おいしいものの話① —ソトSotoの思い出編—
幸運なことに、わたしにとって、インドネシアの食べ物はおいしいものが多くて、日本食が食べられなくても全然困らないほどである。おいしいローカルフードがあったらぜひ紹介してほしいと言われたことがあるので、まずソトsotoの話をしてみたい。(別のメニューについてもそのうち更新するつもりです。)
ソトとは、スープの一種で、地方によって具や味付けは様々だ。ジャカルタの近郊では、ソト・ブタウィSoto Betawiと呼ばれるココナッツミルクの入ったクリーミーなソトが有名だし、ソロのソトはスープが透明なのでソト・ブニンsoto beningと言われたりする。
わたしが食べ慣れているソトは牛肉か鶏肉のほかに、ビーフンやキャベツ、もやし、炒めた玉ねぎなどが入っている。(より西洋風なスープはsopと言ったりするそうだ。sop屋さんもそれなりに見かける。)ゆで卵やトマトが載っていることもある。ご飯とスープを分けることもできるが、基本的にはご飯にスープをかけたものが出てきて、ご飯とスープを一緒に食べる。さらっと食べられるので、深夜とか朝食とかにちょうどいい。といっても、わたしの場合は、お店のメニューにあれば昼食でもよく食べるのだけれど笑。
練習の後や、ワヤンを観に行った後の朝食にソトに誘われたりすることもあって、お世話になった先生や、ダランや友人と一緒に色々なソトを食べ、たくさんの思い出がある。そういう思い出も相まって、色々おいしいものがある中で、わたしはソトがいちばん好きかもしれない。友人や先生の何人かはわたしにはソトを食べさせておけば間違いないと知っている人たちも多く、一緒に食事をすると勧めてくれたり、おいしいソト屋さんに連れていってくれたりする。
色々食べた中でも一つ思い出深い出来事があったので書きたい。
それは前回留学していた時(2020年7月)に、前回の記事で書いたソト・ラモンガンsoto lamonganを食べた時のことである。ラモンガンとは、東ジャワの地域の名前で、ソロにもラモンガンのソトのお店がたくさんある。
そのソトを食べたのは、2020年7月初めのこと。コロナ禍に入って数ヶ月、3月に突然大学の授業や練習がなくなってしまってから、規制が少しずつ緩和されて、少人数で授業が再開されたり、マスク着用で練習ができるようになってきた頃だった。わたしは色々考えてジャワに残って留学を続けることにしたものの、たまにふと不安になって眠れない夜を過ごすことがあった。(その前にわたしはかなりの夜型なのだけれど。)
ある日、眠れなくなって、ほぼ朝になってしまった時にふと思い出したのは、帰国してしまった友人が送ってくれた、おいしそうなソトのインスタグラムのリンクだった。その友人はよく一緒にソトを食べるソト友だちのひとりだったこともあり、「ここのソト、おいしそうじゃない?でもお店が開いてるのは朝だけみたいだけどね。」というメッセージとともにそのリンクを送ってくれたのだった。リンクが送られてきた時は、お店が開くのは、朝の6時からで一応10時までとあるけど、わたしはかなりの夜型なのと、朝早くから活動するとしても朝ご飯は普段食べないので、いつ行けるかなあなんてことを考えていた。
その朝、これはチャンスかもと思ったわたしは、そのまま起きてそのソト屋さんに行ってみることにした。
https://g.co/kgs/r7kxLFB
こちらの大学では朝一の授業が7:30からなのだけれど、その時間よりも早く出かけることはほぼなかったのでとても新鮮だった。お店が開く朝6時くらいに出かけたので、ちょうど空が明るくなってきた時だった。そして、朝の少しひんやりとした空気が心地よかった。帰りにみた青空と鱗雲も本当にきれいだった。昼間はあまり見かけない物売りの人が通ったりもして、早朝のソロの顔を見ることができてとても嬉しかったし、あの朝の空気は、当時落ち込み気味だったわたしの姿勢を正してくれたような気がする。
その場で食べることもできたのだが、わたしはそれをお持ち帰りして食べた。当時わたしは外食することにとっても神経質になっていたから。(でも実はお持ち帰りすると風味が落ちるので、ソトはお店で食べることをおすすめする。)スープはインスタの写真で見るよりも、見た目にも濃厚で、味も栄養があるものがたくさん溶けているという感じだった。そのソトは、コロナ禍で不安でいっぱいだったわたしの体にも心にも優しく沁みわたった。あの頃も工夫してそれなりに色々食べていたけれど、久しぶりにとてもおいしいものを食べたなと心から思った記憶がある。
これはわたしの中にある、心が温かくなるエピソードの一つで、たまにふと思い出したりしていたのだけれど、この前またあのソトに再会できてとても嬉しくなった。
これからもたくさんおいしい食べ物によい思い出を重ねていけたらと思う。
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