湖と大地とボクたちと#1 プロローグ 空と海、そして湖と大地とボクたちと
息を飲むほどの絶景!
とはまさにこのことだろうか。
そう声を発することはなかったけれど、ずっと眺めていられる、そう思えるような世界だった。ボクは、体いっぱいにその景色を浴びて深呼吸する。
空はどこまでも見えそうなくらいに、蒼く透き通ってその高さを示し、海はどこまでも濃い紺色で、海の深さと豊かさを見せているようだった。
空と海のほかに、視界にあるのは、進行方向の右側に見える新緑に彩られた知床半島と、進行方向正面にかすんで見える国後島だ。
ボクたちは今、オホーツク海を知床遊覧船“オーロラ号”に乗って、知床半島の果て、知床岬に向けて進んでいる。ウトロ港を出発してしばらくすると、ほとんど人工物のない世界の中を、風を切るように進む。たまに見える人工物は、ほかの事業者のクルーザーくらいのものだ。
濃紺の海を疾走するオーロラ号の両脇には、白い波しぶきが上がり、時折、借り物の双眼鏡を使わなくても、肉眼で見えるほどの位置にイルカが並走してくれる。運がよければ、クジラや海の王者シャチも見られるという。水辺には、たまに熊が現れるとも聞く。
ボクとうちのおくさまは、北海道を象徴する雄大な大自然が残るこの道東エリアへ旅に出た。
今回の旅程には、今、目の前に広がる人生初の世界自然遺産“知床”のほかにも、豊かな湖の世界“阿寒・摩周国立公園”、日本を代表する砂洲”野付半島“、離島を除く本土最東端”納沙布岬“、野鳥をはじめとする野生動物の楽園であり日本最大の湿原でもある”釧路湿原“などが含まれる。
旅程が見どころで埋め尽くされるほどに盛りだくさんで、心身ともに感動や感情を消化するのも大変な、幸せな悲鳴を漏らす日々だった。
ボクは、改めて記憶の中で、雄大な道東エリアへ全行程3泊4日、1,000kmの旅にでる。
四角く切りとられていない空と海と、そして湖と大地が、ボクたちの旅路だ。