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まだ準備は出来ていないから

昨日から母親を連れて、帝国ホテルに泊まっている。

どこかのイルミネーションが見たいという母のリクエストに応えて、日比谷と丸の内のライトアップが見られる銀座エリアを選んだ。
高齢で夜出歩くのが体力的に不安だったし、親孝行らしいこともしてこなかったので、憧れていたらしい帝国ホテルお泊まりをプレゼントしたのだ。

3年前に父が亡くなるまで、長く介護をしてきた。
遊びに行くこともできず、亡くなってからは引っ越しやら何やらでバタバタしてるうちにコロナ禍になってしまった。
感染が落ち着いてきたこのタイミングを逃すと、次にいつ親孝行できるかわからない。
パパッと予約を取ってやってきたのだ。
新聞で見て気になっていたらしい資生堂パーラーの苺パフェもご馳走した。
とても嬉しそうだ。

男性からはあまり理解されないが、多くの女性は高級なシティホテルに泊まるのが好きだ。
家が近くても、ホテルに泊まることがイベントになる。
父が生きていた頃には出来なかったことだ。

「もうこんな贅沢、最後だと思ってるから」
そういいながら、次は雅叙園東京に泊まりたいらしい。
それが本当の最後だと言い張る。
これからは姉と二人がかりで、母が行きたくなりそうな場所を次々と勧めるだろう。

母は「もういつ死んでもいい」とよく言う。
でも母にはもう少し長生きしてもらいたい。
子供のエゴかもしれないが、私は親がいない自分になる準備はまだ出来ていないのだ。

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山内三咲
豊かな人生のために、ファッションのスパイスを。 学びやコーチングで自分の深掘りを。 私の視点が、誰かのヒントになりますように。