新潟ー長岡60キロ
今では想像もつかないが、半世紀前の大手通りとスズラン通りとの交差点は長岡で一番交通量の多いところであり、交通整理の警察官も立っていた。そしてその交差点にあった主要都市との距離標識の一つにはこう表示してあった。
新潟 60㎞。
長岡一の交通スポットにあった、なんとも覚えやすいキロ数。他の県内の都市、例えば上越や三条までが何キロかと言われても答えられないのだが、新潟までの距離はこの標識によって覚え、すぐに言える(他には高崎180㎞というのも覚えている)。
国土交通省によると、標識で表示される都市間の距離は「その標識の設置地点から目標値の中心地点(ほぼ市役所)までの道路に沿った距離」ということになっている。その当時はもしかすると違った定義だったのかもしれないが、これでいくと、当時の標識から市内でバイパスではなかった旧道を使って、古町にあった新潟市役所までちょうど60㎞だったことになる。
バイパスが整備され新潟市役所の位置が変わった今はもちろんこの位置から60㎞ではなくなったのだが、現在でも「新潟60㎞」の標識はある。当然、件の標識ではなく、長岡大橋から長岡東バイパスに向かう途中にある線路下の地下車道「愛宕地下道」の入り口にそれはある。
かつてあった地点にのっとって標識をつけるとしたら国道8号と17号の分岐点・川崎インターに設置すべきなのだが、それだと60㎞にならないので、ということなのか。それにしても何の交通の要所でもないところに「新潟60㎞」があるのを考えると、「長岡ー新潟間は60㎞であるべし」という地理的な強い意志を感じるのは私だけだろうか。
と、ここまで書いてふと、「新潟からは長岡まで60㎞なのだろうか」と考えてみた。「そんなの当たり前ではないか」と言われるかもしれないが、新潟市で「長岡60㎞」の標識は昔も今も見た記憶がない。新潟バイパスは何度も利用しているが「長岡60㎞」の表示はあっただろうか。子どものころ「長岡57㎞」の表示は関屋あたりで見た覚えはあるのだが。
何より新潟市の人たちにとってどこまで「長岡60㎞」なのか。そもそも新潟市の人は花火見物以外長岡にあまり行かないと言われている。あまり行かない場所である上に距離の表示が60㎞でないとしたら、「新潟―長岡60㎞」の認識は新潟市民と長岡市民との間でかなり差があるのかもしれない。もし両市民にそのことで街頭アンケートなんてとってみたらどんな結果になるのだろうか。物書きのはしくれとしていつかやってみたい気がする。