もう一度、エンジン音を。
自分で決めて、自分で歩いて、自分でつまずいて。 自分で起き上がる。
他の誰でもない、自分で思い知るしかないこと。自分の人生にとって必要な、避けては通れない経験がときに降りかかる。
三日月が怖いくらいに漆黒に浮かぶ夜は、どうしようもなく立ち尽くすしかない。
何年も前にもらったお守りを、ぎゅっとにぎって眠った日ほど泣いた夜はない。
それでも時は残酷なまでに流れ、暖かくなれば雪は溶け、花が咲き、蝉も鳴く。
そのころにはきっと、笑いながら、顔をくちゃっとさせて言っているのだろう。
いやぁ、辛かった。でも、よく頑張った。
渦中にいるときは、世界の終わりが来るかのように悩み泣いていたのに、通り過ぎれば雨は止み自然と涙も乾く。
死にたいと思うほど、苦しんだのなら。
もう、死んだ気になって、どうせ、100年後にはみんな死ぬのだから。
散りゆくのなら、惜しまれるくらいに咲き誇りたい。
それが、たくさんの人からでなくていい。大勢の人からでなくていいから。昔傷つけてしまった人の顔をほんの少しだけ思い起こして、後悔と誇りに色付く自分を咲かせたい。
誰かにとっての、たった一輪であること。
その他大勢でいることよりも、価値のあることのように思う。
もう一度、エンジンを。
走り出す雨の夜。
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