あぁ、応援って凄いな。
「サッカー選手を辞めよう。」
16年間のサッカー人生で、初めての感情だった。
でも、後戻りできない一線を越えてしまう感覚はまだ残ってたから、1人にだけ話した。
「今の珠幸には『頑張れ』って言葉が一番辛いんだろうね。」ってかけてもらった言葉は、紛れもない事実だった。
それが6月22日のこと。
7月2日 ヴィアマテラス宮崎戦
私は、いつもと変わらず準備をする。
サブがプレーできるアップの1時間で魅せるために。
アップ前のミーティング。
スタメンには、わたしの顔写真が貼られてた。
喜びの感情は一切なかった。いや、感じられる余裕がなかった。
期待に応えるか裏切るか。
夢を追えるか諦めるか。
負ければ、チームは降格圏内。
過去最多987人の観客を「今日も勝てなかった。」と落胆させて2ヶ月の中断期間を迎えてしまう。
私は、二度と起用されないだろう。
サッカー選手を辞めるかもしれない、
サッカー人生を賭けた試合だった。
アップを終えて、この日から12番のゲーフラを掲げてくれたゴール裏の女の子にサインボールを渡して、声出しエリアのサポーターさんの元へ挨拶に向かう。
「待ってたよ!」「チャンスだぞ!」「勝とう!」
たくさんの人から激励してもらえたことに正直驚いた。
それまで、私が試合に出ることをよく思わない人の存在を気にしてた頭の中が、思いがけない言葉をかけてもらえたことで、応援してくれている目の前の人を想うことだけを考えられるようになった。
試合中、何度も"みさきコール"が聞こえてきた。サッカー選手として孤独を感じてた私に、「俺たちがついてる!」と言わんばかりの心強い応援は、失ってた自信を取り戻させてくれた。
いくつかのピンチを本当に会場全員の力で凌ぐ中、PKでもぎ取った先制点にて1-0で前半終了。
ハーフタイムとなり、ピッチから引き上げると、「ナイスキーパー!」「かっこよかった!」って、満員のスタンドから歓声を受ける。
それでも、一瞬も気持ちが緩むことはなかった。
むしろ、最悪のケースばかり思い浮かんだ。
後半は、さらに相手の猛攻を受け、相手とも激しくぶつかる。
次に大怪我をすれば、自分の意思とは関係なくサッカー選手を辞めざる終えない可能性もあることを理解しつつ、私は無我夢中でボールに飛び込んだ。
今まで裏切り続けた期待に応えて、今日こそ笑顔にさせたい人たちの存在が上回ってた。
それでも人生はやっぱり甘くない。
恐れてた未来が現実になる。
後半42分、失点。
相手に打たれたシュートは、味方に当たりポストに当たり私に当たってゴールに入った。
そのまま決勝点を上げることはできず、1-1で試合は終了した。
『私のサッカー人生らしいな。』と口からこぼれた。いつも、最後の一歩が届かない。
首位相手に勝ち点1を獲ったではなくて、勝ち点3を逃したがピッタリの試合。
それでも満員のスタンドからは、拍手が鳴り止まなかった。
感動した。目に焼き付けた。
「あぁ、応援って凄いな。」って私の心が動かされた瞬間だった。
“今度は私がこの瞬間を届けたい。”
真っ先にそう感じた。
“またサッカー選手として生きたい。”
と思わせてもらった。
ごめんなさいとありがとうがたくさん詰まった7月2日だった。
でも今は、理想より勝利が求められる2試合は起用してもらえた中で、どちらも勝たせられなかった結果だけが残ってて、リーグ再開はベンチから。
サブなんてそんなもん。一回でもミスすれば、「やっぱりね。」と言われる。
だから、理想のサッカーに構想外なら、圧倒的な実力をつけて、勝っていくしかない。
それでも残されたのは3試合。
10月15日、
皆さんに胸を張って挨拶できるように。
出会えてよかったと思ってもらえる選手に。
感動をあなたに。
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