花一輪と筆一本 交換留学日記 10
2024年10月21日 身体がお疲れぎみ
生理がやっと来た。
ふだん、ほとんど1ヶ月の周期が乱れないから、正直気を揉んでいた。
新しい生活へのストレスだろうか。
と、思っていたら、夜、怖い夢を見て息を呑んで起きた。
明け方かと思っていたら、就寝後、1時間しか経っておらず。
そのまま朝の3時くらいまで、眠れなかった。
2024年10月22日 冬のご褒美
思い切って、ATSUKO OKATSUKAのショーのチケットを買った。
同じヨーロッパ圏でありながら、ラトビアに住んでいたときよりも、オランダで暮らし始めてからのほうが他の国や街へ行くハードルが、ぐっと下がった気がする。
というよりも、ラトビアに移住して最初の3ヶ月から4ヶ月は、居住許可を取得していないため、ラトビアから出られなかった(出国はできるが、そのあと数ヶ月間、ラトビアに再入国できなくなる)。
IDを取得するプロセスのストレスで胃がキリキリ、新しい環境と授業にドキドキ、まったく心の余裕がなかった、去年の秋冬。
実際は、ラトビアの方がオランダ国内よりも電車賃は安い。
近隣のエストニアやリトアニアへも、バスや電車一本で行ける。
北欧への飛行機も毎日飛んでいるし、アクセスは悪くない。
とはいえ、旅は、胃をキリキリさせながらするものではないのだ。
次にラトビアに帰ったら、もう少しラトビア国内を旅したいな。
チケットを購入したATSUKOのショーは、2月。
ラトビアでは開催されないが、フィンランドのヘルシンキの回へ行くことに。台湾のモンちゃんと一緒に。
フィンランドに行ったことがあってもヘルシンキ市街地へは出たことがない(空港のみ)。
2月の初旬は、すでに修論執筆に着手し、リガにもヘルシンキにも、雪が積もっているだろう。
遠いようであっという間に来てしまうであろう冬。
まだ見ぬ未来にご褒美を用意し、今日もせっせとテスト勉強をするのでした。
2024年10月23日 ポルノ大国
朝の寒暖差で、濃霧立ち込める、不穏な風景の朝。
今まで5時代に起床できていたが、さすがに日の出が8時台になると、暗すぎて、身体が起きない。
自転車の通勤・通学ラッシュに巻き込まれるため、早起きしたい。
子どもも大人も、ものすごい飛ばすから、交通量の少ない早朝に家を出るようにしている。
いまだに交通ルールが分からないことが、しばしば。
そういう時は、自転車を降りて歩行者のルールに合わせるか、近くにローカルの人が来るのを待って、真似するか、車が途切れた瞬間を待ち伏せるか。
日が短くなってくると同時に、日中にウトウトと、眠くなることも増えた。
ところで、今日の授業で示された、世界で最も消費されているポルノコンテンツランキングのNo.1は、Hentaiで3位はJapaneseだったよ。
恥ずかしすぎた。
先進国が聞いて呆れる。
試験期間は、あと一週間。大学の図書館は、朝から晩まで満席。
来週からサマータイムが終わり、いよいよ冬。
がんばるぞ〜。
2024年10月24日 大学生の特権
ラトビア大学から、修士論文のアドバイザーが決定したと連絡が。
夏休みの前のセメスターでは、リサーチに使うコンセプトが広がりすぎて散らかって終了してしまった。
今回は、なるべく狭く、深く、を心がけてテーマを設定してみた。
とはいえ、まだまだ絞り込みの必要がありそうだ。
後からテンパらないように、関連書籍は読み始めた。
ラトビア大学も、ユトレヒト大学も、大学のアカウントで論文や書籍が無料で読める。
すべての研究機関や図書を閲覧できるわけではないけれど、大学がサブスクしてくれていれば、電子書籍もすべて読めることもある。
けれどダウンロードはできないため、本当に必要な書籍は本を取り寄せたり、購入したりしなければならない。
ラトビア大学とユトレヒト大学で、契約しているサービスが微妙に違うため、ユトレヒト大学のアカウントを持っている間に、できるだけその特権をフル活用。
取り寄せた本は、試験終了後の一人旅の最中に、読む予定。
本をたくさん読むことに、惜しみなく時間を割けるのは、勉強している人の特権だ。
2024年10月25日 「偏見がない」という偏見
今期、受講している授業の一つは「Understanding Prejudice(偏見を理解する)」という名のコース。
レクチャーの一つで紹介されていた、無意識な偏見をチェックできる診断をやってみた。
傾向を示すのみで、言わずもがな、結果がすべてではない。
わたしは授業で例に挙げられていた「ホワイトとブラックの二項対立だった場合、どちらにネガティブな感情を抱きやすいかどうか」という診断をやってみた。
すると、微妙にブラックに対する偏見が見られるという結果に。
他にも、いろいろな国で暮らす人たちの社会的姿勢の特徴をグラフにして比較できるWebサイトも紹介されていたため、日本とラトビアとオランダで比較してみた。
自分がレイシスト(人種主義者)だとは思っていないけれど、メディアや生まれ育った環境の刷り込みで、差別するつもりがないのに差別していることもある。
個人的には「偏見がない」は有り得ないと思っている。
講義は、ステレオタイプはネガティブもポジティブも指すが、先入観や偏見(Prejudice)はネガティブなニュアンスで使われるという定義で進んだ。
「日本人はシャイだが礼儀正しい」はステレオタイプ。
「日本人はシャイで自分の意見を言わない」は偏見……という具合に。
それぞれの先入観やステレオタイプが真実かどうかは、個人で判断すべきだ。
けれど、わたしたちは世界中すべての人と会って会話することはできないし、会話しても分かり合えないことのほうが、残念ながら多いだろう。
だから「日本人はこうだ」「オランダ人はこう」と、大きな印象でひとくくりにしがち。
ステレオタイプ由来の「あるある」で、連帯を深めることもできる。
一方で、「あるある」を理解できない人を除外する働きは偏見も生む。
何かを括ったり、選び取ったりする時点で、なにもかもを矛盾なく包摂することはできない。
わたしは、「あるある」に甘えそうになったり、その居心地の良さに没入しそうになったりするたび、その「あるある」のぬくもりに感謝しつつも「一生このあたたかさに包まれているわけにはいかん」と思ってしまう。
だから旅をするし、海外へ行くし、勉強をする。
そして「見聞きしたことを、伝えたい」とも、思う。
誰もが「あるある」の外へ行けるわけではないし、行きたいと思うわけでもない。
自分の偏見に気づかず、気づかなくても平和に生きている人もいれば、無意識の偏見で傷つけ、また、傷つけられている人もいる。
だから、いつか誰かの目に触れたとき、すれ違ったときに香った名前も知らない人の香水や、涙を吹き飛ばす風、あるいは、耳を刺す冬の静寂のような、一瞬の純度を以て、誰かの「あるある」の外にも別の誰かの「あるある」があることを伝えたい。
暴力が蔓延る理不尽な世の中に、拳で立ち向かうのは、あまりにも無意味、無力。
何の足しにならなくても、わたしはわたしのやり方で、理不尽と向き合いたいのだ。
2024年10月26日 友人と会う日
ラトビア大学から、友人が訪ねてきてくれた。
彼女は、2023年の冬学期、一緒にグループプレゼンに取り組んだ女性。
わたしのことを気にかけ、オランダに行くから会おうと、数ヶ月前から連絡をくれていたのだ。
クラスメイト(もともと人数が多くないのにさらに学生がドロップアウトし、同学年はわたしを含め5名に減っていた!)たちの寄せ書きと、ラトビアのチョコレートをお土産にくれた。
さらに、数ヶ月ぶりに会ったら、なんと、妊娠していた。
彼女には息子と娘が一人ずついて、娘さんが来年からオランダの大学へ進学するため、オランダ滞在は、その下見のためだと言う。
ユトレヒトには、わたしに会うために寄ってくれたそう。うれしいな。
41歳で妊娠して、育ち盛りの子どもたちを守り、しかも大学院にも通う、たくましい姿に、勇気をもらった。
ちなみに彼女は、ユダヤ人。
ユダヤ教では、子どもが産まれるまで、赤ちゃんのためのベッドや洋服など、必要な生活用品を自宅には置かない習慣があるらしい。
彼女曰く、まだこの世に産まれていない人の物が家にあると、悪魔が取り憑くと信じられている。
だから、必要なものは親戚に預かってもらったり、予約購入だけして出産後に店から発送してもらったりするのだという。興味深い。
午後は、別の友人とピクニック。なぜ、カメラを持ってこなかったのか……。
ダウンがいらないくらい、あたたかい。
Toogoodtoeatというアプリをおしえてもらった。
飲食店やスーパーで、売れ残って廃棄予定のお惣菜や乳製品などが安く購入できるアプリ。
日本の位置情報のままだとダウンロードできないアプリだったから、後で試してみよう。
2024年10月27日 宗教があるとメンタルが安定するのか
テスト勉強のため、大学の図書館へ。
来週は2つの試験と、1つのグループプレゼンテーション。
それが終われば、一週間強のおやすみが待っている……!
勉強しながら、衆議院選挙の結果が気になって、10分に一度は日経やNHKのアプリで速報を確認してしまう。
日本が、末長く、世界に誇れる国であってほしい。
「日本出身だ」と、胸を張れる国であってほしい。
選挙や試験勉強で、気が張っているのか、今週はずっと『虎に翼』の主題歌を聴きながら自転車を漕いでいた。
形も名前も残らなくても、たくさんの血と涙の上に立っているのだと、気を引き締めた。
わたしがオランダを選び、勉強できるのも、めぐりめぐって、たくさんの人が苦虫を噛み潰し、血を吐き、誰にも言わずに涙した日々の重なりの結果なのだ、と思うと選挙結果も今週の試験も目が離せなくて、どこかずっと緊張状態。
そういえば、昨日の友人とのピクニックで「どうやって緊張やストレスを緩和させるか」という話になった。
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