雨から逃げたくて、夢を編んだ
雨と雲に盛大に世界を支配され、花びらを広げられずにいるひまわりと、もう今年は出番ゼロなのでは?と土の中で嘆く蝉たちに同情していられないくらいわたしも限界だった...
世界一周する出発日を決めた。親友の誕生日の日にわたしは空港から旅立つ。会社のメンバーに応援してもらって見送られながら、約8ヶ月の旅だ。全大陸、30カ国以上を周って世界中の人の夢を聴いて発信をする。ときには大自然、ときには大都会を。最後の国はアメリカ。誕生日をハワイの海で過ごしてから帰国するんだ。
夜の日記に綴ったのは、夢物語でもなんでもない。数年後の自分の未来。あれやりたい、これやれたいとひっくり返したおもちゃ箱のように散らかしきった頭の中を整理するために、ノートとペンを引っ張り出した。
今回の人生、きっとやりたくないことをやっている暇はない。だって、やりたいことはポップコーンのように増えるばかりで。叶える期限を決め必要なことを並べ、どれから取り組むか、夢を編むだけで時間はどんどん過ぎていくのだから。
わたしは、暮らしと仕事を仲良くさせたい。仕事のために暮らしを犠牲にしたり、暮らしのために仕事を犠牲にするのはナンセンスだと、本気で思っている。笑われても罵られても、キョトンとしていられる自分の意思のひとつだ。
ふっと気をぬくとするり入り込んでくる冷たい風。「みんなそうしているから」とか、「ふつうこうだから」と真っ黒な油性ペンで枠をなぞってしまわないように、自分の意思で引く線や色を選ぶ。
それを“挑戦”と呼ぶなら、そうかもしれない。いやいやそんな壮大なものなんなじゃなく、“我慢をしない”と決めることで実現できるかもしれないし、本当は自分が欲しいものを知っているだけで軽やかに姿形を変えられるかもしれない。
澄んだ水のように、シンプルに。景色を小さく小さく映す鳥の目で世界を見て、自分を編めたら。もっと心地よく生きられそう。
世界一周から帰ってきたら、海とカフェと商店街のある街で暮らしたい。旅エッセイの執筆をしてみたい。旅と言葉の写真展をひらいてみたい。結婚や出産をしても、好きな場所で好きな人と好きな仕事をしていたい。
雨に抗う夢を編む日。
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