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家事という名のタイムカプセルをつなぐこと❄️すのう杯❄️
実のところ、私は家事があまり好きじゃありません。
独身時代は汚部屋の住人で、整理整頓は大の苦手。
人並みに出来る家事は、洗濯(洗濯機がやってくれるから)と子供のころに祖母に仕込まれて最低限できるようになった料理くらい。
だからこそ娘には「家事が普通にできる子になって欲しい」と、幼稚園のころから少しずつ教えてきたつもりです。
そして今、中学生になった娘は整理整頓が得意で掃除好きな子に成長。料理をやらせれば卵焼きはきれいに巻けるし、カレーも普通に作れる。
私はまずまず目標達成?とは思っていますが、娘本人に聞くと「家事の中では料理は好きだけどきらい」なんだそう。
その理由は「包丁が怖いから」。
包丁はとんがっていて、手を切りそうなのがイヤなんだとか。だから娘は料理はできるけど、包丁でりんごやじゃがいもの皮むきができません。
代わりに、娘の料理作りにはキッチンバサミや皮むきピーラーが大活躍!
じゃがいもはピーラー使って皮を剥くし、ネギや葉物野菜、ちょっとした食材なんかは手際よくキッチンばさみでバシバシ切る。
いずれは包丁もちゃんと使えるようになるのが一番だけど、包丁以外のツールを使って料理ができるなら、それはそれでいいのかな?と思うんです。
この前の夕飯も「なんか急に卵が食べたい」と言い出して、カニカマ入りの卵焼きを作ってくれました。カニカマはやっぱり、キッチンバサミでバシバシ切りながら。
そんな、キッチンに立つ娘の背中を眺めていたら「そういえば私が家族に初めて作った料理は卵焼きだったな」と、ふと思い出したんです。
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私が子供の頃、両親は共働きで仕事が忙しく、同居している祖母が私の面倒を見てくれていました。そのため私は極度のばあちゃん子として成長します。
母は毎日遅くまで残業があるため、夕食はばあちゃんの担当。そのくっつき虫の私は、小学生の頃からばあちゃんと肩を並べつつ夕食作りを手伝うことが多かったんです。
そこで、ばあちゃんに教えてもらった卵焼き。
卵に醤油、お砂糖はたっぷりめで、見た目は茶色いけど甘じょっぱくてホクホクおいしい卵焼き。
ばあちゃんに「フライパンに油をもっと引いて」とか「火が強すぎ!」とか言われながら初めて焼いた卵焼きは、茶色くてしょっぱかった。
だけど、家族みんなが「よくやったじゃん!」と食べてくれたのが猛烈に嬉しかったのを覚えています。
そんなこんなで時は流れて。
現在、私は韓国人と結婚して韓国に住んでいます。日本料理を作る機会はめっきり少なくなったけど、私が作る日本料理は基本的に茶色いものばかりです。
卵焼きは茶色、きんぴらも茶色いし、煮物も茶色い。
ばあちゃんがいなくなって、私もだんだん年を取って、住む国も変わってしまったけれど、ばあちゃんから教わった味は、今でもあの頃のままです。
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家事ができるようになることは、言いかえれば「自分で自分の面倒をちゃんと見れるようになる」ことです。
そして家事を伝えることは「世代を超えて記憶と知恵をつなぐ」役割があると思うんです。
ばあちゃんが亡くなって10年以上経つので、今では声も思い出せません。だけど、ばあちゃんが教えてくれた料理は私の中に残っていて、教えてもらった卵焼きの焼き方も、なんだかんだと今度は私が娘に教えている。
なんだか「目に見えないタイムカプセル」を受け渡しているみたいですね。
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ちなみに娘の作る卵焼き、実は茶色くも甘くもありません。
塩味だけの、いたってシンプルなもの。
これ実は、韓国風の卵焼きの味付けなんです。
韓国人の義母が作る卵焼きや、韓国の学校給食で出てくる卵焼きの味を覚えて、娘は「茶色くて甘い卵焼きよりもこの卵焼きがいい!」と選択したのでしょう。
私から教わった味という「知恵」だけでなく、いろんな他の「知恵」を体験し吸収して、その中から娘の好きを見つけた。
ただ単純な記憶の受け渡しだけでなく、時には受け取った者によって内容は変化し、伝わっていくのも面白い。
”家事を覚えて、家事を伝える”って、視点を変えて見てみると「世代を超えてつながる壮大なストーリー」が現れてきそうな気がしませんか?
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そして。
あいかわらず私は家事はあまり好きじゃありません。
だけど、私がばあちゃんに教わった料理を次世代の娘に伝えていくことは、何かしらの意味があるかもしれないと思っています。
娘は、私が教えたことや他のことを吸収して、さらに次の世代へ「目に見えないタイムカプセル」として伝えるかもしれない。
いつか私がいなくなった後でも。
そう考えるとなんだかワクワクして、そして嫌いな家事もちょっぴり好きになれそうな気がするのです。
#私も家事が好きになる
(1,885文字)
すのう様、素敵なコンテストありがとうございます!
コンテスト初挑戦です!(緊張)