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古作こぎん刺しのバッグブランド「kosaku」について⑨〜価格設定のこと

「kosaku」は古作こぎん刺しをバッグに仕立てるセミオーダースタイルのブランドです。
これまで企画やデザインのことなどを書いてきましたが、今回の話題は価格設定について。自分が作ったものをいくらで買ってもらうか、ハンドメイド品を販売する方の多くが迷ったことがあるのではないでしょうか。

それまでは完全オーダーメイドでやっていたので、都度、価格を決める工程があり、ある程度、自分なりのルールはありました。
基本になっているのは、【新百合ケ丘産経学園】こぎん刺し教室kogin.net主催でデザイナーの山端家昌先生から教わった法則。
販売価格が決められないときは「外部へ支払うコスト(材料費、パッケージ代、送料など納品までにかかる実費)」の5倍に、というもの。
販売価格を、
①外部へ支払うコスト
②デザイン料
③人件費
④利益
⑤次への投資代
で5等分するという考え方です。あくまでも、迷ったときの目安として教わった方式ですが。
これを基本に、同様の商品が市場でいくらで売られているか、”手作り”や”一点もの”といった部分にどのような価値をつけるか、などを考慮に入れていきます。

kosakuでは、基本価格をシンプルに二段階に設定しようと決めました。

大きいサイズの「基本のショルダートート」と「クラッチバッグ」は2万9000円、小さいサイズの「小さい手さげ」と「ポーチ」は1万8000円。
オーダー主様からの依頼で、価格が高い材料や手に入りにくい材料、刺すのに手間がかかる材料を使うとき、または基本形にない機能を追加したときなどは、材料費分や手間賃をプラスします。

布のバッグに出す金額としてはこれくらいが適正、というか上限価格ではないか、と決めました。
材料費のおおよそ5倍の金額なので、先の法則からも外れていません。

ただ、人件費で見ると、課題は残ります。
kosakuはこぎんをみっちり全面に刺すので、制作時間がまあまあかかります。私はそれほど刺すのが早い方ではなく、小さい手さげで10〜15時間、ショルダートートはその倍以上はかかってます。初めて刺す図案だと図案の仕組みが頭に入るまでもたもたしたり、集中力がない日は何段も刺してから間違いに気づいて1時間刺したものを全部ほどかなければならない、なんてこともあります。
結果、最新の最低賃金全国平均にも満たないことになります。これは商売としては本当は良くないです。
「もっと高くしてもいいんじゃない?」と言ってくださる方もあります。でも、なんとか別の道を見つけたい。まずは自分のスピードアップ、スキルアップからですね。

「高い!」と言う方ももちろんいらっしゃいます。
私も、自分が布のバッグに数万円払うことを考えると、ひゅっと身が引き締まるというか、じゃっかんの緊張が走る値段です。
高いと感じるか安いと感じるか、人それぞれの感覚や考え方があるので、どちらが正しいというのはないと思いますが。

一方で、数々の先生方や作家さんから「安売りはしてはダメ」と言われたことも度々思い出します。
価格を適正以上に下げることは、自分の作品の価値を下げるだけでなく、こぎん刺しの価値を下げることにもなってしまう。
自分のことだけではないんだよなあ。価格設定とはつくづく難しいものです。
kosakuのお客様は、価格にも納得してくださった方なのだと思います。心から感謝です。


Instagramでもkosakuを紹介しています
kosakuの商品概要やオーダーについてはHPをご覧ください

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