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中心静脈栄養投与での悪い事

 前回、体の深い部分にある中心静脈という血管に点滴をして、栄養を投与する方法(中心静脈栄養)についてお話ししました。中心静脈栄養は、一般的な治療法の一つで、血管をしっかりと確保でき、十分な栄養を届けることができます。また、カテーテルを中心静脈に留置する処置も病室で行えるため、経験を積むと比較的安全に行える処置です。ただし、どんな治療にもリスクは伴います。今回は、中心静脈栄養に潜むリスクについて、少しお話ししましょう。

 まず、カテーテルを留置する際に考えられる合併症についてです。
 中心静脈は動脈と並走しているため、誤って動脈に針やカテーテルを刺してしまうことがあります。もしその場で気づけば、針を抜いて止血することで対処できますが、太い針を使用するため、十分な圧迫止血が行われなければ出血が続く可能性も。
 また、カテーテルが意図しない方向に進んでしまうこともあり、その場合は再度留置し直さなければなりません。
 穿刺する場所によっては、肺を傷つけてしまい、胸郭の陰圧が壊れて、気胸を引き起こすこともあります。
 さらに、留置したカテーテルは外界とつながっているため、感染症のリスクもあります。カテーテルに血栓ができ、それが血流に乗って肺の血管に詰まり、肺塞栓を引き起こすことも稀にありますが、頻度は低いです。

 次に、栄養を投与する際の副作用についてです。
 中心静脈栄養では、非常に濃いブドウ糖液(コーラの2〜5倍の濃さ)を24時間体内に流し続けるため、血糖値が上昇して糖尿病のリスクが高まることがあります。
 また、肝機能に影響が出る可能性も考えられます。

 こうしたリスクを踏まえて、中心静脈栄養でその人の命を延ばすことが本当に幸せにつながるかどうか、しっかり考えることが大切です。
 特に高齢者医療では、家族がその判断をしなければならないことが多いので、あらかじめ本人とゆっくりお茶を飲みながらでも相談し、将来の方向性について軽く話しておくことが重要です。

 次回は、腸を使った栄養投与について考えてみましょう。


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