あの古作図案を刺しちゃった! 〜2 刺し順
古作こぎん界で一番有名なのかもしれない、「ゆめみるこぎん館」所蔵の古作こぎん着物「西こぎん見頃J」。この図案のファンは少なくないと思いますが、私もその一人。「いつか刺したい!」との長年の思いをこのたび、やっと実現させました。
自分で立ち上げたバッグブランド「kosaku」では古作着物の図案を使っていて、毎回、元の刺し手のことをあれこれ考えるものですが、この図案は他と別格。いつも以上にあんなことこんなことを考えました。
それを記録しておこうというのが今回の連載です。誰のためにとか何に向けてという目的がない、自分語りです。
それでも読もうと思ってくださった方、ありがとうございます。
こぎんを知らない人にはちんぷんかんぷんなことを説明抜きに書くと思いますが、どうぞご容赦の上お付き合いくださいませ。
第2回目は、トリミングと刺し順について。
実物のどこを切り取るか
さあ、まずはどこをトリミングするかです。
元の着物よりkosakuトートはサイズが小さいので、全部をそのまま完コピはできません。なので、いかに元図案を崩さず、いいところを抽出して、トートに自然に落とし込むか、です。
元の着物とkosakuトートサイズの布の目数をざっと数えて、幅は左か右半分はほぼ入ることがわかりました。
問題は縦です。
単純に面積だけで言うと刺せるのは前出の画像の通りですが、これだとこの着物の部分抽出にしかなりません。
もっと、全体の流れとこの着物の魅力をできる限り余すところなく表現したい。それには、図案を起こすときに苦しめられた複雑怪奇部分、弘前こぎん研究所の本の表紙になった部分は優先的に残したい。
図案をよく見ると、模様が切り替わるところが何箇所かあり、ざっくりと6部門にわけられることがわかりました。
これを基に刺すエリアはだいたいこの感じかなあと目安を立てました。
どこから刺すか、それが問題
トリミングの目安がたったら、今度はどこから刺すか、です。
kosakuのトートバッグは口側に刺さない部分を設けていて、数㎝下から刺し部分が始まります。
いきなりエリアAなどから始まってもきっとそれなりにカッコはつくけど、この着物の竹の節と地刺し部分はある程度入れたい。素直にとてもかわいいし、全体が締まるし、何より、作者が意図があって入れているはずだから。
ただ、完コピではこれだけでかなりの高さを使ってしまうので、ダイジェスト的に抽出する形にしました。
私自身が一番好きなA、Bエリアは可能な限り入れたいから、着物の背中面から優先的に刺したい。とはいえ、竹の節から続けて刺すには、図案が起こしにくかった部分に最初に取り組むことになり、ハードルが高い。
一方で、エリアBとエリアCは分かりやすく目数が数えやすい。
そこで、竹の節を刺した後は、エリアBとエリアCの境目をスタート位置に決めました。
本来は目を数えて位置決めするのが正解だと思いますが、元の着物と布のサイズ比率から計算をして、布上でだいたい⚪︎㎝下、と目処をつけました。
これが決まったら、後はスムーズです。
エリアBとエリアCの境目からエリアB→エリアAと刺し進めました。竹の節との境目は1〜2段ズレが生じる可能性がありますが、そこは気にないことにします。
竹の節からエリアA〜Bが埋まったら、今度はエリアC〜Dへと進めます。
エリアDは元のまま刺すとEまで入らなくなるので、1繰り返し分省略します。
ある程度刺したら、バッグの口側の地刺しを刺し、上限を決めます。
後は残りを埋めていくだけ。エリアFは今回入りませんが、別の作品で使おうと割り切りました。
刺し順さえも一筋縄ではいかないとは、ホントにもう!と思いつつ、やるなおぬしとニヤニヤするような気持ちもあり。
次回以降は、「ここがすごい!」「ここが謎」といった細かい図案のことを書こうと思います。