
黄色で反抗
お腹が痛い。
2日前の夜から、じくじくと痛む下腹部に自分の性を恨む。こんな日は、何もしなくても思考がマイナスに陥りがちである。
だから、こういう日は原色の服を着るに限る。
最悪な日ほど、アホみたいに明るい服を。気分が乗らない用事には、お気に入りの服を。喧嘩をする日は真っ赤な口紅を。
……最後はちとニュアンスが違う気がするが、私を選ぶモットーだ。
疲れているからと地味な色を選ぶと、さらに落ち込んでしまう。楽しみな日は、嫌でもわくわくした服を選ぶ。
つまらない日こそ、服は気合を入れて選ばなければならないと思うのである。
今朝は、それこそ気分が最悪だった。
昨夜から続く腹痛が朝から私への攻撃を開始した。
何も考えたくないし考えられない。だからといって、暗い色の服を選ぶのは私のモットーに反する。
動きたくない頭で必死に変ではないコーディネートを考える。昨日も履いたダメージデニムに去年買った明るすぎるイエローが印象的なTシャツを選ぶ。だぼっとしたシルエットがお気に入り。すとんとした体型のせいで少年ぽさが出てくるのもいい。
うねった前髪を誤魔化すために、細く束ねてパンプアップにする。
かざりっけはないけれど、ボーイッシュにまとまったと朝はご満悦だった。まぁ、具合は反比例だが。
しかし、私は忘れていた……。今日は、他社から人を招いての勉強会があったのである。
朝礼でその話が出て、真っ先に思った。
“今日の服装やべぇやつ……。”
どう考えても、ソトの人と会う服装ではない。基本的に服装に規定はない職場であるが、さすがにボロボロのダメージジーンズで他社の人と会うのはアウトだろう。それに、蛍光イエローのTシャツなんて学生かよって感じだ。そもそも大人が選ぶ服としておかしいのだ。
今日の作業の様子を見ながら参加してね、なんて……ほぼ参加は確定しているくせに!
八つ当たり甚だしいが、大人として呆れている私と、子どものノリが抜けきらない私がぐるぐると喧嘩している。
作業中は、具合が悪いせいで生じたやり場のないイライラを貧乏ゆすりに注ぎ込むことで抑えている。見栄えは悪いが、貧乏ゆすりは健康効果が抜群らしい。
私の場合、そんな目的はなく痛みをあやふやにしたいだけであるが。
他にも、下腹部を押し込む、腰を伸ばすなどでやり過ごすことにしている。
しかし、勉強会中にそんな暴力的な行動をとるわけにはいかない。見栄えが悪すぎる。
悪魔につかれたか!? と思われても仕方ない(『悪魔のいけにえ』を見たばかり。殺し方や演出のことは詳しくないが、レザーフェイスの狂気というかその辺はぞっとした。あと、冒頭のナレーションのおかげでリアリティが増して怖くなる)。
会議室は寒いだろうし、作業は山積みだし……不参加を表明したいところだが、そういうわけにはいかぬ。
大人の世界は、どうも自由が利かない。そんなものである。
結局、私は某電気ネズミにも負けないイエローのTシャツと、足の太さに負けてダメージ具合が加速しているデニムで勉強会に参加した。
勉強会中、外部のスタッフの方と目が合うたびに気まずさは加速。ストレスに伴い痛みは倍増。精神的にも身体的にも、1時間の勉強会は私にでかすぎるダメージを与えていった。
もう少し、大人になるべきなのかもしれない。
原色大好きなのは、たぶん止まらない。落ち着きを見せるのも、もう少し先な気がする。
だって、似合うし。似合うのに着ないなんて、勿体ないじゃあないか。
むしろ、私はキャメルとかが全く似合わない。くっきり!はっきり!が着ていてしっくりくる。これは、もう少し歳を重ねると変わってくる可能性もある。
しかし、反省はするわけで。
後悔は少なく大きく、反省は多く小さくな私だ。
やっぱりTシャツはあかんかったかな、と思った。ちょっとこじゃれた毒々しいオレンジのブラウスっぽいものだってあったわけで。
今後はそういうジャンルを増やしていくべきなのかもしれないと思った。
こんなところで大人の階段を上るとは思わなかったが、服の与える第一印象は大きい。それを考えれば、致し方ないところなのだろう。
この夏はポロシャツなんかも欲しかったし、ちょうどいいや。少し探してみることにしよう。
話は変わりますが、ポロシャツの可愛さってすさまじくないですか?
薄いピンクでも可愛いし、はっきりとしたグリーンも最高。ふわっとしたスカート(この場合フレアよりもサーキュラーを推したい。シンプルなシルエットと女らしさが相まってテンションの爆上げ必至である)を組み合わせて“お嬢さん”感を醸し出してもいいし、それこそジーンズやチノパンでボーイッシュを気取ってもいい。
袖や裾にラインやらのワンポイントが入っていたらもう最高だ。そのブランドごと愛しちゃいそう。
大げさかもしれないけれど、カチッともゆるっとも着れる洋服への愛しみというものは溢れ出て留まることを知らない。たぎるなぁ。
まぁ、可愛いからこそ難しいところもあるのですが。
自分のスタイルや演出したい雰囲気に合わせて買わなくちゃいけなかったりね。
可愛いからという理由だけでは買えないのが悔しいところだが、そこさえ超えれば最高のポロシャツライフを手にすることが出来るのだ。一つひとつ吟味していくしかない。というか、その道一択だ。
残る問題はダメージデニムだ。
休みの日に履けといわれそうだが、休みのたびにダメージジーンズなど履きたくない。気分を大事にしたい。こういう服は、気分とノリを大切にしないと楽しめない。
こればっかりは、きちんとその日の予定を照らし合わせて選ぶしかないだろう。
例えば、休みでもデパートに行く日にダメージジーンズを履いたらお店で白い目で見られてしまう。今日だって、穴が開いてなかったらギリギリセーフだった気がしないでもない。
……あくまで、私の感覚では、であるが。
今後買う予定の、柄物のショートパンツやらも含めてタイミングをはかって身に着けて出勤も遊びにも出てやると、今回の出来事で決意を新たにした。
反省はする。反省をしたならば、学びを得なければならない。
原色の服もダメージデニムでの出勤は今後もやめるつもりはない。しかし、タイミングだけは考えていこうと思う。
うん、私、少しだけ大人になれたな。
早速、今週にでも素敵な原色ポロシャツや夏を彩るにぴったりの柄物ショートパンツを探しに出かけようと思う。さて、服を選ばなくては。
**********
去年までダメージジーンズって言ってたくせに、今年になったらダメージ“デニム”になっていたことに憤りを感じる。
ファッション用語が気づけば変わるので、もうついていけないです。……こんなこと前にもいっていた。→☆
公式サイト「花筐」