低温調理器を買ったら綺麗なチャーシューができた話
この記事はMobility Technologies Advent Calendar 2020の20日目です。
好きですよね?チャーシュー。
そう、ラーメンに欠かせないアレです。
中国では豚肉に複数のスパイスを塗布し、蜜などでコーティングしつつ炉(オーブン)で長時間加熱したものを叉焼(チャーシュー)と呼んでいるそうで北京ダックのような見た目になるようです。
一方、醤油をベースとしてニンニクやショウガ、長ネギなどの香味野菜と砂糖やみりんなどを使って長時間煮込まれたものは焼豚(チャーシュー)と呼ばれてます。日本では多くの方がイメージするのはこちらかと思います。その作り方から煮豚(にぶた)、中国では醤肉(ジャンロウ)とも呼ばれるようです。
このように様々な起源がありますが、日本のラーメン文化の発展に伴いチャーシューの姿も変わってきています。とろとろになるまで長時間煮込んでみたり...バーナーで炙ってみたり...さらには鶏チャーシューなるものまで生まれました。多様性の恩恵を受け近代においてチャーシューは概念となったのです。
前置きが長くなりましたが、今回は焼きもしない煮込みもしない低温調理によってチャーシューを作ったお話です。
低温調理ってなんですか
意識が高そうなラーメン屋さんでピンク色の綺麗なチャーシューをみたことはないでしょうか。全然火が通っていなくてそんなの食べたら腹を壊しちゃうんじゃないかと思ったそこのあなた。違うんです。
元々、お肉のピンク色はミオグロビンというタンパク質に由来しており、60℃を超えると徐々に色が褐色〜灰褐色へと変色していきます。
つまりこの変色が起きない60℃くらいの温度で加熱すればお肉の鮮やかな色を維持したまま加熱することができるのです。ただ見た目が綺麗というだけではなく、水分が分離すると言われている68℃未満で調理するとしっとりジューシーに仕上がることも大きな特徴です。
この調理法は低温調理と呼ばれており1979年にフランスで開発された比較的新しい調理方法です。低温とありますが100℃未満で調理されたものを指し、真空の袋に入れて調理することから真空調理とも呼ばれます。
低温調理器を買ってみた
元々炊飯器を使って低温調理でチャーシューを作っていたのですが、温度コントロールができないので仕上がりにムラがありました。しかも炊飯器がチャーシュー臭くなるおまけ付き。(ご飯がススムような匂いではない)
どうせならしっかり温度管理して作ってみたいと思い切って低温調理器を購入してみました。低温調理器は多くのメーカーが販売しており選択肢がかなり多かったのですが、比較的値段が安く評判の良さそうな「マスタースロークッカーS」に決めました。
今回は折りたたみ式のバケツに水を張って作っていきます。
低温といっても60℃を超えるため、バケツの耐熱温度には注意が必要です。
チャーシュー作ってみた 【鶏チャーシュー編】
前述の通り、チャーシューは概念となったので鶏肉を使ってもチャーシューは成立します。
今回は鶏むね肉を使った鶏チャーシューを作ってみます。
鶏むね肉ってパサパサするから苦手な方もいるかと思うのですが、低音調理で加熱するとしっとりジューシーに仕上がります。
まずはレシピです。
鶏むね肉: 1枚
鶏油: 適量
ニンニク: 適量
こしょう: 適量
塩: 適量
鶏むね肉についている皮や白い部分を最初に外します。
とったあとはこんな感じです。
外した皮からは鶏油を抽出できるので取っておくのがおすすめです。
厚みがある場合は加熱に時間がかかってしまうので時短にするために薄くします。今回は最大で20〜25mmくらいになるよう切り分けました。
全体に薄くこしょう(ホワイトペッパー)を振り、鶏油と一緒にジップ付き袋に入れます。単純な塩胡椒だとサラダチキンになっていまうため今回は鶏油でアクセントをつけています。鶏油を作った時のニンニクも一緒に入れました。生姜やネギなどの香味野菜を入れても美味しそうです。一緒に塩を入れてしまうとお肉が硬くなってしまうのでこの時点では塩を入れません。
ジップ付き袋は耐熱温度に注意してください。ジップロックのフリーザーバッグは耐熱温度100℃までなので重宝しています。
袋に空気が含まれると熱の伝達が遅くなるので封を閉じる時は真空状態が望ましいです。真空調理用に空気を抜く機能のついている袋も売っていますが、水圧法やテーブルエッジ法という方法を使えばジップロックでも真空に近い状態にすることができます。(写真は水圧法で封をしました)
早速調理していきます。
低音調理で大事なのは温度と時間の2点です。
低音調理で有名なBONIQというメーカーがあるのですがこの会社が熱心に低音調理の研究をしており、低温調理 加熱時間基準表なるものを公開されているので調理時間に困ったらこれを見るのが良いと思います。
鶏肉を加熱する場合は60℃を下回ると細菌が死滅しないことがあるようなので今回は60℃で加熱します。加熱時間基準表によると60℃で25mmの場合は1時間50分となっているので低温調理器に設定し、お湯の温度が設定値に達したら袋ごとバケツに投入します。低温調理器の近くに袋が寄ると火の通りにムラが出てしまうのである程度離した方が良いです。
1時間50分たったら袋を取り出します。室温で冷ますと細菌が繁殖しやすいとのことなので氷水で急冷しました。
荒熱が取れたら袋に塩を入れて冷蔵庫で一晩寝かせます。
雪塩という宮古島の塩は粒子が細かくて味が染み渡るような気がして好きでよく使ってます。
一晩経ったらお好みの厚さにスライスします。
ほんのりピンクの綺麗な鶏チャーシューができました。
チャーシュー作ってみた 【豚チャーシュー編】
豚じゃなくてもチャーシューではあるのですがせっかくなので豚のチャーシューも作ります。豚肉の場合はバラや肩ロース、モモなどでチャーシューを作ることが多いのですが、脂身の多いバラは長時間加熱するほど旨味が出るためあまり低温調理に向かないです。なので今回は肩ロースを使いました。
レシピです。
肩ロース: 400g
醤油: 大さじ4
酒: 大さじ3
みりん: 大さじ3
ネギの青い部分: 1本分
ニンニク: 1かけら
ショウガ: 2mmのスライス1枚
鶏の方は塩味だったので豚は醤油味にします。タレに使う醤油は複数種類をブレンドすると深みが出るので家にいくつか醤油がある場合はおすすめです。
醤油・酒・みりん・ネギの青い部分・ニンニク・ショウガを鍋に入れ弱火で沸騰させます。アルコールが飛んだら火から下ろし、タレの完成です。
このタレと残りの材料を全部ジップロックに入れます。(ちょっと空気入ってますが水圧法で封をしました)
豚肉の場合は63℃で加熱します。厚さが約40mmほどあったので3時間調理します。時間になったら鶏と同じように急冷したあと冷蔵庫で一晩寝かせます。
翌日出してみると不穏な色合いの肉塊が。
インパクト重視で水平方向?にスライスしました。
不穏なのは外側だけで中身は綺麗なピンク色のチャーシューになってました。
チャーシュー作ってみた 【牛チャーシュー編】
鶏・豚と来ればもちろん牛。ここまで来ればお察しだと思いますが、牛だとしてもチャーシューはチャーシューです。
レシピです。
牛モモ: 500g
醤油: 大さじ4
酒: 大さじ3
みりん: 大さじ3
乾燥昆布: 1枚
近所のドンキで半額の牛モモがあったので出来心で買ってきたのが始まりです。
豚の味と差別化したかったので香味野菜は入れないでタレを作りました。
ジップロックに入れる際に昆布も一緒に入れます。
時間は豚と同じく63℃で3時間。実は一緒に作りました。
(左が豚で右が牛)
時間になったら急冷して冷蔵庫で一晩置きます。
豚と同じく見た目はよくない。
切ってみるとなんとも綺麗なローストビーフ!!もといチャーシューです。
(noteで取り消し線使えないのがこういう時に不便)
ラーメンにのせて食べてみた
鶏豚牛のチャーシューが勢揃いしたのでラーメンにのせてみました。
【鶏チャーシュー】
鶏油につけているのでサラダチキンほどはさっぱりしておらずしっとりジューシー。鶏むね肉ってこんなに旨味があるんだと感じました。ニンニクや魚介の出汁を加えて作ってみても良いかもしれません。
【豚チャーシュー】
柔らかレアチャーシュー。味もほどよく染みていてよくできました。
ラーメンのスープが60℃を超えるので時間が経つにつれピンク色が褐色に変わっていくので食感の変化を楽しむのもまた一興です。
【牛チャーシュー】
これは・・・チャーシュー・・・なの・・・か・・・?ローストビーフ・・・では?という見た目を裏切らず味や食感もローストビーフ。残念ながら昆布感はあまり感じられなかった。おいしくないというわけではなく、チャーシューと呼ぶよりまさにローストビーフ。牛肉をチャーシューに昇華することができなかった私の負けです。
丼にしたらどうなのか
ラーメンにのせてみたところあまりにも牛チャーシューの出来がローストビーフだったので丼にしてリベンジしました。
牛チャーシューを人肌程度に温めてご飯の上に並べてネギと味玉を添え、砂糖とニンニクを効かせた甘辛い醤油ダレをかけて。
とても美味しいローストビーフ丼ができました。
おしまい
いかがでしたでしょうか。
今回はチャーシューという概念に向き合い、対話し、その奥深さを痛感する良い機会でした。
チャーシューをのぞく時、チャーシューもまたこちらをのぞいているのだ
明日の21日目はtakahiaさんのフルリモートなので自宅に猫をデプロイした話です。お楽しみに!