成り上がりって面白い
18歳で大学進学で上京して今に至るまでに何度か引っ越しをした。
その中で一番「なかったわぁ」と思うのが、大学3年生の時に引っ越した、今はなき山下荘。
山下荘は1階に大家が済み、2階の3部屋が賃貸になっていた。
火サスの犯人役が住むようなボロいアパートで、鉄階段は錆びていた。
登るとカンカンカンって音がするタイプね(笑)。
目の前が広い駐車場だったから、女子的には防犯面で不安があったなあ。
でも、5万円という破格に引きつけられて借りちゃったよね。
このアパートには室内に洗濯機置き場がないから、共用廊下に置くタイプ。
風呂場は確実に後付けなので、トイレとの間にドアがないから、風呂に入るたびに湿気がすごかった。
だから、私は借りてる間の1度だけバスタブを使い、後はずーっとシャワーのみだった。
風呂好きな私としてはこれも「ないわぁ」って感じた部分。
1階の大家の家の庭に面したベランダとはとても言えない場所にしか洗濯物は干せなかった。
つまり、大家から干してる内容が丸見え。
この大家って人が曲者で、当時50代後半で独身だった。
保険の営業レディをやってたらしいけど、私が入居する春に辞めたらしい。
で、夫も子どももいないから暇なんだろうね。
毎日毎日、近所の婆さん達とお茶してたよ(笑)。
本当に暇だったみたいで、入居者の郵便受けをチェックして、「朝日新聞をとってるの?毎日新聞の方が良いわよ〜」とか、「赤い下着をつけてるのね♡」みたいなことを言ってくるから、
キモいんだよ、ババア!!!
そう思いながら「はぁ」みたいな間の抜けた返事をしていたね。
大家はいつもお尻が異様に大きくて、斡旋してくれた不動産のおっちゃんによれば「オムツをしている」らしかった。
なるほどってぐらいわかりやすい見た目をしていた。
私は山下荘には1年しかいなかった。
理由は、プライベートなことに首を突っ込んでくる大家がうざかったことと、ゴミ出しの件で喧嘩したから。
思えば、山下荘を紹介された時、「あそこの大家は結構変わり者で、すぐに退去する人が多いけど、地の利と家賃は好条件だから、まあうまくやってよ」と言われていた。
住んでまもなくして退去者が続出する理由がわかった。
当時はのどかな場所で、夜になるとびっくりするぐらい静かで、血気盛んな年ごろの私には物足りなかった。
今じゃ、山下荘はなくなり、その跡地には立派な大型マンションが建っている。駐車場もつぶされていたね。
大家も生きていれば80代だろうし、元気にしているかしていないかわからない。
山下荘に住んで良かったと思ったことは一度もないけど(笑)、わりとビビッドな思い出がある部屋だったね。
社会人になり、結婚し、金銭的に裕福な今ではグレードの高いマンションに住んでるけれど、思い出すのは案外、山下荘みたいな部屋なんだよね。
それは貧乏で、お金もなく、毎日アルバイトに明け暮れ、日銭を数え、それでも青春だったからだろう。
あの頃は親のお金で学生にしてはハイグレードな部屋に住んでる友達がすごく羨ましかったけど、今となっては山下荘から始まって良かったかもなと思わなくもない。
成り上がりの人生って面白いからね(笑)。
もうすぐ引っ越しの時期だなーと思ってこれを書いてる。
引っ越しは、それだけで過去がリセットされるようなワクワクした感覚になるから良いよね。
桜はね、必ず咲くのよ。
だって咲かない花はないからね。