終電間際の10円

久々に飲んだ。終電近い電車に乗り
"終電近い"という余裕を持った事実に
大人になったなあと
自分のことながら思う。

幸せだ。
何かがうまくいっているというわけではないが
久しい友達に直接会うことができ
前と変わらないテンポで会話が出来て安心した。
楽しくてついつい昔のように
飲んでしまった。

酒に酔うということを
これもまた久々に体験し
寝ないように意識を保ちながら帰っている。

最後の乗り換え。
最寄りの駅に着く電車に乗り、席に座ると
10円が落ちていることに気がついた。
新しいのだろうか、酒が回っているからだろうか、
すごく輝いて見える。
だれも目に止めず、だれも飛びつくこともないので
こいつの行く末が気になった。

こんなに目立つのに
少なくとも私の目には留まって
わざわざ文章に起こすほどなのに
誰の手にも渡らないのだろうか。

そんなことが気になった。
それ以上の何でもない、ただその事実が
特に理由はないが
ただただ残酷だと思った。

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