うどんで分かるメルヒェン史(過去記事)

これは、ヨーロッパのメルヒェン史で特に有名である3作品を、メルヒェン大好きな一般人が全力で解説する記事です。

時代背景など細かい所に間違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

 ※こちらは数年前の過去記事です、誤字脱字訂正以外のツッコミはお控えください

メルヒェンとは?

ドイツ語で童話・民話等様々な意味を持つ言葉です。日本語のゆるふわ〜なイメージとは若干ニュアンスが異なります。

 

元々は口承文学だった

昔々、人々の識字率が低く娯楽も少なかったであろう時代のこと、子供たちは大人から面白おかしいおとぎ話を聞いて育ちました。 そしてその子供が成長して自分の子供に伝える・・・といった具合で、メルヒェンは民衆に脈々と受け継がれていったのです。
うどんで例えると「各家庭に代々伝わるうどんのレシピを子に口伝えで伝授していく」感じですね。

口承文学を文章化する人が現れた!

 ただ所詮は「口伝えの話」なので、誰も語らなくなってしまったらそれまで、もうその話が日の目を見ることは無くなってしまいます。
そんな「口伝えの話」には、玉石混交の中で面白い話がたくさん有ります。
ある時、その話を書籍として形に残したいと考えた人が現れました。
うどんで例えると、レシピ本を出すようなものです。

 

 これからそんな人達の作品の中で、日本で全訳の童話集が読める代表的な三作品・・・ペンタメローネ(五日物語)、ペロー童話集、グリム童話集、を取り上げて説明していきたいと思います。

 

①ジャンバッティスタ・バジーレ『ペンタメローネ(五日物語)』

 

この作品は1634~36年ごろにイタリアで出版されました。

いくつかの口承文学をまとめ、本として出版したのはこれが最初かと思われます。

ちなみにこの話は枠物語と言って、メインストーリーの中で小さな話を語る体裁を取っています。これはデカメロン(十日物語)の影響を色濃く受けた為ですね。

そうですね・・・この話は、著者のバジーレが詩人だったことも有って、恋愛の描写にかけてはなかなか饒舌に語られています。また、当時はタブーという概念が薄かったためかエロティックな描写や残酷な描写もあっけらかんと書かれています。例えば、「日と月とターリア」(眠り姫の類話)であっさりと姫が犯されたり、メインストーリーで妊婦がおなかの子を潰すと平気で言ったり・・・初見で読んだ時は思わず絶句してしまいました。

 

さて、うどんで表すと「キノコ入り肉汁うどん」ってところでしょうかね??

当時の民衆、特に男性の性意識がよく分かると思うので・・・

 

 

②シャルル・ペロー『ペロー童話集』

 

この作品は1697年、太陽王ことルイ14世が治世していた頃にフランスで出版されました。

17世紀当時のフランスでは、サロンといって貴族による知的な会話の集まりがあり、そこで民衆向けの昔話をアレンジして、貴族が読むに堪えうるような話にすることが流行っていました。その話の殆どが大人向けで難しいものであったのに対し、ペロー童話はむしろ子供向け(と言っても貴族の子女がメインです)であり簡単に読めるものであったので、聞く人の関心を大いに引き付けました。

最近ちょうど赤ずきんのフランス語版を読む機会が有ったので、目を通してみたのですが、フランス語を習って日が浅い私でも、だいたい辞書なしで理解できるレベルの単語で書かれていました。

 

そうですね・・・この凄さをうどんで表すとしたら、カレーうどんやソーキうどんの様な変化球うどんが流行っている中で、「かき揚げうどん」のようにシンプルかつ素うどんよりは上品なうどんが出てきたようなものです。

つまり童話界のココ・シャネルと言っても良いのでは無いでしょうか。

 

 

③グリム兄弟(ヤーコプ・グリム、ヴィルヘルム・グリム)『グリム童話集』

この作品は第1版から第7版まで出版されており、第1版は1812年、第7版は1857年に出版されました。

グリム兄弟は大学教授だったため、初版の童話集の時は学問的資料といった意味合いをこめて昔話を編纂していました。つまり、口伝えとして広まっていた昔話を出来るだけそのままテキスト化しようとしていた訳です。

そのため、初版を読んでみると何となく味気なく感じるかと思います。

 

うどんで例えると、人にレシピを語ってもらいそれを口述筆記したものを元に、体裁だけ整えてレシピ集として出版するようなものでしょうか。

 

 さて、先ほどでも少しお話しましたが、昔話とは元々庶民の退屈しのぎのためにあるものです。そのため、性的な表現や残酷な表現が直接的ないし間接的にふんだんと盛り込まれているのです。

・・・ここでグリム童話集の原題を確認しましょう。『Kinder- und Hausmärchen』(子ども達と家庭の童話)です。即ち親子で読むことを想定して作られたわけですね。

そのため、元の雰囲気を残そうと苦心した初版はメインターゲットである親御さんから「こんなの子供に見せられない!」と批判されました。

そのため第2版以降は、性的な表現や残酷な表現が大幅に削除されたり、曖昧な表現に変えられていったのです。

また、版を重ねるごとに読み物に足るものとしたいと言う思いが主にヴィルヘルムに芽生えたのか、段々文学的なテキストになっていくと言う特徴もあります。つまり、辻褄を合わせるために話に説明を加えていった訳ですね。

蛇足ですが、第2版以降からグリム童話集に聖者伝というお話が追加されたそうです。きっと、家庭向けの要素を強くしたかったのでしょうね。

 

うーん、グリム童話集はうどんに例えるのがちょっと難しいですねぇ・・・

強いて言うなら、かまぼことおネギが入ったシンプルなうどん(初版)から、かまぼこを抜いておネギマシマシにしたうどん(第七版)かなぁ?

 

 

まとめ

ここで紹介した3つの話はいずれも、元ネタは民衆が脈々と受け継いでいった昔話ですが、時代背景と著者の身分の影響で全然違うテイストに仕上がっているかと思います。考えてみれば当たり前の話ですよね。同じ料理でも作る人が違えば全然違う味になるって言いますし、日ごろ実感しているかと思います。

 

この記事を読んで、メルヒェンの世界に1ミリでも興味を持って頂けたらとても嬉しいです。3作品とも日本語全訳が出ているので、書店や図書館、そして通販で気軽に手に入れることが出来るはずですよ!

(但しペンタメローネだけは難易度が高い模様)

 

 今回はかなり長くなってしまって申し訳ないです(-_-;) 

ここまで長文かつ乱文に目を通して頂き有り難うございました!!

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三島
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