「・・・誰?」(連続コント小説①)
第1話 「・・・誰?」
「西校舎の三階トイレには魔物が住んでいる」
これは僕が通っていた県立ハインモッヒ高校に伝わる不文律だ。
(通称モヒ高)
世の中にはこの手の噂が多く存在する。
しかし、うちのは本物だ。
僕はそう言い切ることができる。
「その証拠は?」
近頃よく耳にする、この言葉。
これを使いこなす、エビデンス至上人間へ。
「司法をなめるな!!」
「刑事が書きそうな似顔絵顔だな!」
「帰れ!」
…話を戻そう。
3つは多かった、うん、多かった。
ヨクナイヨクナイ。
クナイ、忍者。
オケっ。
…寒くなると
どうしてもあの時の事を思い出す。
10年前、僕がまだ、モヒ高心霊研究会に所属していたあの日々。
ぼく
きょんちゃん
ジョッキー原田
いつもこの3人でつるんでは、町中の心霊スポットを駆け回ってた。
...久々に思い出したな、ジョッキー原田のこと。
ふぅ。
その日だってね、なんてことない1日になるはずだった。
でもならなかった。
人生は激流。
どこに流れ着くかなんて、泳いでいる本人たちにもわからない。
うん。
僕は今からあの時のことを一生懸命思い出そうと思う。
脳に大汗をかきながら。
その思い出は、細やかに思い出せば出すほど、自分の首を絞めることになると思う。
古傷を登山ナイフでえぐるようなものだから。
でも、やるよ。
僕、やるよ。
その決意表明と共に
僕は葉巻に火をつけ、机に座り直した。