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愉快な歯科医と私

あれは2017年の事。
私はその時自転車に乗って最寄り駅に向かっていました。
信号機のない一般道を走っていると、おじいちゃんが運転する車にうっかり轢かれました。


長くなるので割愛しますが、私は筋肉ゴリラで受け身ができる女だったので、自転車の右側から一時停止無視で突っ込んできたおじいちゃんの車に対して、乗っていた自転車を犠牲にして生還しました。

車に轢かれたにしてはほぼかすり傷でしたが、とは言っても交通事故、何なら受け身取ったつもりで後頭部をアスファルトにぶつけたので、狼狽えるおじいちゃんが呼んでくれた救急車のお世話になりました。

運び込まれた病院で、全身検査されました。
とりあえず「軽い鞭打ちとたんこぶ」と言われたのですが、「頭部の怪我は何かあったら即連絡を」とさんざん脅されて帰りました。

しかし軽い鞭打ちとたんこぶだったのですが、何か歯に違和感もあったので、治療費出してくれると言っている私を轢いたおじいちゃんの保険屋さんに相談したら「かかりつけか通いやすい歯医者に行って診断書もらって来て下さい」と指示を受け、私はとりあえず近所にあった初見の歯医者に相談に行きました。
これが私と愉快な歯科医の先生との出会いでした。


愉快な歯科医

フランクな歯科医

とりあえず予約しようと、通りに面した歯医者に行きました。
すると受付には眼鏡のやや神経質そうな歯科医の先生がいました。

私「あのーすみません。カクカクシカジカで、交通事故後の検診で予約したいのですが…」
愉快な歯科医「検診?なら今暇だから今からでも良いよ?」
私「いや、あの、今日事故にあってすぐなんで(流石に疲れて帰りたいから)、後日で…」
愉快な歯科医「そう?なら明日か四日後か五日後の午後から空いてるよ?」
私「…なら四日後でお願いします」
愉快な歯科医「じゃあ名前と電話番号教えて?予約しといたよ。四日後ね?」
私「ありがとうございます(めちゃくちゃフランクで話が早いな?)

中々に愉快な先生にぶち当たったな?となりながらフラフラと帰宅しました。
因みに私事ですが、私は虫歯が出来にくい体質なので、クリーニングと親不知以外ではあまり歯医者に縁がなく、本当に何年間かぶりの歯科検診になりました。



愉快な歯科医の治療

私「こんにちは、宜しくお願いします」
愉快な歯科医「お?きたね?こっちきて?レントゲン撮るよ?荷物ここね?」
私「(キョロキョロ見回す)先生お一人です?助手の方とかは?」
愉快な歯科医「僕一人だよ?気楽な身分だね」
「先生面白いですね?」
愉快な歯科医「よく言われる。ほらこっち来てレントゲン撮るよ?」

レントゲンを撮る。

愉快な歯科医「んーデータ取ったけど経年劣化以外では綺麗なもんだよ。でもまあ事故後だし筋痛めたのが歯に響いんじゃない?そこは別で通ってる整形外科とかに相談してね?後は奥歯に小さい虫歯があるのと、歯石があるから、これ治療する?」
私「そうですね。歯科検診久しぶりなんでお願いします」
愉快な歯科医「はい。治療台のって、口ゆすいでー削るよー…(間)…はいおわりーどっか痛いところある?」
私「早くないです?後痛くなかったですよ?」
愉快な歯科医「んー痛くないのが一番問題。どうしたいかプランが組みにくいよ」
私「いやでも痛くないんですよ?先生お上手ですね?」
愉快な歯科医「褒めても何もでないよー?とりあえず虫歯は削っといたから、後は一応健康の為に歯石のクリーニングは必要だから次予約してくれたらするけど、他はどこ迄治療したい?」
私「とりあえず歯石クリーニングお願いできます?次いつ空いていますか?」
愉快な歯科医「明後日でもいい?」
私「いいですよ?」
愉快な歯科医「じゃあ明後日午後ね?予約しとくよ?」
「先生やっぱり面白いですね?」
愉快な歯科医「よく言われる」

そんな愉快な歯科医との出会いでした。
家からも近いし、腕もいいし、何より竹を割り過ぎた愉快な正確なのでとてもウケたのを覚えています。
それからその時のクリーニングはつつがなく終わり、その後年一くらいで愉快な歯科医に通うようになったのですが、毎回何かしら起こる面白いエピソードを上げていきます。



愉快な電話対応

(予約の電話)
愉快な歯科医「はい、〇✕歯科」
私「あ、私聖龍。と申しますが定期検診の予y…」
愉快な歯科医「いつ?」
私「っ…今日の午後!」
愉快な歯科医「じゃ14時」
私「わかりました!」
愉快な歯科医「じゃ後で(ガチャッ」


(予約キャンセルの電話)
愉快な歯科医「はい、〇✕歯科」
私の「あっ本日予約しております聖龍でs」
愉快な歯科医「無理か?」
私「っ…無理だ」
愉快な歯科医「いついける?」
私「日曜」
愉快な歯科医「15時、いけるか?」
私「いける」
愉快な歯科医「無理するなよ」
俺「ありがとう」
愉快な歯科医「じゃあ(ガチャッ」


嘘偽りなく本当に書いていますが、話が早すぎねぇか?(褒めている)



待たせるのやだ。

愉快な歯科医「一番近いと明日だけど、この日待つけどいい?いや待って、俺が待つの嫌いだから待たせるのやだな?明後日でもいい?」
私「どういう事です?」
愉快な歯科医「この日待つよ?遠方のおじさんが予約してるから、その人遅刻多くて毎回時間押すんだよ」
私「いや、その日時間ありますし、別にいいですよ?」
愉快な歯科医「いや、俺が待つの嫌いだから待たせるのやなんだよ。明後日でもいい?」
私「先生のいい方でいいですよ?」
愉快な歯科医「ありがとう。じゃあ明後日で」

お客様ファーストに見せかけて、自分の気持ちを隠さない愉快な歯科医。
面白い。



偉い人か否か。

私「遅くなりましたーっ(予約時間ギリギリに到着)」
愉快な歯科医「そんな急ぐ治療でもないよー」
私「いや予約だからね?」
愉快な歯科医「日曜なんだからゆっくりしようよ。夜迄暇だし、黒い所(虫歯)削るだけだし」
私「商売気だしましょーよ」
愉快な歯科医「うちは特殊治療メインだなんよ?」
私「特殊治療?」
愉快な歯科医「あなたは普通の治療できてるけど、僕んとこは他に行けない特殊な人しか来ないの
私「差し障りなければ?(続きを話してもろて)
愉快な歯科医「局所麻酔アレルギーとか?おえってなるのが絶対無理な人とか?小児で大変なのとか?面倒なの」
「先生、実は偉い?」
愉快な歯科医「偉くないよ!理事とかからの紹介で大変な患者さんがうちにほりこまれるんだよ。でも断っても角立つし、ほっておくのも患者さんが可哀想だしね」
私「はあ、大変ですねぇ」
愉快な歯科医「今度また理事変えでさ、やっと終わるーって人に、上昇志向高い学閥の人とか?又色々仕事以外のがくるの!仕事させろよってなる」
「はあ…(歯科医師も大変なんですねぇ)」
愉快な歯科医「ちょっとごめんね?わかりやすくするよ?」

(因みにこんなに長い雑談をしていますが、私は歯科治療中で診察台に乗っています)

「?(口の中の器具を動かされて喋れない)」
愉快な歯科医「例えばこれね、こうするのと(わざとらしく器具を動かす)」
「…(ぉぇ?!)」
愉快な歯科医「次にこうするのね?(ゆっくり動かす)」
「…(無痛)」
愉快な歯科医「医者としては今のどっちをしても手間変わんないのに、学校だと最初のおえ!ってなるやり方を習うからみんなそれでやるの。最初のやつやられると嫌でしょ?(器具を口から抜く)
「ですね???(実感強)」
愉快な歯科医「そういう手間を惜しまないから、うち駆け込み寺なの。仕事増えて困る」
「先生偉いのか、偉くないのかわかりにくいですね?」
愉快な歯科医「偉くないよ?」

そうは言っても腕はいいです。
口はこの通りなので、性格が合えば最高の歯科医の先生かと思ってます。



明朗すぎる会計

愉快な歯科医「はい、今日1050円」
「1050円?安っ(声がでかい大阪人)」
愉快な歯科医「だって悪いとこ削って詰めただけだよ?麻酔も使ってないし適正価格
私「へー」
愉快な歯科医「ま、高くしようと思えばできるけど嫌じゃん?」
私「先生優しー!」
愉快な歯科医「と言っておけばリピーター増えるよね?」
私「そうやって最後に落ちをつけるー」

コントかよ?(褒めている)



愉快な歯科医、嫌がらせを受ける。

愉快な歯科医「ねぇ、どっか汚いとこある?」
私「え?奥歯とか?(私の話です?)
愉快な歯科医「違う違う診察室」
私「えっと、散らかっているとかです?」
愉快な歯科医「いや、ホコリとか」
私「はあ…(あたりを見回して)…あります?」
愉快な歯科医「いやね、ホコリだらけの歯医者があります!って保健所に通報あったらしいのよ」
「あー…(嫌がらせですか…)」
愉快な歯科医「まあ嫌がらせだろうし、こっちとしてはどいつが通報したかなんて丸わかりだから気にしないけどさ?保健所も形式上来るわけよ?結果調べて貰っても何もないけど、まあその手続きとか対応が面倒な訳よ
私「お疲れ様です?」
愉快な歯科医「ほんとだよ」
私「でホコリと?(言う話をされたんですね?)」
愉快な歯科医「まあうちは診察室も土足だし、小児歯科もしてるからお子さんの靴についた土とか何やあるけど、機器はちゃんと消毒してるしね?それにほら、うち(この歯科医院)って区に機材の貸し出しもしてるから、わざわざ来ないで保健所もそこで機材調べたらって思う訳よ?
私「まあお役所仕事ですからね?」
愉快な歯科医「いや保健所とかは付き合いあるから解るけどね?でも君ら(保健所)に機材貸し出してるうち(この歯科医院)が汚いって言われてるなら、君らも事前にしっかり調べてどの程度か知ってるじゃん?って思う訳よ?」
私「先生、ストレスたまってますなあ…」
歯医者「だってうちどんなに嫌がらせされても仕事減らないもん。一見さんじゃなくて、うちでしか対応できないお客さんで毎日深夜迄予約みっちりだよ?仕事減らしたいくらいなのに!
私「先生、腕無駄にいいっすもんね(前述参照)」
愉快な歯科医「歯医者の腕悪かったら駄目じゃん!」
私「それもそうですなあ」

毎回通うたびに治療は一瞬で、残りは愚痴が弾む愉快な歯科医でした。



「舌小帯短縮症」の治療

愉快な歯科医に通っていて、人生でこんなに足繁く歯医者に通う事ねぇなってくらい歯医者に通うようになったのですが、毎回愉快な愚痴を聞く程に会話が弾むので、折角だからと生まれてこの方気になっていたけど人に相談した事がない「舌が出しづらい(動かしづらい)」と言う相談をしました。

すると「舌小帯短縮症」と診断されました。

おお!産まれてこの方、何かある度に「舌足らず」と親兄から揶揄されてきた事が病気だったと診断されて嬉しくなりました。
「舌小帯短縮症」を端的に言うと「生まれつき舌が短い」という病気です。
それを治すには舌の付け根を切ればいいと、長年苦々しく思っていた舌足らずとおさらばできると晴れやかになりました。
持つべきものは話が早く愉快な歯科医です。

そんな訳で愉快な歯医者で治療に向かいました。

愉快な歯科医「まあ本人がどう思うかが一番だけど、「舌小帯短縮症」って言っても、あなたはそんなめちゃくちゃ舌が出てない訳じゃないけど嫌なんでしょ?じゃあ麻酔するね?…ゆすいで」
私「(痛くない)」
愉快な歯科医「じゃあレーザーで切るよ?…ゆすいで」
私「(痛くない)」
愉快な歯科医「終わったよ?一応薄い皮だけ切ったけど舌出るでしょ?(手鏡を私に渡す)」
「ほんまや!めっちゃ舌出てますやん!👅」
愉快な歯科医「でもここのとこ(舌の付け根)だけしか切ってないから、本チャンの口内の肉は切ってないでしょ?これでまあ様子みて?
私「はい!」
愉快な歯科医「今麻酔効いてるからいいけど、痛くても動かさないと癒着するからね?まあ焼いて焦げてるから、そうそう癒着とかないけどね?」
「私焦げてますん?」
愉快な歯科医「だってレーザーで焼いてるもん。焦げてる焦げてる。まあ後は経過観察と訓練だし頑張ってね?」
私「はい」
歯医者「じゃあ痛み止めにロキソニン多めに出しとくから余ったら使って?でしめて2,700円ね
「安っ!」
愉快な歯科医「(治療時間)5分でそんな取らないよ?」
私「前も削って千円言うてましたけど、ここ来る前に「舌小帯短縮症」の相場調べたら確か五千円くらいでしたよ?」
愉快な歯科医「そんなもん数分切って削って何千円てボロい事したってねぇ?みんなサクッと終わらせてサヨナラがいいじゃん。あ、痛み止めは麻酔効いてる内に飲んでね?じゃ又来週」


愉快な歯科医がやべぇのなんのと言う話です。


なお、口の中が「焦げてる」と言われたのですが、確かに麻酔がとけてしばらくすると、口の中から鶏皮の焦げた味がしました。
私の肉焦げてる!
自分の肉なのに焦げた肉の味がする!
焦げてるって本当にいい得て妙!となりました。



という、私と愉快な歯科医との話でした。
コロナ禍でここ一年定期検診通ってないなあと、愉快な歯科医から定期検診のお知らせのハガキが届いたのを久々な見て、懐かしくなってこの話を書きました。
愉快な歯科医の話でした。

創作より奇妙すぎる実体験の話でした。
そしてやっぱり愉快な話が尽きないので続きました。
続いた「続、愉快な歯科医と私」をご覧ください。


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