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オランダの試験とクリスマスにあたふた #交換留学日記 16

2024年12月2日 どこまで言う?

 先日の、友人のバースデーパーティのときのお話。

 ディナーは韓国料理屋さんで焼肉だったのだけれど、テーブルにマスタードとケチャップが置いてあった。

 日本では見たことがない取り合わせ。

 すでに味付けしてあるお肉に、なんの抵抗もなくケチャップをかけている。

 一方、味噌とニンニク、りんごのすりおろしがミックスされたようなタレがあって、わたしは喜び勇んでこのタレをたっぷりお肉につけてサンチュで巻いてかぶりついたのだけれど、彼らはその謎の茶色のタレには手をつけず。

 また、お肉を投げるように鉄板の上に置いたり、キムチが発酵食品だということを知らずに「farmented」と言うと怪訝な顔をしたり。

 確かに日本食や韓国のアーティストが海外に知られるようになって、欧米では特にアジアの文化に対する興味関心が高まっているけれど、関心が高いからと言って理解まで深まるわけではないよな。

 限りなく日本の味に近い(むしろほとんど変わらない)らーめんをオランダでは食べられる。

 でも、らーめんを取り巻くさまざまな所作(麺を啜る、おしぼりがある、寒い日にらーめんを食べると鼻水出るからティッシュが近くにある等)や、なぜらーめんが進化したのか、なぜ出汁が、なぜ麺が、なぜトッピングがこんなに多様なのかは、料理人はさておき消費者まで認知されているとは思えない。

 もちろん、わたしがオランダの文化をその深淵まで理解できているかと言うとそうではない。

 だからお互い様なのだけれど、不快に感じる振る舞いに対して、どこまで「ちょっと待った!」と言うのか、まだ塩梅が掴めない。

 最近、日本に増えている海外からのお客様に対して、感謝や喜びの声に混ざって、うんざりしている人や傷ついている人の声もあって、異文化へのリスペクトはどのように(意識的にも無意識的にも)示されるのかを考えている。

2024年12月3日 AIが変える勉強の仕方

 受講している授業のなかで、おろそかにできない、一点集中の力が必要な時がしばしばある。

 今日が、その日だった。とある授業の試験日。

 文字通り、朝から夜まで図書館に引きこもり、大事なところを何度も繰り返し確認しては復習した。

 こういうとき、わたしはよくChapGPTを使う。

 参考にしてほしいテキストやスライドをアップロードして、試験の仮のQ&Aを作ってもらうのだ。

 テクノロジーの変化で、勉強の仕方も変わった。

 ちなみにChapGPTが提供する文章は、要約されたりイディオムに変換されていたりするため、先生が強調したいキーワードが欠落していることがある。

 だから、丸暗記しても意味がない。

 そういう点では、いままでの、たとえば受験勉強と同じだ。

 AIは賛否両論あるし、人間に与える利点も欠点も、研究の最中だろう。

 友人の一人は、自動運転に関するAIの開発を行っているが、常に新しい情報が出てくるため、気が抜けないと言っていた。

 わたしは新しいテクノロジーや技術が生まれたら、ポジティブに、試してみたい派。

 新しいものは、予測不能でこわいけど、こわいかどうかは体験しないと分からない。

 ChatGPTについては、音声入力もできるから、会話の勉強にも使っている。

 便利だとは思うが、使えば使うほど、生身の情報の温度が恋しくなる不思議。

 試験が終われば明日からは、少しゆっくりペースに戻せる。

 図書館以外の場所を点々としながら、テキストを読む時間を作ろう。

2024年12月4日 おしゃれを捨てる雨の日

 雨、雨、雨。

 空は灰色。

 場所を変え、歩いたり自転車に乗ったりしてみるが、今日の灰色の空はこたえたなあ。

 オランダの冬は、雨と風が多くて曇りの日が多いと聞いてはいた。

 今日の空は、まさにオランダの冬、そのものだろう。

 雨足が弱まると、タイミングを見計らっていた人たちが犬の散歩やランニングを始めて、少し賑わう。

 多少の雨は気にしない。

 わたしは濡れたくないから、顔だけ出して、レインコートで全身ガード。

 黒いおばけみたいなシルエットになるし、オランダ人も二度見するほどの鉄壁の装い。

 おしゃれやかわいさは皆無。風邪引くよりマシ。

 我ながら、コウモリみたいで笑える。

 どうやったら、おしゃれに雨の日を過ごせるのか、教えてほしい。

2024年12月5日 オランダのクリスマス

 オランダのクリスマスは、日本がアメリカから輸入したクリスマスと、ちょっと違う。

 シンタクラスとは、わたしたちが知っているサンタクロースの原型にあたる、実在した人物。

写真を撮り損ねたので検索画面のスクショ

 4世紀に実在した聖ニコラウス(St. Nicholas)という司祭が起源で、貧しい人々を助け、周りに愛されていた人だったという。

 毎年、11月中旬になると、シンタクラスがスペインからやって来てオランダ中を巡礼する。

 ユトレヒトでもシンタクラスのパレードが行われ、わたしはすっかり日時を間違え、見逃してしまった。

 スペインから船でやって来るシンタクラスは「ズワルト・ピート」(Zwarte Piet)と呼ばれる助手を引き連れているが、この「ズワルト・ピート」は、もともとは黒人だったため、パレードでは黒塗りメイクをしたオランダ人がパレードを盛り上げていたらしい。

 けれど、時代の変遷とともに認識が変わり、現在は黒塗りメイクは廃止されているらしい。

 今日12月5日は、「シンタクラース・アヴォンド」(Sinterklaasavond)と呼ばれ、夜に子どもたちのところにプレゼントが届く日。

 日本でいう、12月24日の夜に該当する。

 シンタクラスの催しは、基本的に家族や子どもたちのイベント。

 12月5日が終わったら、クリスマスムードは無くなるのかな?

 授業後、友人と、大学が主催するクリスマスのイベントへ。

 ホットチョコレートが振る舞われ、クリスマスツリーのイルミネーションが点灯すると書いてあったのに……ツリーもホットチョコレートもない。

 代わりに、爆音のクラブミュージックが流れ、ホットチョコレートが振る舞われると思っていたテーブルには、ジュースとお酒が無造作に並んでいた。

 久々に、大学生ノリを味わった。

 友人は、比較的オープンマインドな子だけれど、わたしはすぐ疲れてしまうので、早々に退散。

 帰宅したら、先日の試験の結果が届いていた。

 無事、ラインをクリア。

 夢に見て軽くうなされたほど気に掛かっていたから、一安心。

 これでやっと、いま受けている授業と修論に集中できる! 寝よ。

2024年12月6日 海外の試験の難しさ

 一晩明け、もちろんわたしのところにプレゼントは届いていない……。

 どんより曇り空は、あいも変わらず。

 大人なのでおとなしく、安定のルーティーンを守ります。

 試験結果が嬉しくて、安心するあまり、何度も確認してしまう。

 どうして結果が不安だったのかというと、単純に自信がなかったから。

 なぜ自信がなかったかというと、先生が求めるキーワードを、自分が認識しているのか曖昧だったから。

 その授業の内容そのものは、わたしがすでにラトビアで学んでいた、文化人類学のリサーチメソッドを中心とした内容だったから、むずかしくなかった。

 むしろ、現場で何百人と取材してきたわたしにとっては、言わずもがなのマナーだったり、自然と心得るようになった倫理的な姿勢だったりが、授業でメソッドとして取り上げられたと言っても過言ではなかった。

 けれどそれゆえに、先生が何を試験で確認したいのかが、よく分からなかったのだ。

 授業で使われるスライドで、太文字になっているキーワードや大事なセオリーは数あれど、それらがどういう問いに紐づりて出題されるのか、想像できなかった。

 だからわたしは、エッセイの方が好きなのだ。

 筆記試験は、自分が何をどのように理解したかを示すのではなく、どうしても、先生が求める答えを推察できるかを試される気がしてしまうから。

 なにはともあれ、ありがとう、ChatGPT。

2024年12月7日 決めた

 大学院を卒業したあとのこと、ずっと、ずっと、考えていたけれど。

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