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「バッタ」
今日のキーワード「バッタ」
「お家騒動」
今夜は三日月。
欠けてはいるけど、立派な月。
ほんのりと発光し、アスファルトを照らしています。
そのせいか、いつもより少しだけ暖かな夜。
そんな夜には、人間が寝静まった頃を見計らって
虫たちの時間が始まります。
そうです。
あの、虫です。
サナダ虫とか、カブトムシとか。
たくさんいますね。
虫たちは人間と同じように
社会の中で暮らしています。
みんなが知らないだけで
すぐ隣にある別世界。
今日はそんな虫たちを
魔法の小窓からのぞいてみましょう。
シャーン
ワーーー
ワーーー
オマエカァー
ワタシジャナイデスー
ワーーー
あれあれ、何やら騒がしげ。
草むらのお城で騒動があったみたいです。
早速、天守閣の窓からのぞいてみましょう。
ん?
お城はどこ…?って顔をしてますね。
ほらっ
目の前の草の塊を、よーく見てみて…
すごいでしょう?
草でできた、二条城。
精巧に作られてますね。
バッタにも築城という概念があるのです。
さぁ、騒ぎが大きくなってきました。
今度こそ、のぞいてみましょう。
(のぞいてみるとそこは城の広間。たくさんのバッタが集まっている)
何やらのっぴきならない雰囲気ですね。
バレないように、静かに見守りましょう。
殿様バッタ「・・・絶対に、この中の誰かなんじゃ」
家臣バッタ「・・・」
足軽バッタ「・・・」
花魁(おいらん)バッタ「・・・」
殿様バッタ「ワシは何回も言っている。この城は、雌バッタ禁制だと」
家臣バッタ「・・・」
足軽バッタ「・・・」
花魁(おいらん)バッタ「・・・」
殿様バッタ「何故、花魁がいるんじゃ」
家臣バッタ「…殿、落ち着いてください」
殿様バッタ「いいや、落ち着かないんじゃ」
足軽バッタ「殿、あまり大声を出すとお体に障ります」
殿様バッタ「黙れ足軽」
花魁バッタ「そうだよぉ、お殿様。体は資本だよぉ」
殿様バッタ「お前のせいじゃ。ここは本来、モノノフが集うべき場所なんじゃ!」
家臣バッタ「しかし、殿」
足軽バッタ「誰も覚えがないと申しています」
殿様バッタ「ではなんじゃ!野良の花魁バッタが迷い込んだというのか!」
花魁バッタ「大事なお客さんを売るようなこと、あたいはしないよ!」
殿様バッタ「口調がムカつくんじゃ!」
家臣バッタ「ラチがあきませんな・・」
殿様バッタ「…半蔵!半蔵はおるか!」
忍の頭領バッタ「…ここに」
殿様バッタ「…昨夜の城の警備中、誰がこの花魁を連れ込んだのか、見ておったか?」
家臣バッタ「と、殿」
足軽バッタ「…」
殿様バッタ「半蔵、誰なんじゃ?」
忍の頭領バッタ「謹んで申し上げます…」
どっくん
どっくん
どっくん
バッタの心臓の音が、聞こえた気がした。
忍の頭領バッタ「連れ込んだのは…」
家臣バッタ「…きょ、巨人だ…」
足軽バッタ「…あぁ!窓の外に!巨人がおります!」
殿様バッタ「巨人じゃ…!」
忍の頭領バッタ「花魁を連れ込んだのは拙者です」
家臣バッタ「お前かい」
足軽バッタ「ちょっ」
花魁バッタ「たくましかったわぁ」
殿様バッタ「急展開じゃ。いや、今はいい、とにかく逃げるんじゃ!」
慌てたバッタたちは草の城を飛び出し、
欠けた月に照らされながら空へ吸い込まれていった。
月とバッタ、そのシルエットは重なり、ちょうど満月のように見えた。
いかがでしたか?
そう。
虫の世界も人間と変わらないんです。
そんな人間模様、いいや、虫模様を垣間見ることができましたね。
ちなみに、
今日登場したバッタは全て実在します。
ぜひ近くの草むらを探してみてください。
きっと新たな出会いがあるでしょう。
Have a nice insect party
センキュー
完