入社3日目にして
福岡に引っ越してきて、先日ようやく職を手にした。
と言っても、近所のスーパーのパートであるが。
私が所属しているのは鮮魚部門だ。
要は刺身や生魚を取り扱う部門である。
私が働いているスーパーの鮮魚部門はチーフ、シニアのおばちゃん、私しかいない。
この時点で既に色々とおかしいのだが、そこはもうツッコむまい。
パートのおばちゃんはテキトーときっちりが5:5。
分量はある程度テキトーだが、美味しそうに見える綺麗な盛り付けの仕方を教えてくれる。
そして、チーフがまた面白い人なのである。
何を聞いても、「テキトーに!」としか返ってこないのである。
海鮮丼を作るためのネタをどれくらい作ればいいのか。
タオルを洗濯した後の脱水は何分回せばいいのか。
海鮮丼に乗せるネタは何にしたらいいのか。
何を聞いても「テキトーに!」としか返ってこない。
まだ入社して3日目、適当な分量など分かるはずがない。
それを言われる度に、「……分かりました!」と返事をしてテキトーにしてしまう私も私である。
このチーフにしてこの私あり、だ。
そして本日が入社3日目だったわけだが。
入社3日目にして、加工場に一人取り残されるという事態が発生した。
何故こんなことになったかというところから説明しよう。
チーフが14時から会議があるらしいのだが、なんとシニアのおばちゃんが休みなのである。
かといってチーフが会議に出ないわけにもいかず。
そんなこんなで私は加工場に一人取り残されたのである。
入社3日目、まだできる仕事がそうあるわけでもない。
とりあえずチーフが加工場から颯爽と去ってから、私はひたすら海鮮丼を作り続けた。
何とか海鮮丼を作り終えたところで時間は14時30分。
私の定時は16時。まだ1時30分もある。
洗濯と脱水が終わったタオルを干して、売り場に行って商品の陳列を直し、温度管理表なるものを記入する。
鮮魚部門の仕事で、私一人でできる仕事はここまでだ。
この時点での時間は15時。
やれることもなく、うろうろと店内を2周したところで加工場に戻った。
が、加工場に戻ったところで私を待っている仕事など一つもなかった。
そこで私が向かったのは、惣菜部門。
頼むから私に仕事をくれ。給料泥棒でクビになりたくないんだ。
二度ほど断られたがそれでも食い下がり、何とか仕事にありついた。
揚げ物をパックや袋に詰め、パックにラップを巻き、ラベルを貼る。
去年の12月半ばから今年の1月末まで、静岡のとあるスーパーの惣菜部門で働いていた私だ。
その時とやることは何ら変わらなかった。
鮮魚の仕事をしている時よりもスピーディーに仕事を終わらせられたのはいいが、そのせいで惣菜部門の人達の仕事が早く終わってしまった。
この時点での時間は15時30分。定時まで後30分だ。
本格的にやることがなくなって、割引シールを貼れる時間になったため、割引シールをぺたぺたと貼っていく。
スーパーのお弁当などにはシールやラベルなど、何かとシールが貼られているが、この作業が何気に好きだ。
陳列を直しつつ、小声で「ぺた」と呟きながら割引シールを貼っていく。
割引シールを貼り終わり、謎の達成感を得たところで加工場に戻って時間を確認すると15時50分だ。
入社3日目のパートに加工場を一人で任せるなんて正気の沙汰ではない。
何としても早く仕事を覚えなければ。
でないと、困るのは次一人で加工場に残された時の私だ。
そんなこんなで加工場で一人の状況を何とか乗り切り、無事に定時で仕事を終わらせた私であった。