このままガラス瓶にそっと入れて君にプレゼントをしたい。
ガタンゴトンをゆっくり鳴らしながら次第に停車する。錆びた音のする駅。"海岸左"と書かれた看板を見て改札を左に曲がることにした。
辺りは静かで、コンクリートの道さえも自然が映えるひとつでしかなかった。
この間買ったばかりの紺のスニーカーにコーディロイのスカート。パーカーのポケットに手を入れリュックを揺らす。
もう、イヤフォンは取ることにした。
あっ、海だ。
角を曲がると見つけた。細い道の間に、無限に広がるあの世界を。
自然とこぼれる笑み。「海」と音にするだけで大好きなその景色が掴めそうな現実となってまるで宝物を見つけたかのようにこころが踊る。
広がるのは絵に描いたような空の色。それから、時を止めたかのように流れる、雲。
ああ、このまま透明なガラス瓶にそっと入れてプレゼントをしたい。湿った筆を優しく下ろしてさらりと色を重ねたようなそら。ここに広がる幸せをきみに届けたいと、うるうる水滴がにっこり笑う瞳を濡らした。
世界がこんなにも優しくて綺麗なら、
絶対に大丈夫。
私の信じる世界はいつだって透明で素直で正直な色をしている。風が吹いて、音がする。
何本の映画を観るより何冊の本を読むより、何人の人に会うよりも、綺麗な景色と音と風に触れるのが一番いい 。
こんなに寒いのに海パン姿でずぶずぶと海に入っていく白人男性3人が子供みたいにはしゃいでる。
ふふっ。危ない危ない、世界はこんなにも広いんだった。
常識なんてこの世界には無いことをいつも忘れてしまいそうになる。普通で塗り固められた定刻通りの電車に揺られ過ぎるとすぐにこうなってしまうから、旅はやっぱり生きていくのに必要な必須アイテムだ。
砂浜の砂に足がとられる。沈むスニーカーを気にせず大きく息を吸ったり吐いたりして、笑顔な自分と一緒に歩く。
一人で生きていかなくちゃ。一人で、一人でと、えぐられるように残った胸の傷を一人でなんとかしようとしてた。しっかりしなくちゃ、立ち上がらなくちゃ、歩いていかなくちゃって。
でも、別に一人でなくてもいいやって。誰かと乗り越えてもいいんじゃないかって。
甘い角砂糖とろりまどろむミルクを溶かした柔らかいコーヒーにほっとする。
大丈夫だよ。世界はこんなに綺麗なんだから。
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