買収企業の買いニーズ例①食品製造業の例|M&Aアドバイザープチお役立ち情報
こんにちは。かきもとみさです。
私はM&Aアドバイザーのお仕事をしています。
今回は、過去に成約したM&Aの事例について、「買手はどんな理由や狙いがあってM&Aを実行したのか?」ということを書いてみたいと思います。
参考になれば幸いです。
工場を保有する会社を買収し、生産能力を拡大するためのM&A
今回、ご紹介するのは食品製造業です。
買手企業は植物性の代替肉を開発製造するベンチャー企業。
日本のメディアでも広く取り上げられ、米国法人も立ち上げていました。米国ではプロ投資家向け市場に上場も果たしており、アメリカのハンバーガーブランドを買収して日本への市場展開を画策中でした。
日本でのマーケティングが奏功し、売上も順調に伸長。自社でも大きな工場を2年以内に立ち上げる計画がありました。
ただ、工場の完成には時間がかかるため、その間の生産キャパシティがどうしても枯渇していました。
提携工場を買収しようとも試みていたようなのですが、その会社は今回の対象会社よりもすこしサイズも大きかったため、DDなどにも時間がかかりそうな様子。
そこで私が売却案件を担当していた食品製造業の売却案件に目をつけていただき、まさに電光石火のようにクロージングを果たしました。
対象会社は、和食のお惣菜(煮物・揚げ物など)の副菜を中心に製造していた東北の中小企業でした。国産素材・手作り素材で美味しい商品を製造していたのですが、中でも大豆を使った代替肉を製造していました。
代替肉の製造を行っているということで経営思想も重なっていた部分があったし、製造能力としても買手企業の補強になり得るし、案件規模としても手が出しやすく、すぐに前向きに検討していただけることになりました。
11月1日にトップ面談を実施し、クロージングしたのは11月24日。いまのところこれよりもスピーディなクロージング例は経験したことがありません(笑)。
なぜこんなに短期間にクロージングできたのか?
1カ月以内でのクロージングはかなりレアでしたが、実はこの短期間でクロージングができたのには理由がありました。理由はおおまかにまとめると以下の2つでした。
①スキームが検討しやすかった
まず、買収対象を買手に検討してもらいやすくするために工夫をしました(厳密にいうと、買手に買いやすくするためでもあるし、売主のメリットも享受するためでもあります)。
何をしたかというと、会社分割です。
対象会社に子会社を設立して、子会社に事業自体をすべて移管し、親会社には不動産だけを残しました。
100%子会社なので、既存会社の契約関連や従業員との雇用関連も引き継ぐことができます。
子会社の設立時に、継承させる資産や負債を特定することができるため、既存会社に存在する可能性のある見えない負債(簿外債務)や、係争問題、労基問題などを自動的に買手が継承するということを防ぐことができました。
これは米国に上場企業をもっていた買手企業からは非常に好まれたスキームでした。
「監査の手間が省けて非常にありがたい!」と言われました。
②DDがほとんど終わっていた
とはいえ、事業自体のDDは既存会社(分割前)の内容を精査する必要があります。
実はこの案件では、このベンチャー企業の前に確度高めな買手候補があったのですが、破談してしまったのです。
DDを通して、その買手企業が完全に早とちりで、私に事前に相談もなく、ある事象を誤解しており、その点を売主に思い切り強気に指摘してしまい、軽いトラブルになってしまったのです。
そのときのトラブルについてはかなりドラマがありますが、今回は本筋から外れるので割愛します(笑)(あれは辛かった・・・今思えば良いネタです)
その会社がじっくり密度の高めなDDをすでに実施していたため、そこで発覚した懸念事項などは一通り洗い出されていました。
その内容を踏まえて、成約した買手企業には事前に伝えるべき事項を私がアドバイザーとしてとりまとめて伝えることができあので、非常にスピーディでした。
これはマネしようとしてできることではありませんが、今回は不幸中の幸い?雨降って地固まる?のような感じです。
ちなみにその際に、当初の買手候補がリーダー格と1人1人面談を実施しており、その時に私はすべて立ち会っていました。
そして、M&Aをきっかけに、従業員たちが「新社長に期待すること」「これまで不満に思っていたこと」などはものすごく溢れるようにたくさんでてきました。
それを私は横で聞いていたのでメモしており、抜粋精査して成約した方の買手社長に共有したのですが、もこれまためちゃくちゃ喜ばれました。「これは助かります!」と。リーダー格の本音を早期に把握しておくのは、PMI(統合後プロセス)で大事ですからね。
スピーディな成約だったので、社長もものすごく忙しかったため余計に喜んでくれました。
※ただし、他の買手がDD中に得た情報を横に共有するのは基本的にはマナー違反だと思います。アクションとしては慎重になるべきことですので、本当に伝えるべきことだと判断できることであったり、M&A成約の確度が高く買収後にも役立つ情報であったりする場合にのみ、熟考して情報共有したほうが良いかなと思います。
軽く成約事例を買手目線で書いてみようと思ったら、思いのほか長くなりました!どの案件も、深い学びやドラマがありますね。
また別案件の事例も書いてみたいと思います。
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