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使い切っていく生き方

世間を見渡してみれば、大人と言われる年齢になった女性が、痛々しい姿を晒していることがよくあります。

大人になりきれない幼稚な大人の女性もいれば、大人というものがどういうものなのか分からないまま大人のコスプレをしている女性もいます。あるいは、大人の女というものを何かこう、ひねくれて腐ったような解釈をしている女性もいます。

そんなに大人の女と生きることが難しいものでしょうか。私達の先輩の女性たちの多くは素敵な大人の女性に成長しているのに、今の20代から40代はどうしてこうも大人になるのが難しいのでしょうか。

その原因の一つは、「使い切っていく生き方」を知らないからだと思うのです。

以前、こんなツイートを読みました。誹謗中傷ではなくて単なる意見なのでご勘弁いただきたいのですが。。。
こういう内容のことが書いてありました。要約すると、

「深緑色のジャガーをガレージに置いて眺めるだけで乗らないあり方がいい。セクシーではあるけどセックスはしない女がいい。使えば使うほど味が出るものもあるけど、女の体はそうじゃないので。」

そういう内容でした。そこには御本人の、とても美しい大人世代の女性の写真が付いていました。そのブログの読者は中年男性がメインだと思います。正直、女性としては一切共感できませんでした。
ああ、こういうことかと痛感してしまったのです。

例えば、1990年代は新車を買うとシートに被せられたカバーを外さずに運転しているオジサンがたくさんいました。カバーを外すと新車気分がなくなるし、汚れが始まるからという理由だと思います。

工場で組み立てられた新車は、出荷時にシートにはカバーが被せられたり、ドアの内張りには保護シールが貼ってあったり、輸入車などは注意書きのタグがぶら下がっていたりもします。車じゃなくても、例えばジーンズは新品のときはフラッシャーやギャランティカードが盛大に盛り付けてあります。
新品のときのそんな付属品が付いたジーンズが古くなると「ビンテージ」「デッドストック」として有難がったり、カバーのかかったままの車は「大切に扱われた車」としてリセールの価格が高くなったりします。


ブログの美女は、女も同じようなものだと言いたいのでしょう。セックスをしないセクシー美女。これが今の時代に女性が大人になりきれない原因の一つだと思うのです。

残念ながら、女の体は有機体でしかありません。
使っても使わなくても、老いていく。セックスしたことがない処女も、年を取れば、交通取締りの若い警察官から「お母さん、そこ一時停止ですよ」と失礼なことを言われるのです。

顔にしわができるから笑わないことにするとか、日焼けが怖いから夏の日に外に出ないとか、そんなことをしても皺だらけになり肌はくすんでいきます。

女も男も、年齢に抗うことはできません。時の流れに抵抗することは不可能です。

だから私は、「使い切って生きていく」のが大人になるために必須の感性のような気がしてます。

真っ白いスニーカーも、履き始めればほんの数日で黒ずみます。汚れた白いスニーカーは何をやっても元には戻りませんし、その汚れはいつまで経っても「味」にはなりません。
車も同じ。乗っても乗らなくても劣化は進んでいきます。塗装はくすみ、ハンドルは手の皮脂でテカり始め、車内には体臭が染み付きます。乗らなければ数十年もガレージに眠ることはできますがいずれエンジンはサビつき足回りは抜けてしまい運転は不可能になります。

女も、今日という一瞬をすべてを使い切って生きていくことが、大人になるためのレッスンなのだと思います。

30歳、独身の6月の梅雨の季節というこの一瞬は、もう二度とありません。40歳で離婚したばかりの夏の暑い日という一瞬も、20歳で白いTシャツで線路の横の路地を歩く真夏の夜という一瞬も、もう二度とありません。
そしてその一瞬を使い切って生きていくというのは、「傷つく」ということです。
何度も、何度も、あらゆる種類の傷がついていくのです。

性別関係なく、生きるってそういうことじゃないですか。

今日という日の、例えば仕事とか、セックスとか、恋愛とか、その末の傷とか、そういうものから簡単に逃げた先には、「かつて女であったわびしい抜け殻」しか残りません。
女は、使っても使わなくても、老いていくだけなのです。
老いを楽しむことは出来ます。でも、それは、使い切って傷つきながら生きてきた大人の女だけに許された贅沢です。

傷つくことを恐れて簡単に逃げる女は多いですよね。
セックスで傷つくのが怖い、太っているから痩せてからセックスしたい、痩せたら恋愛したい、勉強したら仕事をやめて転職したい、いい人が見つかったら結婚したい、
ちょっとあの人の顔が曇ったからもう恋愛感情を持たないほうがいい、デートの予定が入らなかったからこの恋愛は諦めたほうがいい、
セックスして音信不通になったら傷つくからセックスしない、失望するのが怖いから恋愛しない。

20歳で逃げて、35歳でできるようになることは、ほとんどありません。35歳から年相応の恋愛とセックスをするのなら、20歳から逃げてきた15年分の感情の波を、死ぬ思いで1ヶ月に凝縮して味わっても足りない。

そして多くの中年女性は、Twitterやブログなどで下着姿や脚や谷間を自撮りして自ら晒し、男性が褒めてくれるという安全な遊びに逃げ込むのです。
いくら男性がアプローチしてもそんな女性に会えることはありません。
傷つくのを恐れているからです。使って減ることを怖がっているからです。

エロいことばっかりツイートするわりに、会えないじゃないか!って中年男性は怒るでしょう。中年男性は、傷つかない生き方の女性など見分けることは出来ないでしょうから。

私は、ダイヤの指輪も普段使いし、高級バッグももったいぶらずに常に使い倒してしまいます。簡単に劣化しみすぼらしくなります。「味」なんて出やしません。ただのボロです。
使えば当然いつか捨てる時が来ます。でも、私は25歳のときにしか意味がないもの、30歳のときにしか意味のないものをきっちり使い切っては捨ててきた自負があり、それが今の自信を作っていると信じています。

恐れずに今の一瞬を使い切って、生きていく。

「味」なんて必要ない。劣化させて捨てていけばいいんです。捨てたらまた新しい体験をする。それが大人の女の成長する生き方ではないでしょうか。

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