aikoと好きだった人にまつわる思い出と
わたしには、狂ったようにaikoを聴いていた時期があった。それは前に好きだった人との恋愛がうまくいかなくなった時期だった。
https://music.apple.com/jp/album/%E3%82%AD%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%83%A9/1109968323?i=1109968361
わたしは、普段ほとんどJ-popは聴かないのだけれど、なぜだかaikoだけは小学生の頃から大好きだった。世代がわかってしまうけど、キラキラは小学生の頃に好きだった曲の一つ。
それまで、その人とはすごく仲良しで、誰が見てもいい感じだったはずなのに、ある時から、突然彼がそっけなくなったのだった。毎日来ていたLINEがぱったりと来なくなり、わたしからLINEしても、気の抜けた返事ばかり。ご飯に誘っても「また今度ね」とか、ノリの悪い返事がくるだけで、しょっちゅうご飯に行っていたのが嘘みたいに全然会えなくなった。
わたしはその理由が全然わからなかった。死ぬほど理由を探したけれど、別に喧嘩をしたとか、何かトラブルがあったとか、きっかけになるようなことは何にも思い当たらないのだ。いきなりドンと崖から落とされたような感覚になって、だいぶ落ち込んだ。最初の半年くらいは毎晩泣いていた、気がつけば、泣こうと思えばいつでも泣けるような状態になったくらいだった。
こんな状況でも、とある事情があって、他の人が何人もいる状態ではあったけれど、わたしは彼と週に何度か顔を合わせなくてはいけなかった。深夜に大泣きした次の朝でも、どうにかこうにか平気な顔をして彼に会わなければいけなかった。そして、彼のほうも、他の人がいる前では、ごく普通に、平静を装っていたように見えた気がする。今思えば平気な顔なんかしないで、彼の前で泣いたらよかったのになとも思うけれど、当時のわたしにはそれができなかった。
彼に突き放されて、半年と少しが過ぎた頃、それはうまくいかなくて辛いという気持ちが最高潮に達した時だったのだけれど、わたしがまず最初にしたことは、某ビデオ屋さんでaikoのアルバムを全部借りることだった。
そんな時期にaikoの曲を聴くのは、自分で自分の首を絞めるようなものだったと今なら思う。aikoの曲は「あなた」と「あたし」の恋愛を歌うものばかりだったから、幸せな曲にも失恋ソングにも、「あなた」に当時の好きだった人を重ねてしまった。そして、歌詞の言葉の選び方が秀逸だから、その当時はハイになっていたのもあって、なんだか「あたし」(わたし自身)の気持ちを代弁してくれているような気持ちになって共感の嵐だった。だから、aikoの曲を聴くのは苦しくもあったのに、なんだかそれでも聴きたくて聴きたくて仕方なくなるという不思議な現象が起きていた。変だよね、なんだったんだろうね、あの衝動は。
結果、その後もうまくいくことはなくて、だいぶ苦しい恋愛をすることになったのだけれど、aikoの歌を狂ったように聴いていたので、色々な瞬間に、aikoの歌がそばにあった。だから、あの恋は、音楽に彩られたほろ苦くも美しい思い出になったと思っている。でもこうして美化してしまうのは危険だとも思っている自分もいる。だけど、美化しないと、ただただ苦しかったことだけが残ってしまうような気がする。
早く吹っ切って前に進めばよかったのにと今なら思うけれど、諸事情でわたしは彼にしょっちゅう会わないといけなかったから、かなり引きずってしまった。
確かに彼に対して淡い気持ちを抱いていたから、彼は好きな人だったわけだけれど、それ以前に、彼はわたしの人生に大きな影響を及ぼした人だったから、わたしは彼のことをとても大切な人だと考えていた。彼がいなかったらできなかったことがたくさんあるから、彼に出会わなかったら今のわたしはいないとも思う。だからわたしは、この恋は実らなかったけれど、彼にすごく感謝している。それゆえに、当時のわたしには、彼のことを大事にしなければならない、彼との関係をなあなあにしたまま終わりにしたくないという気持ちが強くあって、あらゆる手を尽くしてそれを伝えようと、わたしは頑張った。頑張ったとは思う。けど、お願いしても、なぜか話を聞いてもらえなかった。なんでだったんだろうな。
大事な人に取り合ってもらえないのは、本当につらい。しかも、厄介だったのは、その理由が全然わからないということだった。わたしがちゃんとしていないせいだと、何度も何度も反省したけれど、それも違ったのかなあ。わたしは精一杯誠意を持って向き合ったつもりだったけれど、それが全然伝わらないのが、とても悲しかった。
だから、どれだけ泣いたかわからない。ただただ一人で泣くことしかできなかった。たぶん少しトラウマになっているからなのかと思うのだけれど、だいぶ時が経った今も、夜中に考えたくないのに突然思い出してしまって、涙が止まらなくなることが、たまーにある。むこうはわたしのことなんかとっくに忘れているんだろうけども。わたしも、もう未練は全くないし、特になんとも思わなくなったんだけどな。結局、自分だけが取り残されているのかなと虚しくなったりする。引きずってしまったのは、長い間、未練からなのかと思っていたけれど、そうじゃなくて、大切にな人に拒絶された悲しみが原因というほうが正しいのかもと最近思うようになった。
aikoの歌で、お気に入りはかなりたくさんあるのだけれど、この文章を書くそもそもの発端になったのは、ふと『今度までには』という曲を思い出したからだった。(aikoの曲に行き着くまでが長くてごめんなさい…)
この曲は歌詞も旋律もとても好きで、サビで入る弦のオブリガードが効果的すぎて、ああ、うまいなぁ、泣ける曲だなと思っている。
二番の最後歌詞に
「あたしの想いもあたしの涙も
幻なのか…」
というフレーズがある。
この話を彼にすることは一生ないだろう。けれども一方で、わたしの気持ちや、わたしが流した涙や、「あなた」を想った時間は、受け取られることなく、わたし心の中にしまっておくしかないのか、そしたらそれは、最初からなかったことと同じなのではないか、本当に幻になってしまうのかと思ったりして、ゾッとすることがある。本当にそうなってしまったら、切なすぎるなと思ってしまう自分がいる。「幻なのか…」と現実を前にわたしは立ちつくすことしかできない。(けれどわたしはもう何もできないし、もう時効だと思っている。)こういうふうに、ふとした瞬間に、aikoがぴったりな歌詞を書いていると気づくことがあって、つくづく天才だなと思う。
まあでも、こういうふに色々と考えてしまうこと自体が相手にとっては重いのだろうとも、だいぶ冷静になった今なら思う。あの時の自分、鬱陶しかったのだろうなと想像もできる。本当に恋愛って難しい。恋愛は難しいけれども、aikoの描く「あなた」と「あたし」の世界にわたしは憧れる。
たくさん悩んで泣いてばかりだったけれど、あの恋がaikoの歌と共にあってよかった、それだけは本当によかったと思っている。だからaikoにはありがとうという気持ちが尽きない。熱心なファンに比べたら、わたしは全然にわかではあると思うけれど、これからもずっと、ゆるく応援していきたい。aikoみたいなかわいい大人になりたい。そしてわたしも、これからも鼻歌を歌いながら、好きな音楽とともに生きていきたい。
この記事は、実はもう何年も心の中で燻っていたトピックだったのだけれど、年が明けたくらいから急に言葉にできるようになった。やっと、これを書けたから、本当の意味でわたしももうじき前に進めるかなと思う。
そして、わたしも早くうんと素敵な「あなた」に出会えたらいいなと思っている。懲りずにまた次の恋愛ができたらいいなと思っている。もうわたしは、だいぶ健やかになったし、もう前を向けているので、きっといい人に出会えるんじゃないかなという気がしている、今はね。さあどうなるでしょうかね。
時のシルエットを聴きながら書きました。
全部好きだけど、『Aka』と『恋のスーパーボール』と『雨は止む』が好きです。
読んでくれてありがとう。
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