「慧」くんの本当の名前は?
むかーしむかし、サトシ君という中学生がおったそうな。ある日、彼はコンピュータに詳しい級友のA君にとある相談をしたという。その内容は、自分の名前が IME で正確に表示できないのをどうにかできないだろうか、というものだった。
彼の主張によれば、自分の名前を漢字で書くと「慧」なのだが、これは正確な表記ではないと言う。いわく、「慧」の真ん中の「ヨ」は突き抜けるのだ、つまり「彗」の下に「心」を書いた漢字である、と主張したそうな。
A君も試してみたが、たしかにそのような漢字は IME では表示できなかった。そこで、A君はインターネットで調べることにしたという。するとこのような記事を見つけた。
突き抜けない「慧」は新字であり、突き抜ける「慧」は旧字だという。さらに、なんとこの旧字の方は名前に使えないとある。さらに読み進めてみる。
サトシ君の誕生日は昭和56年10月1日よりも後であったので、すでに人名用漢字は改定されており、旧字の「慧」は人名に使えないはずである。ということは、サトシ君は自分の名前を勘違いしているのだろうか?
しかし、先の記事にはこのような記述がある。
つまり、出生届を受け取った役所が、名前に使えない漢字であることを見落として受理してしまったケースが実際に存在するとのことであった。
つまり、サトシ君の名前については、以下のどちらかの状態であると考えられる。
役所では新字で受け付けているが、彼、ないし彼の両親は旧字であると信じている
役所が誤って旧字で受理してしまった
A君は調べてわかったことをサトシ君に伝えようと考えていたが、それ以降、サトシ君と話す機会に恵まれず、ついぞ伝えることが叶わぬまま中学校を卒業してしまった。
サトシ君の本当の名前がどちらであったのか、もはや知る者は誰もいないと言う…。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?