たちどまる夜

閉店のアリアが流れる
上りエスカレーター
下る人達を眺めながら
昇る私の背中には
多分みえない羽がついていて
どこで降りるべきだったのか
足元の形がうっすらと未明の月

目的の言葉をみつけるために
疲労のふきだまりを通り抜け
生温かな夕闇に溶け込んで
この場所まで
真夜中のような静けさが発熱している
この場所まで

言葉の風に吹かれて
言葉の海に沈み
言葉の空を見上げている

壁際の連なる言葉の束を
背にして
尋ねるべき言葉を探していた
あれも私の分身だったのか

巻きつけたマフラーの
襟元から滴り落ちる
あるはずのない
思想の根底を
ひとつずつ解放して

ここでまた
君に会うためのひとりになろう

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