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樹木医の推し本。テッパン植物形態用語事典編。

筆者経歴
 緑化コンサル 兼 樹木医。園芸・造園系の大学で学び、今は行政やインフラ企業の緑化を支援をする。/ 大学時代に専門的な植物図鑑の記述にうんざりしたが、とある本を見るうちに書かれていることがイメージが出来るようになった。その本を紹介するためにこの記事を書くことに。


この記事が有益な方

・専門性の高い植物図鑑の記述内容を読解したい方
・植物の形態に詳しくなりたい方
・大学で植物分類学や形態学の授業をとってしまった方😅

この記事の目的

 『葉は互生し,有柄。葉身は楕円形,鈍頭,基部は円形またはわずかに心形,中部以上は鋸歯 緑,長さ3.5-5cm, 質厚く,ややかたく,表面光沢があり,初め両面中肋に沿って星状毛があり,短毛を散生するが,後に毛は落ちる。葉柄は長さ5mm内外,星状毛を密生する。托葉は長楕円形,長さ1cm内外,褐膜質,すぐ落ちる。』

北村四郎, 村田源 共著. 原色日本植物図鑑 木本編 2,p.269, 保育社, 1979.10, (保育社の原色図鑑 ; 50)

 いきなりびっくりしましたか?上記はウバメガシという樹木の葉の形態についての図鑑の記述です。『互生って何? 楕円形って葉っぱなんかだいたい楕円やん。短毛とか星状毛って、毛にこだわりすぎ!違いなんか分からんがな。』こんな風に思いませんでしたか? 分かります。自分も初めて本格的な図鑑を見た時は毛への執着に驚いたものです。でも、専門性の高い植物図鑑は、細かな違いを形容する言葉であふれているものなのです。

 えー、イメージできないし、楽しくないから、「じゃぁいいですぅ」と思ったあなた。待ってください。よく聞く単語をザックリ理解するだけでも植物の姿がぐっとイメージできるようになりますよ。仲間に伝えるときも「ゆで卵の形の葉っぱで縁がギザギザしていて、表面はテカテカしているよ」と言えばだいたいイメージが共有できます。仲間内でドヤれます。また、判別の着眼点が分かるようになります。葉っぱの形、葉の先端と付け根の形、柄の有無、鋸歯(縁のギザギザ)など。なるほどこういうところを見ればいいんだねと。

 今回は、専門性の高い植物図鑑に記載されているような、難解な植物用語に出会ったときに頼りになるお薦めの一冊を紹介します。


本の紹介

図説 植物用語事典
 植物の形態を表わす1200の専門用語をテキストと図で詳しく解説している良書。各部位ごとに章立てされており、教科書のような構成。一つの言葉を調べると関連する用語が前後に掲載されているため、体系的に理解できるのがよい。巻末の索引からも検索が可能で事典のようにも使える。本書には写真や図が700点あまり掲載されており、説明文と図表を対で理解できる。筆者が大学時代に受講した「植物形態分類学」の参考図書として指定されていた本で、著者の清水氏は金沢大学や信州大学で教鞭をとっていた方。そのため内容は信用できる。

インターネットを調べても、植物の形態に関する用語が体系的に解説されているサイトはほとんどなく、筆者は今でもわからない言葉あるとまず本書を開く。初心者が専門性の高い植物図鑑を読む場合、巻末の「形やつき方・質を表わす用語」を開いて一緒に見るのが良い。このページは中学生でも十分理解できる。本文中の記述を正確に理解するには流し読みではだめだが、植物を深く理解したい、植物と長く付き合いたい方にはお薦めの本。

 今回はややマニアックで大人向けの本の紹介でしたが、植物への理解が一段と高まること間違いなし。是非本書を片手に分厚い図鑑の読解にチャレンジしてみてください。

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