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Photo by
yukamakihara
世界
この世に優しく手を差し伸べてくれる人なんていないと知りました。少しだけ期待して生まれてきたけどそんなのは無駄でした。みんな我慢して生きているから。誰もが苦しみを抱えて生きているから。それが当たり前だから他人にも苦しみを感じさせる世界でした。一つも苦しまず生きられるのは綺麗事だと。ずるいと。甘えたことだと。大人はそんなことを言う種類の人間でした。私が苦しんでいるんだからあなたも少しくらい苦しみなよと。そう語りかけてくる人に見えました。でなきゃ生きていけやしない。それはこの世の暗黙の了解でした。大人は口にはしないもののみんなそれを心得ていました。乗り越えた先にのみ幸せは訪れる。痛みを感じてこそ感動がある。私が生まれてきたのはそういう世界でした。
みんな辛いことに立ち向かっている。挫けそうな日々をもがいて生きている。字面だけじゃなくて本当に。私はそんな世界が心底嫌いだ。立ち向かえるほどの強さを持ち合わせていない私に何ができるというのだ。もがいてその先に何もなくてもまた立ち上がれと言われるのなら、もはやもがくことは意味をなさないじゃないか。私はそうなっても立ち上がれるほど強くないのだと言っている。それでも大人は無理にでも立ち上がらせようと腕を引くのだろう。実際そうさせられた人も何人も想像できる。
そんなのが当たり前の世界に、私は生まれてきた。
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