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フランスとベルギーへ #交換留学日記 18


2024年12月16日 パリへ

 約一週間ほど前、ユトレヒトで出会った台湾出身の友だちに「よかったらパリへ一緒に行かない?」と誘われた。

 もともと12月下旬はドイツの友人のところで過ごすつもりだった。

 彼女がパリへ行くことも聞いていたが、誘われるとは思っておらず、とはいえ「クリスマス直前のパリ、キラキラして楽しそう」と単純なイメージで、すぐ宿とバスを取った。

 基本的に、どこへ行くにも一人旅しかしてこなかった。

 フィンランド、イスラエルとパレスチナ自治区、トルコのイスタンブール、あとは日本国内数カ所を、友人と旅したことがあるくらい。

 フランスへも行ったことがあるが、2012年のお正月を過ごしたきり。

 当時は大晦日をパリで過ごしたものの、すぐ南仏へ移動し、現地の方々のお世話になった記憶の方が鮮明で、パリで何をしたのか、ほぼ記憶がない。

 10年以上ぶりのパリ。

 ちょっと早いクリスマス休暇の、はじまりはじまり。

2024年12月17日 花の都を散策

 若干バスが遅れ、朝8時ごろパリに到着。薄暗い。

 オランダより南だから、多少日が昇るのが早かったり明るかったりするのかな、と淡い期待をしていたのが甘かった。

 なんなら、オランダの朝より暗い。

 大きい荷物を宿泊施設に預け、それぞれ集めた行きたい場所を巡る街歩きへ出発!

街角は須くカフェかベーカリーと言ってもいいほど、いろいろなカフェがたくさん。チェーン店ではないのがすごくいい。パリに住むことがあったら行きつけを見つけたい
偶然見つけたクリスマスマーケット。ウェブに出ていない小さなマーケットがあちこちで催されている
チーズの香りが会場全部に広がっていて良くも悪くもチーズの強さに支配されていた
今回のパリ滞在1位を争うキュンキュンスポット「Shakespeare and Company」。本屋さんで店内は撮影禁止。置いてある本とキュレーションの仕方が最高。すれ違えないくらい狭い階段を登って二階に行くとピアノがあって演奏している女性がいたり、リーディングルームで本を読んでいる人がいたり。店内のかわいさから本好き以外の人も立ち寄りやすいが、本好きは何時間でも居れると思う。住みたい。
火事の修復がちょうど完了したばかりのノートルダム大聖堂。混雑しすぎて中に入れず。思ったより小さいなと感じたのはゴシック建築に慣れているからだろうか。
来年から修復予定のポンピドゥ美術館
Petit Palaisのメインゲート
無料で観れるアートが満載

 すでに足がパンパンだが、ここまで来たら凱旋門まで行ってみようということで、再び歩き出した。

中央分離帯が撮影スポットになっていた
どこもかしこもキラキラ
エッフェル塔とのコラボ

 これまで、ほとんどまともに食事をしていなかったわたしたち。

 ベトナム料理を食べて体を温め、いざゆかん、エッフェル塔。

1時間ごとに、5分間のイルミネーションが見れる
ビルの隙間から

 塔の近くで開かれていたクリスマスマーケットにも行ってみた。この日は結局、3万歩くらい歩いて、足が棒。

 エッフェル塔のきらきらしたイルミネーションは、パリ中の華やかさを集めて放出しているようだった。

 同時に「このイルミネーションのために、電力をどれくらい使っているんだろう。原発由来の電気かな」などと考えた。

 あるがままを受け止めて純粋に楽しむだけでは飽き足らず、ものごとの裏側、上下左右までまじまじと観察せずにはいられない性。ややこしや。

 宿に到着しても、疲れているはずなのに、しばらく頭が冴えて、眠れなかった。

2024年12月18日 ありのまま

 元気に早起きして、事前に予約していたルーブル美術館へ。

 中学生の頃、映画『ダ・ヴィンチコード』を観て、世の中の歴史的な美術品に込められた謎を解き明かす様にすっかり心奪われ、学芸員になりたいと、しばらく本気で思っていた。

 にもかかわらず、スケルトンのピラミッドが美術館への入り口ということすら知らなかった、わたし。

 ただのニワカであることが早々に露見。

平日にも関わらず、オーディオガイドはすでに完売。事前予約ほぼ必須と見た
消えた腕の先にはリンゴが握られていた説ありのミロのヴィーナス

 モナリザの周りには、たくさんの観光客が集まっていて、その黒山の人だかりがすでにコンテンポラリーアートだった。

 群衆の熱量にあてられて、カメラを向ける気力がみるみる削られてしまった。

 そのぶん、笑っているようにも悲しんでいるようにも見える彼女の表情を、この目に焼き付けた。

 ちなみにモナリザを見た我々の感想は、わたしが「思ったより、モナリザ、ほっそりしてた」、友人が「毎日観光客にカメラを向けられてさぞうんざりしているだろう」だった。

天井に12星座の彫刻とイラストが装飾されていた、アポロンのギャラリー

 ルーブル美術館は、館内案内が少なく、上り下りのルートがとても分かりにくい。

 少なくともわたしたちは何度も迷った。

『民衆を導く自由の女神』

 そのおかげで、アートを観る元気がそぎ落とされ、有名どころと興味がある展示、企画展を見たら退散。

 ひとつのエリアに1日かけても足りないくらいの収容量だった。世界屈指の美術館をなめていた。

 その後、わたしが行ってみたかったお店をハシゴ。

1720年創業の香水専門店「Oriza L. Legrand
一つ一つの商品を、お店のお姉さんが丁寧に説明してくれた。「こういう香りが好き」と伝えると、おすすめも教えてくれた
パッケージがどれもこれもかわいすぎる
商品ラインナップは香水、お香、石鹸、ルームフレングランス
香水を普段使いしないわたしでも身に纏いたくなる気取らない香りばかり
Orizaの近くにあるデパート「Galleries Lafayette」へ。毎年、豪勢なツリーが飾られているとのことで、見に行った。こちらのツリーも1時間ごとにスペシャルイルミネーションが展開されていた

 夜は、友人と別行動。

 わたしは、たまたま同じタイミングでパリにいた、オランダ人の友人と、たまたま見つけたAtelier Kemiaというお店でレバノン料理を食べた。

フムスと紫キャベツ、チキンと柘榴に胡麻ソースがかかったどんぶり。おいしかった。お母さんが一人で切り盛りしていて、おしゃべりしていたら、うっかり閉店時間を過ぎてしまったが心地よく過ごさせてくれた

2024年12月19日 ラスト・パリ

 朝、ゆっくり起きて、宿のカフェでしばらくおしゃべり。

 風が雨粒を吹き飛ばすくらいの荒天で、なかなか出かける気になれない。

 でも、おしゃべりしているうちに青空が隙間からのぞいた。

 いまのうちに、と宿を出発。

 なんとなく向かった先で、街をぶらぶら。

偶然見つけたカテドラル
日本語の解説書もあった

 天気がいいから、人通りも多い。

 天気がいいけど、パリの街はずっと、うっすら、おしっこのにおいがしていた。

 香水が発展した理由がよくわかる。

雑貨屋さん
久々の太陽と青空。バスに乗らずセーヌ川沿いを歩いた
京都の鴨川を思い出す

 最終目的地のオルセー美術館へ。

駅舎を改修したオルセー美術館。ルーヴルよりコンパクトで、個人的にはこちらの方が好きだった
カミーユ・ピサロの絵。5分くらい見入ってしまった。パリで見た絵で一番好き
日本の掛け軸にインスパイアされたピエール・ボナールの「Femmes au jardin」
ジョヴァンニ・ボルディーニの「Scène de fête」。ムーラン・ルージュの様子。子どもの頃、祖父母の家にあった画集で見て、なぜか記憶から離れなかった一枚。本物がお目見え。
オルセー美術館のカフェ。ウィーンのKunsthistorisches Museum Wienのカフェとは違う、ちょっとモダンな雰囲気がある

 もともと印象派が好きな自覚はあったけれど、今回特にカミーユ・ピサロを気に入った。

画集欲しい……けど重いし高いし諦めた……いつか買うんだ!

 周りのアーティストと組合を構成し、伝統的な権威と切り離された、優劣を問わないアートを目指して、展覧会を自主開催していたらしい。

 セザンヌを特に贔屓していたらしいが、自身の作品の評価は芳しくなく、生涯貧乏だったとか。

 その後、ムール貝が食べたいという友人のリクエストでレストランへ。

余談だが、’バゲット’が通じなかった。バゲットって日本語フランス語なの?

 おいしくてカジュアルで入りやすかった。

宿からの夜景。スーパーで買ったオレンジを夜な夜な食べながらおしゃべりして見たこの夜景はきっと忘れない

2024年12月20日 ベルギーへ

 ラトビアで使っていたSIMカードが、ヨーロッパ全域で使えると聞いたから、オランダでの生活も、オーストリアへの一人旅もSIMはそのままだった。

 けれど、パリへ来てから一向に繋がらない。

 友人と一緒だったからネットがなくても気にならなかったが、ベルギーでは繋がるだろうか。

 朝、友人と別れ、わたしはベルギー、ブリュッセルへ向かうバスに乗った。

ベルギー王宮。王宮の屋根に国旗が掲揚されている時は、国王がベルギー国内に居られるそう。つまり今、王様はベルギーにいる。夏の間だけ中が一般公開されているらしい。
歴史的な街だけれど改修中や工事中のスポットが多くて、景観的には、ちょっと残念。仕方ないけれど。つくづく、ヨーロッパは夏に向けて冬がある(冬はオフ、休憩)って感じだな……
「Royal Gallery of Saint Hubert」というアーケード。チョコレート屋さんやワッフル屋さんが並ぶ
どこを切り取っても絵になるね
街の中心、グラン・パレス
夜になると派手なプロジェクションマッピングが展開されていたグラン・パレス。何もしなくても綺麗なのに……むしろライティング無しの方が良い……と思ってしまった。完全に好みの問題
偶然入った教会
聖歌の練習していた
ナイトライフも楽しそうね

 結局、ブリュッセルでもSIMは機能せず。なんでー。

 とはいえ、思わぬデジタルデトックスになっていいかも。

2024年12月21日 油と砂糖

 午後から雨が降るという予報を見て、昼までは街中を歩き回ることに。

メリークリスマスなしょんべん小僧

 SIMは使えないが、GPSは反応するため、ときどきマップだけ見ながら、街ブラ。

 たまたま入った通りには、ヴィンテージショップが数店並んでおり、ついつい長居。

家具とか照明とかいちいちかわいい。こういうところで一式揃えたい……
入館はできなかったがEU本部にも行ってみた
ウクライナの国旗も掲揚されていた。早く戦争終われマジで
ベルギーの名物はフレンチフライ。おすすめしてもらったこちらは、ハッシュドポテト風の食感で美味しかった

 気づいたら5キロくらい歩いていた。

 天候が怪しくなってきたベストタイミングで、事前に予約しておいた、王立美術館へ。

 チケットは予約していなくても入れる混雑具合だった。

お目当てのマグリッド

 ベルギーの名物は油と砂糖が満載で、そんなにたくさん食べていないけど、ちょっと胃もたれ気味。

2024年12月22日 ブリュッセル最終日

 パリもそうだったが、天気が変わりやすい。

 青空がのぞいたかと思えば、とつぜん通り雨が降る。

 オランダでほぼデフォルト着用になったレインコートを、おしゃれなブリュッセルでも、はためかせて歩いた。

小さなクリスマスマーケットが街中に点在していた
ブリュッセル市街地に数店展開している老舗
スパイスが効いていておいしかった

 夜は、当初の目的地だったドイツへ移動。

 バスの乗り場がわかりにくくて、うっかり乗り過ごすところだった。

 でも、なんだかんだで、どうにかなる。待っててね、ドイツ!

今週の雑記: 日本人であることに泣きたくなった

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