相席屋での話

友人のダンスイベントが深夜の2:30からだったので、それまで時間を潰す必要があった


00:00過ぎまでなんだかんだ時間を潰せた。


ここから2時間ほど時間がある。


お金はない。

渋谷の夜の街を2時間徘徊するほどの元気もない。

クラブへ行って踊り騒ぐほどの気力もない。


私たちは女性である。


=無料で居座れる。


ありがとうございますということで、相席屋へ。


渋谷の00:00過ぎの相席屋は、大学生か20代後半〜30代前半がほとんどだ。


ちなみに大学生との相席は、本当に面白くない。


話が面白くない。


何歳なの。大学どこなの。なんでここにいるの。どんな人がタイプなの。

当たり障りのないお話をしにきたのではない。


彼らが求めるのはどうせ一夜限りのお遊び相手だ。


興味ないことを分かりきっている話をお互いにする無意味さを分かって話す彼らの心理も理解できない。


その日、その場限りのもっと、ワンダフルなお話をしたいのだ。


かといって、20後半〜30前半の彼らも、大学生相手に上から目線か、逆に下手に出て自分の手の駒にしようとしてるのも鼻につく。


まあ、お金払ってるんだもんね。


当たり前に元(=女)は取ろうと思うよね確かに。


でも私が男性だったら、もっと上手く口説けるのになあーとか思ってしまう。


なんかネタになる人たち(最低な女)がいないなーと思っていたら2時になり、最後の相席になった。


目の前には、白Tセンターパート髭おじ2人。

それ、合わせてきたんか。


全く顔がタイプではない上に、独特すぎる空気感を放っていた。

芸人にいたような、この雰囲気。

いったんこれは、リセットしようと乾杯した瞬間にお手洗いへ離席した。


戻ると、友人と彼らはすでに何か話していたようだ。


「最近の流行りってなんだろ?」と友人が聞いてきた。


きっと彼らが自分らの「おじさんポジ」をわきまえて聞いてきたのだろう。


緑と紫の混ざった吸い込まれそうな視線2つは私を見透かすつもりなのか。

その色が私に移ってきそうで、吹き出しそうになる。


普通に会話してもこの独特の彼らのテンポに飲まれてしまうと思った私は、咄嗟に答えた。


「私ですかね。」


彼らに一瞬ハテナの文字が浮かんだのが見えた。


勝った!と思った


「だからー、はなみ(偽名)自身が時代の最先端ってことです!!」


そう言い放ってハイボールをごくごく飲んでやった。


それを見た彼らは、

「お〜、さすが、はなみさん」


と、その独特な、ローテンポな感じで反応した。


これは、勝てるかもしれないぞと思って、とにかく必死に目の前のご飯を片っ端から食べた。


笑ったらいけない。


「めちゃめちゃ食べるんですね〜」


「え、これ食べてるように見えます?」

「え、食べてるんじゃないんですか?」

「これ、食べてるんじゃなくて、流し込んでるんですよ。」

「、?」

「だから、はなみレベルになると、食べ物は噛んで食べるとかいう次元じゃないんですよ。」

「お〜、はなみさんレベルになるともう噛まないんですか。」

「はい。まだ、『噛む』っていう行為してるんですか?それ、時代遅れですよ。」

しっかり噛んで食べながら私は言った。

「いやー、でもそれ噛んでません?」

「噛んでません。」

「いや、えー、いま、ほら。ほらほら、右奥歯で噛みましたよね?」

「噛んでませんってば。」

「ほらほら、ほら!いま噛みましたよね?」


負けた。

思わず笑いが込み上げてしまう。


顔を2人から背けて笑う。

そして真顔でまた食べ始めようとした。


「はなみさん、今噛みました!」

と真面目な顔で言う彼らに私は耐えられなかった。


時間が迫ってきた。

友人がそろそろ出るよというので最後に


「はなみ、もう帰っちゃうよ!いいの?」

「どうぞどうぞ、帰っていただいて。」


こういうのだ。


こういうのを求めてた。


最後の最後に面白い人間と話せてよかった。


LINE、聞いとけばよかったという後悔を人生で初めてした。


いやしかし、こういうのは一度きりの出会いだからこそいいのである


いやー、でもお笑い芸人にいたんだよな。

ああいう顔で、変なオーラというか、色がついたオーラ纏ってるひと。

どっかで見たことある顔なんだよな。



今度会う時、彼らはテレビの中だったら、テンション上がるなあ〜。

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