見出し画像

今、ここで、生きていく。

朝日が黄色のカーテンに差し込む。眩しくて目が覚めた。

"寒い......。あ、そうだ。わたし長野にひとり来たんだった。"

目覚ましが鳴る前に朝日で起きるなんて理想...!と思ったのも束の間。あまりの寒さにふとんでのぬくぬくタイムはいつも通りはじまった。

長野県、軽井沢。観光にきたのではなく、働きにきた。老舗のお蕎麦やさんでお手伝いをさせていただいている。蕎麦を打つ音と流れる澄んだ水の色。お店の中には有名人のサインや、貫禄のある白黒写真。畳の匂いと年季の入った渋い木のテーブル。やかんは底が焦げ、タオルには色褪せた分だけ汗と想いが詰まっているように思えた。

どこに行っても人に興味津々のわたしは、アルバイトの高校生や繁忙期の手伝いのため東京から帰ってきた娘さんに話しかけてみたり。バタバタと駆け回ってお蕎麦を運びながらも「ここにいること」を楽しむ。

縁もゆかりもないこの地で9日間、まさに「ここで働かせてください! 」状態でぽんっと転がり込んできたような小娘だ。誰もわたしの過去や経験や考えや想いなんて、知らない。ただ、ここにいる、わたし。それだけが、「わたし」だった。


ふっと、思う。

何者でもない、「人」としての、貝津美里はどうありたいのだろうか?

学生の頃はいつも心のどこかで就活のために良い経験を積もうとしていたし、会社員になってからは誰かに褒めれるため評価されるために努力をする自分がいた。

じゃあ、今は?

フリーになり、纏う看板は無くなった。自分の好きな「書くこと」を仕事にし、明日を用意されていない道を自分で切り拓いていく毎日。ジャングルの中を藪を掻き分けたり、突然出てくるヘビに驚いたり、丸裸で飛び込んだわたしの日常は安心安全とは程遠い。

それでも、人生ではじめて「誰かのためでなく自分のために生きる日々」が手のひらの感触として確かになってきた。お蕎麦屋さんの暖簾をくぐり、「今、ここにいるだけのわたし」を良くしてくださるみなさんと働く中で、自由と責任がじわり心に沁みた。


初めましての出会いや場所が気づかせてくれることはたくさんある。離れてみるからわかること。無くしてみてわかること。手放してみてわかること。

だからわたしは旅が好きなんだ。


いろんな角度で人生を楽む。人生が思い出づくりとするならば、嬉しかった思い出も悲しかった思い出も、すべてネタにするんだ。

そう決めてから、心のギアの切り替えがずいぶん楽になった。

さぁ、今日もネタ探し!

「今、ここにいるわたし」で新しい自分を、見つけにいくよ。

#みさとん日記 #エッセイ #日記 #リゾートバイト #旅 #自分 #生き方 #経験 #人生 #考え方 #お蕎麦





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?