brand New Wave Over Ground〜
2024年10月11日(金)~ 23日(水)
12:00~20:00(水曜日~17:00) ※木曜日休廊
スペースM、O
同時開催 GIRL’S TALK〜presented by 宮野かおり〜
スペースO
レビューとレポート