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見上げればいつも四角い青空#36 鎌倉天園ハイキングコースで初秋を味わう(4)

まるで大きな迷路のように、幾重にも広がる遊歩道で構成される円海山の市民の森は、選択を誤ると、別の場所に辿り着きそうで、チェックポイントごとに現れる大きな遊歩道地図の前で道を確認しながら進む。

チェックポイントで何回か繰り返した先に、横浜市最高峰の大丸山(156.8m)まであと200mと告げる案内に出会った。“おおまるやま”と読む横浜市最高峰は、大平山より2.4m低い。
ボクたちは、疲労と滅多には来ないであろうこの地の特別な経験とを天秤にかけ、横浜市最高峰を選んだ。

200mほどの階段の先にある山頂には、ちょっとした公園とここが横浜市最高峰だと宣言する標識があった。

この日すでに25,000歩ほど歩いたボクたちには些かきつかったけれど、そこから眺める白く大きな八景島のジェットコースターと一部をピンク色に染め上空に向かって膨張する入道雲を抱えた夕暮れ待ちの空は、疲れを吹き飛ばすには十分すぎる、美しい夕景だった。

秋の夕暮れは、ときにびっくりするスピードで進み、樹々の生い茂る森の隙間から見える地平のオレンジ色から始まる空のグラデーションは、すでに頭上では青よりも紺色に近くなっていた。
遊歩道は、5人が並んで歩いても平気なほど広く作られているけれど、すれ違うのは近所のお年寄りのご夫婦やトレーニング中の高校生くらいのもので、滅多にいない。

遊歩道を抜けて市民の森の出口に辿り着いたころ、すっかり宵闇が訪れていた。見上げる先の宵闇に光っている、幾分欠けた月といくつかの星がとてもキレイだった。

坂を下る途中、正面に見えるみなとみらいの夜景を見ながら「よく歩いたね」と労わりあった。スマホの健康アプリを見るとすでに30,000歩を超えていた。
顔を上げるとみなとみらいの夜景の先に、肉眼でも5センチほどの大きさで捉えることができる美しい花火が上がった。

まるで、今日一日歩きとおしたボクたちを、「よく歩いたね。」と褒めてくれているかのようだった。(おわり)

最後まで読んでいただきありがとうございます。同じようでいて同じではない日々の生活の中で、感じたことや考えたことをスケッチしています。よかったらまた立ち寄ってください。

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