うつのみや花火舞台裏~その6:募金箱設置~
「大将、なんちゃらボランティアの人がきましたよ。」
女将に呼ばれた大将を待ちながら私は本当にこんな立派なお寿司屋さんに募金箱を置いてくれるんだろうかと不安に思っていた。
店内は落ち着いていてポスターやちらしなど余計なものは置かれていなかったし、高級そうな雰囲気があたりを包んでいた。
「募金箱ですか?困ったな」
そういいながら奥から出てきた職人気質の大将の姿を見た時、もしかするとちょっとまずったかもしれないと思った。
「あ、いやあのもしできたらというぐらいで絶対置きたいとかそういうわけではないですし、いろいろ事情もあると思うので・・・」
私はなんとかその場を取り繕おうと必死になっていた。そうすると大将が拍子抜けしたような顔で口をひらいた。
「いや、そうじゃなくてうちなんかに置いても全然集まらないと思うし、そうなったら悪いなと思いまして。」
おそらく募金箱にも限りがあるからもっと他においたほうが効率的だと思ってくれたらしい。
「あ、これたくさんあるんで全然大丈夫です。10円とか100円だけでも集まればいいと思ってるんで。一応これ全部ボランティアで運営している花火大会で8/10にあるんです!」
私はいつのまにかいろいろ情報をしゃべっていた。でもそうなのだ。金額は関係ない。
そういえば昔私は募金活動を不思議に思っていて、そんなことをするより自分でバイトでもしてそれを寄付したほうがたくさんお金があつまるんじゃないかと思っていたことがあった。
でもそうじゃなくて、この花火の募金の意味は1人の1000円より5人の500円だ。宇都宮市民は50万人いて各1人から100円集まれば5千万円になる。それで打ち上げるのがこの花火大会の最終目標だと聞いたことがある。だからこの募金箱はできるだけたくさん人の目に触れるために宇都宮市内に1000個置いている。
本当に100円だけでも十分なんです。それを伝えたかった。
「そうなんですか、てっきり市とかがやってるのかと思ってました。そりゃー大変でしょう。うちは営業日なんでいつも花火は見れないんですがこの店でよければ是非置いてもらって大丈夫ですよ。」
最初の私の勝手な思惑とは逆にとても人のいい大将だった。店の雰囲気もよく結局そこでお寿司を食べて帰ることにした。めちゃくちゃおいしかったのは言うまでもないだろう。
帰り際に何故か女将からもしよければということでとある本を渡された。
【今日も寿司屋のカウンターから】という本で、なんでもこの大将夫婦のことが書いてある本らしい。
なんじゃそりゃ!とびっくりしたがせっかくなのでお借りすることにした。
ポスターができたら絶対に張りにきます!と伝え店をあとにした。
その日私はこの素敵な出会いに感謝していた。今日募金箱を設置しにきてなければこんないいお店や大将に出会うことはなかっただろうと。
※ちなみに後日募金箱を回収しに行くとたくさんの募金が入っていた。大将には本当に感謝してもしきれない。
つづく・・
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