早く帰ってきてね。
今頃、キャリーケースをゴロゴロ引いて慣れない空港をあっちでもないこっちでもないと、右往左往しているのだろうか。
2日前に彼の最寄駅で会ったときは、「まだキャリーケース買ってない!」と言うから驚いた。
何が必要かな?全然慣れてなくて...!とテンパりながら海の向こう、一週間の旅行に焦りまくる彼をケラケラと笑いながら見つめ、「夏休みの宿題は、最後にやる派?」と尋ねる。
すると、「うん!むしろ開き直ってやらなかった!」なんて宿題を出さない日は1日も無かったわたしにとって考えられない回答を、大好きだというポテトフライをつつきながら話してくれた。
かと思えば、
「芋食べてるときが一番幸せ...」
と、次の瞬間つぶやくから、彼のちぐはぐな言葉にはいつもクスリと笑ってしまう。
「でもさ、パスポートとチケットがあれば、大丈夫だよね!」
そうなんだよ。大丈夫なんだよ。海の向こう、計画通りにいかない、不便さや不自由さが見せてくれる景色はたくさん、たくさんあるから。だから、完璧じゃないことを怖がらなくていいんだよ。
いつもはいろんなひとに、「行ってきます」を言う側のわたしが、大切なひとに「いってらっしゃい」を言うのがなんともくすぐったい。たった一週間の旅行なのに。自分は長期の旅ばかりを好むくせに。
早く帰ってきてね。
自分の口から出てくる言葉に、驚いた。自分より大切なひとを見送る側の気持ちが、ほんのちょっとわかった気がする。きっと大丈夫なのに、やっぱり心配や寂しさが混じるのは、愛だ。
大切なひとほど、わたしの大好きな旅をたくさんしてほしい。
Have a nice trip.
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