見出し画像

本格的な夏至祭に参加! #ラトビア日記 43週目


2024年6月17日 長い髪

 朝起きたら、なんとなく気分が重い。

 どうしてかは、分かっている。

 朝ごはんを食べて、もう一回ふて寝してしまおうか、とベットの上に座る。

 いやいや、書かなきゃいけない原稿もあるし、明日は修士論文のテーマのショートプレゼンだ。

 外は晴れているし、なんとなくゆううつな時こそ外に行かなくちゃ。

 と、街中をまた散歩。

 店員さんや店内の雰囲気が明るい「Rocket Bean」というカフェへ。リガ市内で店舗数を増やしているカフェだ。ここでプレゼンを作った。

 髪が伸びてきたので、編み込みに挑戦してみた。

 長い髪に慣れていなくて、ヘアアレンジが楽しめることを忘れていた。

 ヘアドネーションをしてみたいが、そこまで長くはない。

 日本に帰ったら遅かれ早かれ髪を切るつもりだし、今のうちに一つ結び以外もやってみよう。

2024年6月18日 よくがんばりました

 先日返ってきたエッセイについて、先生に意図を聞いてみた。

 テキストだと刺々しいフィードバックだったけど、対面で話せばちゃんとアドバイスをくれるし、修士論文のテーマにも、質疑をしてくれた。

 今学期、最後の授業で納得感をいだいて終えられて、本当に良かった。

 このままモヤモヤを抱えて帰国したくないもの。

 今期も、よく頑張りました。ほぼ一年かけた、ラトビアでの学業はこれで一区切り。

 次はオランダ・ユトレヒト!

 すでに学生向けのギャザリングの案内が来て、インターナショナルな学生に慣れている感じが伝わってくる。

 また新しい出会いが待っている! たのしみだな。

 そのまえに日本でちゃんと休んで、次のことも考えよう。

2024年6月19日 思い出した

 昨日で一旦春学期が一区切りしたからか、起きたら久々に8時過ぎだった(いつも6時くらいに目が覚める)。

 雨が降っている。

 小さなスケッチブックを買った。

 もともと絵を描くことは好きだけど、授業が終わったとたん、新しいことを始めたい衝動に駆られた。

 リガに来てから、いろんなスケッチブックが売られているのを見て、絵を描きたいなとぼんやり思っていたけれど、他のことを優先して、ほとんど忘れかけていた。

 めんどくさがりかつせっかちだから、絵の具を出してじっくり描くより、ボールペンや鉛筆でスケッチする方が性に合っている。

 何を描こうかな。明日行く、夏至祭に持って行こう。

2024年6月20日 夏至祭へ

 本当の夏至は明日らしいが、今日はリガを離れて夏至祭へ。

 ヤルガワ市という、リガから車で40分ほど離れた地域にある神社で行われる夏至祭に参加させてもらえることになった。

 ラトビアの夏至祭はJānisという神様をお祀りするイベント。女性は花冠、男性は柏の葉っぱの冠をかぶる。

到着したらヒキガエルの神様にあいさつをする
持ち寄りのご馳走が集まる。チーズやクワスという大麦の発酵飲料、フルーツやトマト、きゅうりなど
社殿。両脇は白樺

 ラトビアの土着信仰では、日本の神道のように、いろんな神様が土や植物、山や川にいると信じられているけれど、数は多くない。

 むしろMāras(マーラ)という神様が水を司り、その水が森や川につながっている母神のような存在で、どのオブジェクトもMārasに還ると考えられているみたい。

池はあの世とこの世の境界線
社殿の火は春分の日の太陽で採光して点火した火。最後にこの薪のところに焚べられる
おやしろ
魂をかたどる岩
Mārasを表すサイン。こういう記号がたくさんラトビアの神話に出てくる
社殿に入る前に斧に触れてあいさつをする
社殿の中はこんなかんじ。神主さんの後について歌を歌っていた
点火
この火が最後ボンファイヤになる
火の周りで歌う
たまたま満月だった
ボンファイヤの周りでも歌う
おやしろから火車を転がす神主さん。3回ほど往復していた。この車は太陽を表す
自分で作った花冠と、もらった花冠

 社殿の中で歌を歌ったり、火を焚いたりしている間、写真を撮ったりスマホを触ったりしても問題なかった。

 それくらい厳粛なムードは薄く、どちらかというといろんな人との再会や食事を楽しむための時間という印象を受けた。日本で言うと、お盆が近い気がする。

 夏至祭の帰り道、車を出してくれたポーランド人の学者の先生が「ポーランドの夏至祭は、もっとキリスト教色が強く、厳粛な雰囲気。スマホを使うなんて絶対NG。歌を歌うのも限られた人たちで合唱するのは禁じられている。それに、もし歌って良くてもポーランドの人たちの多くは、歌を知らないだろうね」と言っていた。

 神社があるエリアには、もともと地域の人たちに大切にされていた森があり、昨年の山火事で焼失してしまったという。

 地域住民の数は、だんだん少なくなっているみたい。多くの人が車でやって来ていた。

 商業化されず、かといって排他的でもない、儀式のような、親戚の寄り合いのような。どれにも属さない、ちょっと荒削りな段取りだけど、人の善意で守られている地域信仰って、こういう感じなのかもしれない。

帰りの車窓から見えた空 2:15ごろ。

2024年6月21日 一時帰国の準備開始

 昼前に起床。

 朝と夜の境目がほとんどなくて、ずっと昨日の続きみたいな心地。へんなかんじ。

 日本に持って帰るのも大変なので、不要な衣類はドネーション。

 すべての地区にあるわけではないが、ポツポツと設置されているコンテナ。基本的にはまだ着れる・使えるもののみ投入できる。

 街中でもふつうに花冠をかぶっている人もいて、いったいいつが本当の夏至なのか分からない。みんな楽しそうだから、良いけれど。

 夏休みと重なっているからか、クリスマスより、浮かれた雰囲気が漂っている。

 掃除をしていると、あまり余計なものを買わないようにはしていたとはいえ、数ヶ月暮らせば物も増えるんだなと思う。

 ちょっと計画的に掃除しないと、終わらないぞ。

2024年6月22日 ラトビア料理に舌鼓

 フィールドワークに協力してくれた、ラトビア人の友人のお母さんが営むレストランへ。

 旧市街地の路地裏の、こじんまりとしたレストラン。

 ビールプレート(おつまみ)とメインに鱈のルバーブソースあえ、デザートまでしっかりいただきました。

Maizes zupaという黒パンをスープ状にしたデザート。バルサムというラトビアの薬用酒に漬け込んであり、ティラミスみたいだった

 フィールドワークのインタビューの時、お母さんが話してくれたエピソードがあった。

 正午前の、よく晴れた日、シンプルな白いシャツを着た一人の男性が入ってきた。混んでいなかったので、そのお母さんが接客した。

 いくつかの料理とアペタイザー、お酒をオーダーし、料理を持って行くと、その男性は自分の箸を取り出したという。

 思わず話しかけたら、その人は日本人で、仕事でラトビアに来ているとのこと。

「静かに食事をされて、綺麗に食べてくれてすごく嬉しかった。彼の食べる姿は、今まで見たお客様の中で一番印象的で、一つひとつの所作がすごく丁寧だった」とのこと。

 その男性は、滞在中にもう一度、レストランへ食事に来たとのこと。

 一挙手一投足で人の心を動かせるなんて、よほど品のある人だったんだなと思った。

 同時に、わたしも「迎え入れてよかった」と思ってもらえる人でありたいと思うのでした。

レストランはこちら

2024年6月23日 誰とどこで生きるか

 毎日夏至祭みたいに浮かれているリガの街だか、今日は雨。曇り空。

 家の掃除を一気に進める。ルームメイトも明後日、次はベルリンに行くらしい。

 ヨーロッパは本当に、国と国、街と街をホッピングする人が多い。

 一方で、自分の家や家族を大事にする人も多くて、週末は家族で過ごす人もめずらしくない。

 遠くへ行くことのハードルが低くて、それでも家族を大事にするライフスタイルを両立するのって、どういうメカニズムなの?

 わたしは、極端かもしれないが、海外へ行くということは家族に緊急事態が起きても帰れない(帰れたとしても一日がかかり)ことを覚悟していた。

 もちろん、そんなこと、起きないに越したことはないけれど、今後どこで暮らすかを考えたら、家族やこれまでの人間関係と、どう向き合うかは、考え抜きたいトピック。

 日本に帰ったら、何か「こうしたい」というあり方が、見えるかな。

おまけ 夏至祭のマダム達

ここから先は

348字 / 1画像

¥ 200

読んでいただき、本当にありがとうございます。サポートいただいた分は創作活動に大切に使わせていただきます。