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デザイナーの資料本|001 ヨーガン・レール『On the Beach 1』

デザインの仕事をしていると、内容はもちろん装丁やブックデザイン的な面で「資料として持っておきたい」本に出会うことがあります。そんな資料本を紹介するコーナーを始めます。

ヨーガン・レール『On the Beach 1』

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最初の1冊目は、昨日買ってきたヨーガン・レール『On the Beach 1』。2014年に亡くなったドイツ人ファッションデザイナーである著者が、最後に暮らした沖縄県・石垣島の砂浜に流れてくるプラスチックのゴミを拾い集め、ランプとして作品にするプロジェクトについての本です。

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文章はほとんど無く、ほぼ写真で構成されています。
全体は3つのパートに分かれていて、最初は石垣島の環境についてのパート「Beaches」。左ページに美しい自然、右ページにそこに打ち上げられたゴミの写真がレイアウトされています。

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続く「Making」のパートでは、ゴミを集め、作品を作るヨーガン・レール氏の様子が紹介されます。

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最後の「Lamps」のパートでは、実際に出来上がったランプの作品が数十ページに渡って掲載されています。とてもカラフルで美しい反面、これだけの数の作品が作れてしまう海洋ゴミの量の多さ、それを大量の作品にすることにした著者の悲しみや問題提起の意識が伝わってきました。

「資料買い」したポイント

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いちばん目を引いたのは本文の紙質です。「砂浜」や「自然」を感じさせる、ざらっとした風合いの紙。この手の紙はインクが沈みやすく、はっきりした色が出にくいので、写真がメインの本ではもっとツルツルした紙を使うことが多いです。

しかし、この本では被写体である石垣島の自然やカラフルな作品の色合いが強めなので、多少沈んでも気にならないのかなと思います。洋服作りでも自然な素材にこだわり、自然を愛したヨーガン氏の世界観にマッチしていますね。

ちょうど今進めている本のプロジェクトも、自然やオーガニックがテーマになっているので、この紙を検討してみたいなと思って資料買いしました。印刷会社の方に見てもらって、同じ紙で見積もりを取ってみようと思います。(紙が分かったら追記しますね)

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表紙はクラフト系の繊維感のある紙に、小さくタイトルを箔押し。

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表紙と本文の間には、恐らく「海」や「プラスチック」をイメージしたトレーシングペーパーが使われています。これが全体を落ち着きすぎないようにするアクセントになっています。

デザイナーは松浦秀昭さん

このブックデザインや写真メインの編集方針、僕が持っているヨーガン・レールのブランドイメージにもぴったりで、どんなデザイナーさんがデザインしたんだろう…と奥付を見たら、松浦秀昭さんという名前が出てきました。

検索すると、元々はイラストレーターで、現在はヨーガン・レールでデザイナーをされているそうです。この本の編集も手掛けられていて、洋服だけでは無く、こんなに綺麗な本も作れるんだ…と、驚きました。

ソフトカバーで2000円程度と買いやすく、写真メインで気軽に読めるけどテーマは重い、とても好みのバランスの本です。文章メインの本も読むけど、テキストは読み返すことが少ないので、こういう本は好きですね。

リンク先に「英語」と買いていますが、バイリンガル表記の本です。

打ち上げられたビーチサンダルを集めた『On the Beach 2』もあります。