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カルト島を脱出して、裏垢女子に… 自由を求めた私の半生
【この投稿は、いつか消すかもしれません】
誰にも言えない秘密がある。
私が育ったのは、スマホもテレビもない、
まるで時が止まったような場所。
そう、"異形の村"とでも呼ぶべき世界。
今夜だけ、本当の私を書こうと思う。
どうせ、誰も信じてくれないだろうけど。
実は、半年前まで。
この日本のどこかにある小さな島で、
"選ばれし娘"として、特殊な共同体で育ちました。
化粧も髪を染めるのも禁止。
スマホなんて持ったこともない。
そんな世界から、ある日突然、都会へ。
今、コンカフェで働きながら、裏垢も運用している私。
この落差を、誰が信じてくれるでしょう?
でも、これが私の真実。
「なんで急にこんな告白を?」
「なぜ今まで言わなかったの?」
そう思う人もいるはず。
ただ、もう隠すのは疲れた。
そして、同じような境遇で苦しんでいる誰かに、
これを読んでほしいと思った。
※以下、長文になります。
※心の準備ができた方だけ、続きをお読みください。
***
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私は鏡を見るたび、この顔が呪いなのか祝福なのか、
未だに分からない。
19歳。今は都会で暮らしている。
高層ビルの隙間から覗く空は、
いつも薄い膜のように揺れている。
でも、あの島の空は違った。
瀬戸内海に浮かぶ小さな島。
そこでは空が、まるで藍色の陶器のように、
私たちの暮らしを上から覆っていた。
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島には147人が住んでいた。
「選ばれし者たち」と、私たちは呼ばれていた。
女性は黒い着物。
男性は白い作務衣。
化粧は禁止。装飾品も禁止。
スマートフォンも、テレビも、ラジオもない。
そこでは、時間が違う速度で流れていた。
まるで蜂蜜の中を泳ぐように、ゆっくりと。
私たちは「純粋」を守るために生きていた。
そう、信じていた。
そう私が18歳になるまでは…
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変化は、春の夜に訪れた。
「美咲さんには、特別な使命がある」
島の最高権力者、藤原さんがそう告げた日。
その瞳に浮かぶ光が、私の中の何かを凍らせた。
集会所の薄暗がりの中、
藤原さんの指が、首筋に触れる。
蛇の舌のように冷たく、生暗い。
その指が、鎖骨をなぞり、ゆっくりと下がっていく。
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ろうそくの灯りが、私の素肌を橙色に染めていく。
「美しい」と彼は言った。
「あなたは神様から授かった美しさを持っている」
でも、その言葉は祝福ではなかった。
それは、蜜で包まれた毒だった。
私の肌に、粟立ちが走る。
ろうそくの炎が揺れるたび、影が歪んで踊った。
誰かの吐息が、耳元で熱く渦を巻く。
その時、私は悟った。
この場所は、もう神聖な場所ではないのだと。
この手は、もう神の手ではないのだと。
私の中で、何かが音を立てて崩れ始めた。
次の満月までに、私は「花嫁」になるはずだった。
***
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逃げ出したのは、
藤原さんが私を「次期妻候補」に選んだ日だった。
妹の美空を起こし、手紙を残した。
「必ず迎えに来る」
その約束だけが、私の背中を押した。
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漁船を借りて島を出る時、振り返らなかった。
振り返れば、きっと塩の柱になってしまうから。
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今、私は都会の片隅で必死に生きている。
朝は新聞配達。 昼はUber Eatsの配達。
夜はコンカフェで働いている。
初めて給料を手にした時、ちょっとだけ泣いた。
そのお金で、100円ショップのハンガーと、
古本屋で見つけた『美容師への道』という本を買った。
初めてメイクをした時は、手が震えた。
今では、少しずつ上手くなってきた。
お客さんに「可愛いね」って言われると、
なんだか照れくさい。
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休憩時間に食べるコンビニおにぎりの味は、
島の質素な食事より、ずっと幸せな味がする。
それは、自分で選んで、自分で買ったおにぎりだから。
***
夜の配達は、正直まだ怖い。
でも、月明かりを見上げる度に思い出す。
あの夜、私は自分を救ったのだと。
裏垢も始めた。フォロワーはまだ数百人。
キラキラした投稿はできないけれど、
等身大の日常を少しずつ綴っている。
「整形しているの?」とたまに聞かれる。
でも違う。 この顔は、あの禁欲的な島で、
逆説的に磨かれた美しさなのだ。
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バイトで疲れて帰る夜。
アパートの古い階段を上りながら、時々考える。
島には、まだ何人もの女の子たちがいる。
妹の美空もいる。
来年、妹が18になる。
その時までに、少しでも貯金を増やしたい。
美容師の専門学校にも、必ず行きたい。
毎月、小さな封筒に千円札を一枚ずつ入れている。
「美空へ」と書いた封筒は、少しずつ膨らんでいく。
「夢の種」と書いた封筒もある。
それは私の未来への約束。それは希望。
これは予感…
***
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昨夜、配達の途中で雨に降られた。
ずぶ濡れになって、シフトを終えた時。
近所のラーメン屋のおじさんが、
「お疲れさん。寒かろ? サービスね」
って、温かい餃子をおまけでくれた。
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その時、少し泣きそうになった。
でも、それは悲しい涙じゃない。
藍色の空の下で凍りついていた蝶は、
今、自分の羽で夜の街を飛んでいる。
雨に濡れても、この羽は、
きっと、もう二度と凍りつかない。
それは、私が選んだ自由の証。
***
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時々、島のことを夢に見る。
夕暮れ時の褐色に染まる空。蜂蜜色の時間。
そして、闇の中で光る藤原さんの目。
でも、もう怖くない。
都会の夜景を見下ろしながら、よく考える。
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あの島には、まだ何人もの女の子たちがいる。
私のSNSの投稿が、誰かの小さな希望になれば。
そう願いながら、毎日写真を撮り、言葉を綴る。
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来年、妹が18になる。
その時、私は必ず島に戻る。
そして、美空を連れ出す。
彼女に見せたい。
この混沌とした都会の空を。
化粧品売り場のきらめく光を。
自由に選べる服たちを。
そして何より、
自分の意志で生きていける喜びを。
私の顔は、やっぱり祝福だったのかもしれない。
それは今、誰かの希望になれる祝福。
褐色の空の下で凍りついていた蝶は、
今、自分の羽で夜の街を飛んでいる。
***
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